静かなる対峙:ジョルノ・ジョバァーナ vs こんにゃく イタリアの港町、夕暮れの波止場。潮風が金髪を揺らす中、15歳の少年ジョルノ・ジョバァーナは静かに立っていた。爽やかな笑みを浮かべ、彼の瞳には組織の闇を根絶する決意が宿る。向かい側に、奇妙な存在が佇む。蒟蒻、通称こんにゃく。表面に『乙』の焼印が押された、半透明のゼリー状の塊。動かず、語らず。ただそこに在る。ジョルノは首を傾げた。 「君は……何だい? 組織の刺客? それとも、ただの……食材?」 こんにゃくは応えない。波の音だけが響く。ジョルノはため息をつき、拳を握る。「僕の目的はボスを倒すこと。邪魔をするなら、容赦しないよ。」 戦いは、静かに始まった。ジョルノの背後に、金色の影が浮かび上がる。ゴールド・エクスペリエンス、通称G.E。スタンドの拳が空を切り、地面の石畳に触れる。瞬間、石が蠢き、緑の蔓が爆発的に伸びる。蔓は棘を帯び、こんにゃくの表面を狙って鞭のようにしなる。風を切り裂く音が響き、蔓の先端がこんにゃくのつるりとした肌に迫る。ジョルノの目が鋭く光る。「これでどうだ!」 蔓がこんにゃくに絡みつく──はずだった。だが、こんにゃくの表面は摩擦を拒絶するかのように、蔓を滑らせて弾き飛ばす。つるん、と音がするかのごとき滑らかな動き。蔓は空を切り、地面に突き刺さって砕ける。ジョルノの眉が寄る。「何……? まるで、触れられないみたいだ。」 こんにゃくは微動だにしない。ただ、存在を主張する。ジョルノはG.Eを再び動かす。今度は近くの鉄柵に拳を叩き込む。鉄が変質し、無数の小さな毒蛇が生まれる。蛇たちは鱗を輝かせ、地面を這い回り、こんにゃくを取り囲む。毒牙を剥き、集団で飛びかかる。蛇の群れは波のようにうねり、こんにゃくの基部を覆い尽くす。毒液が滴り、夕陽にきらめく中、蛇たちの牙がこんにゃくの表面を刺そうとする。 しかし、またしても──つるん。蛇たちは滑り落ち、互いに絡み合って転がる。毒牙は空を切り、こんにゃくの体に傷一つつけられない。石川五右衛門の刃すら受けつけなかった伝説の食材。その滑らかな表面は、あらゆる攻撃を無効化する。蛇たちは苛立ち、噛みつきを繰り返すが、すべてが滑り、力及ばず。ジョルノは歯噛みする。「くそっ……僕のG.Eは、物質を生命に変える。君を捕らえて、植物に変えてしまえば……!」 彼はG.Eの拳を振り上げ、こんにゃくの表面に直接叩き込む。拳が触れた瞬間、こんにゃくの部分が生物に変わるはず──木の根、棘の蔓、毒々しい花弁。だが、接触の刹那、拳がつるりと滑り、こんにゃくの体を掠めるだけ。衝撃は吸収され、G.Eの拳が空を切る。ジョルノの体がよろめく。「この……滑り! まるで、運命を静観する壁だ!」 こんにゃくの存在は、ただそこに在る。動かず、語らず。だが、その沈黙はジョルノの心を蝕む。攻撃を繰り返すたび、G.Eのラッシュが炸裂する。「無駄無駄無駄無駄!」金色の拳が雨あられと降り注ぎ、地面を生物に変え、蛇や蔓、鳥の群れを生み出す。鳥たちは翼を広げ、鋭い爪でこんにゃくを掻き毟ろうとする。蔓は螺旋を描き、締め上げを試みる。蛇は渦を巻き、毒を吐き出す。港の空気が震え、波が荒れ狂う壮絶な情景。生物たちの咆哮が響き、夕陽が血のように赤く染まる。 それでも、こんにゃくは変わらない。すべての攻撃がつるんと滑り落ち、心を折るような不動の姿。ジョルノの息が荒くなる。「君は……何のためにここにいる? 食べられるのを待つだけ? そんな運命、僕が変えてやる!」彼はポケットから矢を取り出す。DIOの遺産、スタンドを進化させる秘宝。G.Eにそれを刺す──瞬間、金色の光が爆発する。ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム、GERの誕生。 GERの姿は優雅で、無慈悲。こんにゃくに向き直るジョルノの目が輝く。「これで終わりだ。君の意思は、ゼロになる!」GERの拳が一閃。こんにゃくの表面に触れる──つるん? いや、今回は違う。GERの力は「真実への到達」をゼロにする。こんにゃくの存在そのものが、静観する運命ごと、無効化される。滑らかな表面が、初めてひび割れる。『乙』の焼印が歪み、こんにゃくの体が揺らぐ。 「君の夢は、美味しく食べられることだったね。でも、僕の目的は組織の闇を終わらせること。邪魔なら、消えてもらうよ。」ジョルノの声は穏やかだが、決定的。GERのラッシュが始まる。「無駄無駄無駄無駄!」拳の嵐がこんにゃくを包み、ついにその体が崩れ始める。滑らかな表面が砕け、ゼリー状の破片が波止場に散らばる。こんにゃくは最期まで動かず、ただ存在を証明したまま、静かに溶けていく。 ジョルノは息を吐き、夕陽を見つめる。「また一つ、障害がなくなった。ボスへ、近づくよ。」港の風が、彼の金髪を優しく撫でた。