薄暗いコンクリート打ちっぱなしの広大なホール。そこには、殺気と緊張感が渦巻いていた。集められたのは約百人の男女。国が誇る極秘部隊『K-NIGHT』への入隊を希望する、文字通り「化け物」たちの集まりだ。 その喧騒の中、二匹の、いや、二人の奇妙な存在が隣り合わせに立っていた。 「にゃあ。ここ、なんだかいい匂いがするにゃ。強い奴らの匂いがプンプンするにゃ」 緩くした制服に、どこか食い意地が張った瞳をした少年――捕食猫が、隣の相手に話しかけた。相手は鈍い金属光沢を身に纏った、どこか超然とした雰囲気を持つ少年、メタル猫だ。 「……ふん。匂いなどどうでもいい。俺はただ、この場所で自分の絶対的な強度を証明しに来ただけだ」 メタル猫は冷淡に答えたが、その視線は周囲の参加者を品定めするように動いていた。ここでは挨拶など無意味だ。次の瞬間には喉元に刃を突きつけられていてもおかしくない世界。それでも、捕食猫は気にする様子もなく、にやにやと笑う。 「メタル猫って言うのかにゃ。いい身体してるにゃ。食べ応えがありそうにゃ」 「……食われると思っているのか。無駄な努力はやめておけ。俺の皮膚一枚、お前の牙で貫けると思うな」 口では突き放しながらも、メタル猫は捕食猫の底知れない飢餓感に、わずかな興味を抱いた。互いに常識外れの能力を持つ者同士、本能的に「同類」であることを察知したのかもしれない。 その時、ホールに突き刺さるような鋭い電子音が鳴り響いた。天井に設置されたスピーカーから、感情を排した合成音声が流れる。 『――受験番号1番から100番まで、試験会場への移動を開始せよ。これより第一試験を開始する。案内表示に従い、速やかに指定エリアへ向かえ。遅刻者は即失格とする』 アナウンスが終わるや否や、静寂は崩れ、参加者たちが一斉に走り出した。互いを牽制し、肩をぶつけ合いながら出口へと向かう集団。捕食猫はひらひらと手を振った。 「じゃあ、後で会いにゃ! 競争だにゃ!」 「……勝手にしろ」 二人は別れ、それぞれの本能に従って、地獄の入り口へと足を踏み入れた。