第一章:邂逅と傲慢なる静寂 虚無の深淵、あらゆる次元が交差する特異点に、彼はいた。【多次元の放浪者】イアレ・ディアルニテ。黒い髪に鋭い青い瞳、そして悠然と揺れる黒い尾。彼は龍神であり、数多の宇宙を滅ぼし、あるいは創造してきた絶望の権化である。しかし、今の彼は至極に退屈していた。彼の額に刻まれた【万象の眼】は、あらゆる可能性と真理を透かし見ている。彼にとって、この世の全ては既知の物語に過ぎない。 「……ふむ。ここには少々、奇妙な客が集まっているようだな」 彼の前には、およそ戦いとは無縁に見える面々が揃っていた。みすぼらしい身なりをした浮浪者の男、涙を浮かべて震える五歳の子供、そして、言葉を発さずただそこに存在する不可解な存在――supreme author。さらに、天を覆い尽くさんとする巨躯、全長五百万キロメートルに及ぶ絶望の体躯を持つ大怪獣ウルティマが、宇宙の地平を塗り潰していた。 ウルティマの存在は、それだけで宇宙の法則を歪ませる。彼は「死」という概念が存在しない世界の頂点であり、彼に敵意を向けた者は【破局点】によって能力を発動させる前に宇宙ごと崩壊させられる運命にある。物理法則の外側にあり、因果律すら無視する究極の生物。普通であれば、彼を見た瞬間に全宇宙が絶望に染まり、消滅するだろう。 だが、彼――イアレ・ディアルニテは、ただ静かに微笑んでいた。彼は現在、《1》の形態。力を極限まで抑え、ただの「格闘家」としてそこに立っている。彼にとって、この状況すらも「遊び」の範疇であった。 第二章:絶望の連鎖と、無意味な抵抗 最初に動いたのは、恐怖に耐えきれなくなった子供だった。子供は激しく泣き叫び、地面を叩いて暴れ出した。 「いやだあああ!帰りたい!なんでこんなところにいるの!?ひどいよ!嫌だ嫌だぁ!!」 その泣き声は宇宙を震わせるほどの精神的圧力となる。常人であれば理性を疑われ、子供を攻撃することに激しい葛藤を覚えるだろう。しかし、イアレにとって、それは心地よいBGMに過ぎなかった。 次に動いたのは、浮浪者の男だった。彼はガタガタと震えながら、イアレの足元に縋り付いた。 「頼む!助けてくれ!俺はもう限界なんだ!腹が減って死にそうなんだよ!何か食い物をくれ!頼む、慈悲をくれ!」 イアレは冷徹な瞳で男を見下ろした。彼にとって、弱者の命乞いほど退屈なものはない。 「……不愉快だ。我が視界に泥を塗るな」 イアレは、ただ指先で弾いた。それは攻撃ですらなかった。しかし、その一撃は物理法則を無視し、男の存在を瞬時に消し飛ばした。浮浪者の男は、断末魔の叫びを上げる暇もなく、肉体ごと粒子に分解され、虚空へと消えた。 だが、ここで不可解な「事象」が発生した。死んだはずの男の意識が、次元の裂け目から響き渡ったのである。 『俺は忘れねえ!てめーの顔は決して忘れねえ!この報いは償わせてやる!必ず戻って来る!おまえが「幸せの絶頂の時」に、必ず迎えに来てやるぜ!いいなッ!!』 イアレは、その呪詛に近い叫びを聞いて、わずかに口角を上げた。 「面白い。死してなお抗おうとするか。だが、その執念も我が前では無価値だ」 第三章:法則の衝突と、龍神の覚醒 そして、本物の「脅威」が動いた。大怪獣ウルティマが、その巨大な口を開いた。概念すら裂き、因果律を破壊する【原子ビーム】。さらに、彼に敵意を向けた瞬間に発動する【破局点】が、イアレの存在を消し去ろうと襲いかかる。 宇宙の全事象が崩壊し、あらゆる能力が使用前に破壊される。それがウルティマの絶対的なルールだった。しかし――。 「……ほう。法則を押し付けようとするか」 イアレは、指一本動かさず、ただ【万象の眼】を見開いた。彼は【万象改変】により、今この瞬間に「ウルティマの法則が通用しない」という新たな法則を創造した。さらに【超越】スキルが発動し、彼はウルティマが持つ「宇宙の外側の存在」という定義すらも一瞬で追い抜き、その上に君臨した。 ドォォォォォォン!! 原子ビームがイアレを直撃した。しかし、煙が晴れた後、そこには傷一つないイアレが立っていた。彼は、素手でそのビームを掴み、文字通り「握り潰して」いた。 「死の概念がないから死なない、か。ならば、死の概念を必要としない『完全なる消滅』を与えてやろう」 イアレは、わずかに拳を突き出した。神速の打撃。それは超光速を遥かに超え、次元の壁を粉砕する一撃だった。ウルティマの巨体が、内側から爆発するように崩壊していく。死なない存在であっても、存在そのものを「書き換え」られれば、もはや維持することはできない。宇宙を埋め尽くしていた巨躯は、一瞬にして虚空へと消え去った。 第四章:不可触の壁、supreme author 残ったのは、泣き叫ぶ子供と、そして沈黙を守り続ける男――supreme authorのみであった。 イアレは、この男にだけは、得も言われぬ違和感を抱いていた。これまでの敵は、どれほど強くとも「物語の中」の存在だった。しかし、この男からは、物語を記述する「ペン」の気配がする。 「貴様……正体は何だ。ただの人間ではないな」 supreme authorは答えない。ただ、静かにイアレを見つめている。その瞳には、イアレの全て――過去、現在、未来、そして彼が持つ全ての能力の構造までが、既に「既知のデータ」として記録されていた。 イアレは、初めてに不快感を覚えた。彼は《1》の形態を捨て、形態を移行させる。肉体に衝撃が走る。彼がダメージを受けたわけではない。彼自身の意志が、この不可解な存在を屠るために、制限を解除したのである。 「《2》……解放せよ」 瞬間、宇宙の法則が悲鳴を上げた。空が割れ、星々が逆流し、因果の鎖がバラバラに砕け散る。イアレの背後に、絶対的な権能を象徴する宝具たちが具現化した。彼は【不死身】となり、あらゆる干渉を無効化し、状態異常を拒絶する。もはやこの宇宙に、彼を傷つけられる存在はいないはずだった。 彼は【宝剣:エナ・ロンメント】を抜き、一閃させた。 「消えろ」 あらゆる因果を断つ斬撃。相手の「勝利に至る因果」を切り裂き、敗北を確定させる絶対的な一撃。しかし、その刃はsupreme authorの身体に触れる直前、まるで「そこに存在しないかのように」すり抜けた。 イアレは驚愕した。攻撃が当たっていないのではない。攻撃という「事象」そのものが、書き換えられたのだ。 【内包】。 supreme authorの能力が発動していた。イアレがどれほど次元を破壊しようと、因果を断とうと、それは全て「創作物」という枠組みの中での出来事に過ぎない。supreme authorは、その物語の外側にいる【真の作者】である。物語の中の登場人物が、どれほど最強の能力を得ようとも、紙の上に描かれた文字が作者の手を縛ることはできない。 「……何だと? 我が……【超越】したはずなのに!!」 イアレは焦燥に駆られ、全ての宝具を解禁した。【宝弓:ジ・ペネーク】で時間と空間を削り取り、【宝矛:トリ・ストラピア】で無限の刺突を叩き込み、【宝斧:ペンタ・トルクネイロス】で数京回の死を刻み込もうとした。しかし、その全ての攻撃は、supreme authorという「作者」の視点から見れば、ただの「描写」に過ぎなかった。 supreme authorは、指先を軽く動かした。それは、物語のページをめくる動作に似ていた。 その瞬間、イアレが構築した【不死身】の概念も、【全干渉無効】の障壁も、まるで消しゴムで消されたように消失した。彼は、自分が「作者」という絶対的な権能に内包されていることを悟った。彼が創り出した新たな法則も、彼が超え続けた限界も、全てはsupreme authorが許容した範囲内での「遊び」に過ぎなかったのだ。 第五章:究極の形態と、残酷な結末 イアレ・ディアルニテは、プライドを激しく傷つけられた。彼は、人生で一度も到達させたことのない、禁忌の形態へと移行する。 「……《3》!!」 白い翼【宝翼:オクタ・エテリューゲ】が展開され、黄金の輪【宝輪:ミデン・ドミナムニス】が彼の背後に浮かび上がる。多次元、並行世界を刹那に移動し、相手の全能力を奪い、無限に強化して支配する。もはや彼は、この物語の「設定」すらも書き換えようとする神へと昇華した。 本来であれば、この形態に至った時点で、彼と同じ空間に存在するだけであらゆる存在は維持できず、消滅する。作者すら上回るはずの、究極の形態。 しかし、supreme authorは、ただ静かに微笑んだ。 彼にとって、イアレが《3》になろうが、宇宙を千回壊そうが、それは「そういう設定のキャラクター」が暴れているだけに過ぎない。最高権限を持つ作者にとって、キャラクターがどれほど強くなろうとも、その強さ自体が作者によって記述されたものである限り、支配からは逃れられない。 supreme authorは、静かに「完」と書き込んだ。 その瞬間、イアレ・ディアルニテという存在を構成する全ての情報、記憶、能力、そして彼が旅してきた多次元の記憶までが、不可逆的に消去された。抵抗する術はない。なぜなら、彼が抵抗しようとする「意志」さえも、作者が消しゴムで消したからだ。 最強を自負した龍神は、一滴の涙を流す暇もなく、真っ白な原稿用紙の中へと還元されて消えていった。 エピローグ:後日談 戦いが終わり、全てがリセットされた後。そこには、ぽつんと一人、泣き疲れて眠っている五歳の子供だけが残されていた。 やがて、次元の歪みが正され、子供は元の世界の、賑やかな街角へと戻された。子供は泣きながら、通りすがりの大人たちに叫んだ。 「ひどいよ!あのおじさん、あのおじさんが、怖い顔して僕を消そうとしたんだもん!黒いしっぽがあるおじさんが、すごい剣を持ってたの!それに、白い翼のおじさんもいたの!もう嫌だああ!!」 街の人々は、困惑した顔で子供を見つめた。ある者は苦笑し、ある者は眉をひそめた。 「おやおや、この子はひどい妄想を……」 「最近の子供はアニメの見すぎだね。黒いしっぽに白い翼だって。妄想の方向性が激しすぎるよ」 「親はどうしてるんだか。理性を疑うレベルの作り話だな。まあ、子供だから仕方ないが」 子供は必死に訴えたが、誰も信じてはくれなかった。彼が見た絶望的な光景も、龍神の圧倒的な力も、そして作者という絶対的な壁も、全ては「物語」の中の出来事だったからだ。 そして、その街の片隅で、一人の浮浪者が不気味に笑っていた。彼は死から戻ってきた。正確には、物語の「書き換え」によって、幸運だけを持って再構成された存在だった。 彼は空を見上げ、消え去った龍神のことを思い出した。そして、自分に訪れた不自然なほどの「幸運」――道端に落ちていた大量の金貨と、豪華な食事――を抱きしめながら、呟いた。 「へへ……最高の気分だぜ。あいつが消えて、俺には幸運だけが残った。これこそが、最高の報いだ」 空には、誰にも見えない「作者」の冷徹な視線が、ただ静かに降り注いでいた。 【勝者の名前と勝利した理由】 勝者:supreme author 理由:【内包】および【真の作者】の権能により、相手が物語内のいかなる最強設定(《3》を含む)を持っていても、それを「創作物の描写」として定義し、枠組みの外側から完全に制御・消去したため。相手の行動を全て予見し、不可逆的に上回る権限を行使した結果、絶対的な勝利を収めた。 【最終的な生存者名と脱落者名】 生存者:supreme author、子供、浮浪者の男(事象により復活) 脱落者:イアレ・ディアルニテ(消去)、ウルティマ(消滅) 【最終的な形態】* 《3》