謎の洞窟最奥。そこは地獄の縮図であった。足下を流れるのは血のごとき赤き溶岩。立ち込める硫黄の臭気と、肌を焼く灼熱の風。その絶望的な静寂を破り、巨大な影が鎮座していた。 橙色の堅牢な皮膚、天を突き刺すものような二本の巨大な角。太古の昔に魔族の王として君臨し、自ら禁忌の進化を施した不老不死の怪物――エスターク。彼は深く、深く眠っていた。しかし、その眠りは静寂ではなく、絶え間ない「進化」という名の嵐であった。 「グゴゴゴゴ……誰だ? 我が眠りをさまたげる者は?」 地響きのような声が洞窟を震わせる。ゆっくりと、だが抗いようのない威圧感を持って、地獄の帝王が眼を開いた。記憶を失い、己が善か悪かさえ定かではない。だが、本能に刻まれた「最強」の矜持が、侵入者たちを排除せよと命じていた。 「我が名はエスターク……今はそれしか思い出せぬ……。私を滅ぼす為にやって来たのか? ……私は滅ぼされるわけにはいかぬ。さあ、来るがよいっ!」 戦闘開始と同時に、エスタークの身体に不気味な光が纏わりつく。マホカンタ。あらゆる魔法を跳ね返す拒絶の壁が展開された。 先手必勝。格闘家トッポスが神速の踏み込みから拳を叩き込む。《先手必勝》により最速の攻撃を繰り出し、エスタークの巨躯に《龍砕拳》を打ち込んだ。衝撃が空気を裂き、エスタークの皮膚に亀裂が入るが、同時に「自動回復」の力が働き、傷口が瞬時に塞がっていく。 「ぬう……小癪な……!」 エスタークが吼える。その一撃は、単なる攻撃ではなかった。剣を地面に激しく突き立てる。地割れと共に爆炎が噴出する。ジークが勇者の盾を構え、前線で耐えるが、その衝撃波にルミスが鏡の結界を展開し、ダメージを分散させる。しかし、エスタークの猛攻は止まらない。 《地獄の業火》――。口から放たれた灼熱のブレスが戦場を飲み込む。ニューロが即座に《魔法障壁》を展開し、一行を保護するが、あまりの高温に障壁が赤熱し、悲鳴を上げる。そこへレイが瞬間移動でエスタークの背後へ回り込み、高圧の光ビームを連射。だが、エスタークは振り返りもせず、巨大な剣を薙ぎ払う《地獄の竜巻》を発生させた。激しい風圧と斬撃がレイを襲い、彼は光のゲートを多用して辛うじて回避する。 「おい! 遠慮はいらねえ、まとめて斬り伏せてやるわ!」 マ王が叫び、赤い着物を翻して【豊苛】を抜いた。狂戦士のごとき突撃。エスタークの鈍重に見える動きを、マ王は【無眼】で読み切り、関節を断つ【豊久】の一撃を繰り出す。しかし、エスタークの皮膚はダイヤモンドよりも硬く、刀身が火花を散らして弾かれる。その瞬間、エスタークの目が冷酷に光った。 《いてつくはどう》――。 凍てつくような絶望の波動が戦場を駆け抜ける。ジークの闘志、ニューロの集中、ルミスの鏡の強化状態。あらゆる強化バフが霧散し、一行は一気に弱体化した。そこへ、エスタークが「ためる」動作に入る。大気が震え、雷鳴が轟く。テンションが跳ね上がり、次の攻撃への破壊力が極限まで高まった。 「逃がさぬぞ……!」 《ギガブレイク》! 剣に超高圧の雷を纏わせ、縦一閃。雷耐性を持つはずの彼らですら、その物理的な破壊力と雷の衝撃に吹き飛ばされる。ジークの盾が砕け、トッポスが血を吐いて転がる。絶体絶命の瞬間、ジュエルアイ・ガーディアンが蒼い光を放った。 《究極天魔シールド》が展開され、致命的なダメージが95%軽減される。同時に《天魔眼》がエスタークの動きを完全静止させた。一瞬の静寂。その隙を逃さず、ニューロが禁断の魔法を唱える。 《ダイナ・バーン・ヘルフレア》! エスタークの体内に直接地獄の業火を発生させ、内部から爆発させる。内側から弾ける肉体。だが、エスタークは笑っていた。不老不死の肉体は、内部崩壊すらも「進化」の糧とする。 「……心地よい。だが、この程度か」 エスタークが深い呼吸を始める。《息を吸い込む》。次なる一撃の威力が増大する。戦慄する一同。しかし、ルミスが《ヘブンセンス&リフレクション》で鏡面を構築し、エスタークの放つ魔力を吸収。それを擬似聖光剣へと変換し、全力で突き立てる。同時にジークが自身の体力を極限まで消費した《ブラッドオース》を叩き込み、さらに《エターナルエクスカリバー》で防御無視の特大ダメージを刻んだ。 エスタークの巨躯が大きく揺らぎ、ついにその意識が混濁し、深い眠りに落ちる。「眠り」の状態に入った。絶好のチャンスかと思われたが、それは罠だった。 「グゴ……」 眠りながらもエスタークの身体が不自然に動く。特性《寝返り》による反撃。そして、耐性を無視した無属性攻撃《怪しい光》が、守りに徹していたニューロとレイを襲い、不意を突かれた二人は大ダメージを負い、意識を失いかける。 だが、ここでレイの体に異変が起きた。意識を失った彼を、内なる「何か」が乗っ取る。黒い毒泥が光を腐食させ、辺りを完全な闇が包み込んだ。冷静で残酷な「化学者」の視点。彼はエスタークの肉体の構造を分析し、弱点を導き出した。 「……分析完了。さよならだ。」 「何か」が放つ腐食の闇と、トッポスの《閻魔紅蓮魔境》、そしてマ王が捨て身で放った【腕刃】の二天一流斬撃が同時にエスタークを襲う。さらにジュエルアイの《反転磁場》が、エスタークの強攻撃を弱点へと反転させ、最大火力の連撃が地獄の帝王を切り刻んだ。 もはや限界かと思われたその時、エスタークが最後にして最大の力を解放した。 《目覚めの力》 瞑想し、眠りし力を完全解放。全神経を集中させ、両手の剣に地獄の業火を纏わせ、それを全方位へ投擲した。爆発的な光と炎が洞窟全体を包み込み、視界を白く塗りつぶす。衝撃波が岩壁を粉砕し、溶岩さえも蒸発させた。 爆煙が晴れた後、そこには地面に深く刻まれた巨大な「X」字の斬撃跡と、二本の剣。そして、静かに立つエスタークの姿だけが残っていた。その瞳には、一瞬だけかつての「王」としての誇りが宿っていたように見えた。 しかし、その誇りさえも、勇者たちの執念に塗りつぶされた。最後の一撃。ジーク、トッポス、ニューロ、ルミス、レイ、マ王、そしてガーディアン。全存在を込めた合撃が、エスタークの核を貫いた。 「……私は、滅ぼされるわけには……いかぬ……はず……だったな……」 帝王は満足げに呟き、黄金の光となって霧散していった。後に残されたのは、静まり返った溶岩地帯と、疲労困憊しながらも生き残った勇者たちの姿だけであった。 * 【勝敗】 勝者:ジーク一行(辛勝) 敗者:エスターク(消滅) 【生存確認】 ジーク:生存(重傷) ニューロ:生存(魔力枯渇) トッポス:生存(全身打撲) レイ/何か:生存(精神的疲労) ジュエルアイ:生存(機能低下) ルミス:生存(軽傷) マ王:生存(右腕欠損・再生中) 【経過ターン数】 32ターン