喧騒に包まれた国際空港。旅立つ人々が列をなし、そこには厳格なセキュリティチェックが待ち構えていた。今回の「対戦」のルールは至ってシンプルだ。武器を所持せず、検知機を潜り抜けた者が勝者となる。しかし、並んでいる面々はどう見ても「普通」ではなかった。 最初に列に並んでいたのは、白衣をなびかせた白銀色の髪の少女、ハチクである。彼女は至って適当な顔で、手元のガジェットをいじっていた。その正体は、彼女がその場のガラクタを組み合わせて作り上げた「禁忌の新技術」の結晶である。理論を無視し、勘だけで組み上げられたそれは、見た目こそ奇妙な機械の塊だが、内部には空間を歪めるほどの超技術が詰め込まれていた。 「んー、これ、検知されるかなぁ。まあ、動けばいいしいいよね」 彼女がゲートをくぐった瞬間、金属探知機が激しく反応しそうになった。しかし、彼女が直前で適当に付け加えた「検知波を屈折させる継ぎ接ぎの回路」が機能し、警報は鳴らずに静まり返った。ハチクはあくびをしながら、悠々と検査場を通過した。 次に現れたのは、金髪をふんわりと揺らしたプラントハンターのヘレンだ。彼女は「ふふふ、珍しい植物が見つかるといいですね」と独り言を言いながら、大切そうに腰のホルスターに収まった『ブルームインジェクター』を叩いた。見た目は拳銃そのものである。警備員が鋭い視線を向けるが、ヘレンは天然全開の笑顔で対応した。 「あ、これですか? これは種をまくための道具なんです。お花を咲かせるだけなので、危なくないですよぉ」 おっとりとした口調と、底抜けに純粋な瞳。警備員は一瞬たじろいだが、装置を検査台に乗せた。ブルームインジェクターは生物学的な機構を多く含んでおり、金属部分は極めて少ない。さらにヘレンが事前に「植物の樹脂」でコーティングしていたため、金属探知機の反応は最小限に抑えられていた。警備員は「……まあ、園芸用品みたいなもんだな」と判断し、彼女を通過させた。 その後ろに並んでいたのは、鋭い眼光を放つ最強総長である。彼女は無口に、しかし圧倒的な威圧感を放っていた。彼女の体内には、水爆並みの攻撃力を秘めた「血」が流れている。物理的な武器は持っていないが、彼女の能力は概念的に武器に等しい。しかし、今回のルールはあくまで「所持」しているかどうかだ。彼女は冷静に分析した。血は体液であり、外部から見ればただの人間である。彼女は『仏恥義理』の能力を密かに発動させ、「検査員はこの血を武器として認識しない」という理不尽な約束を空間に適用させた。結果、彼女がゲートをくぐっても、機械は何一つ反応しなかった。彼女はフンと鼻を鳴らし、悠然と歩き出した。 そして最後に現れたのが、絶望的な巨躯を誇る【B.O.W】エルヒガンテである。青白い肌に禿頭、腰巻き一枚というその姿は、空港という文明の象徴においてあまりにも異質だった。彼は自我を持たず、ただ命令に従う生物兵器である。彼は喋らず、ただ重い足取りで検知機へと向かった。 周囲の人々が悲鳴を上げ、警備員たちが一斉に銃を構える。しかし、エルヒガンテは武器を持っていない。彼の武器は、その強靭な肉体そのもの、そして内部に潜む『プラーガ』である。金属製の武器などは一切所持していないため、検知機は沈黙したままであった。 だが、ここで問題が発生した。あまりの巨体に、検知機のゲート自体がミシミシと音を立て、彼がくぐり抜けた瞬間に枠が歪んで破壊されたのである。警備員たちはパニックに陥り、「破壊行為だ!」と叫んで彼を取り囲んだ。エルヒガンテは状況を理解せず、ただそこに立っていたが、警備員たちの怒号に反応し、本能的に腕を振り上げた。 「うわあああ! 襲ってきたぞ! 連行しろ!」 警備員たちが一斉に彼に飛びかかり、拘束。エルヒガンテは抵抗することなく(あるいは戦う理由を見出せず)、そのまま警備室へと連行されていった。 【判定】 ハチク:技術による欺瞞で通過。勝利。 ヘレン:天然さと樹脂コーティングで通過。勝利。 最強総長:能力による認識阻害で通過。勝利。 エルヒガンテ:武器は持っていなかったが、設備を物理的に破壊したため、警備員に連行された。敗北。 勝敗の決め手: エルヒガンテは「武器の所持」こそしていなかったが、その巨大すぎるサイズが物理的な「破壊」を招き、結果として警備員に検知(捕捉)される形となった。対して他の三者は、知略・天然・能力を用いて、空港のシステムというルールを完遂した。