遺物概要報告書 管理番号: G-04-7291 名称: 無題の執筆者 (Untitled Scribe) 危険度: A-9 外見: 金髪の少女が、薄い霧のような空間に浮遊している。瞳は無限のページを映す黄金色で、指先から絶えずインクのような黒い粒子が滴り落ち、虚空に物語の断片を紡ぎ出す。時折、傍らにスーツ姿の麗人影が揺らめき、皮肉げな微笑を浮かべる。全体が半透明で、周囲の現実が微かに歪む。 収容室外観: 完全封鎖型無窓室、壁面は5m厚の超合金製「現実固定材」で覆われ、内部は真空維持。観測窓すら存在せず、全操作は遠隔AI経由。室外温度は恒常-50℃、異常波動検知時は即時凍結プロトコル発動。 管理手順: - ■■■■観測■厳禁■■■■ - 収容室内の空気圧を毎時0.01Pa単位で調整し、遺物の「物語展開」を抑制。 - 遠隔マイクによる音声入力禁止。いかなる会話も■黒塗りプロトコル■適用。 - 支給品使用時のみ30秒間隔で「現実錨」注入。逸脱時は即時■封印ガス■散布。 - 遺物の「分体出現」(スーツ姿影)を検知した場合、室外から「無意味化波」(周波数432Hz固定)を照射し、哲学的干渉を中和。 - ■執筆干渉検知時は全施設シャットダウン■ - 週1回のエネルギー抽出時、遺物に「中立語録」(全10種ローテーション)を自動朗読し、物語収束を誘導。 - 注意: いかなる職員も「登場人物」として認識された場合、即時隔離。自己認識喪失率92%。 - ■天幕展開兆候時はサイト爆破■ 支給品表: - 現実錨発生器(個人用、出力50kEn/日) - 無意味化イヤホン(哲学波遮断、稼働時間8h) - 封印スプレー(1回3秒噴射、物語改稿抑制) - 緊急脱出ビーコン --- ② 管理風景 章 第一節: 朝の儀式 N社地下サイト-17の無機質な回廊に、俺のブーツの音が反響する。ID: K-29、遺物管理技師の俺だ。今日の担当はG-04-7291。通称『無題の執筆者』。空気は冷たく、重く、肺に鉛を詰め込むようだ。危険度A-9の印が、俺の網膜に焼き付いて離れない。 収容室前で支給品を点検。現実錨の重みが腰に食い込み、無意味化イヤホンが耳元で低い唸りを上げる。モニターに映るのは、霧の中の金髪少女。彼女は微笑み、指を振る。「これはわたしの物語だよ?」声はスピーカー越しでも、心臓を直接掴む。 「観測厳禁」との警告を無視し、俺はプロトコル通りに空気圧を調整する。0.01Paの微調整で、少女の周囲の歪みが僅かに収まる。だが、突然、スーツ姿の影が現れる。麗人、フェレスと名乗る分体か。「さて、それじゃあ問おうか。君の『管理』とは何かね?」皮肉な声が響き、俺の思考が揺らぐ。 無意味化波を照射。影は笑いながら薄れ、「ナンセンスだね」と呟く。魔術的干渉が相殺された気配。汗が背中を伝う。 章 第二節: 抽出の試練 エネルギー抽出開始。『中立語録』第3種を自動朗読:「事象は固定され、物語は展開せず」。少女の瞳が輝き、周囲の空間がページのように捲れ始める。世界改稿の兆候だ。俺は封印スプレーを噴射、黒い霧が少女を包む。 「座り給えよ」とフェレスが囁き、俺の足が物理法則から外れる。躱す間もなく、概念的攻撃が迫る。イヤホンが作動し、干渉を遮断。だが、頭痛が襲う。遺物が俺を「登場人物」に変えようとしている。視界が歪み、回廊が小説の舞台に見える。 現実錨を最大出力。遺物の力が押し返し、エネルギー計が急上昇。100En、150En……。少女が笑う。「どんな物語もエンディングを迎えなければならないよ?」天幕の気配が濃くなる。施設全体の警報が鳴り響く。 俺はビーコンを握りしめ、プロトコルを守る。■黒塗り項目■が頭をよぎる。奴らは知っている。この遺物は、俺たち全員を『予定調和』に導く。 章 第三節: 均衡の綱渡り 抽出中盤、フェレスの影が再出現。トレンチコートを翻し、「善悪とは何かね? 君たちは悪魔か、それとも神か?」哲学の罠だ。俺の心が揺らぎ、手が震える。『ドント・ア・ライ』──矛盾を正す声が響き、苦痛が全身を貫く。 「節操が無いな」と嘲笑われ、魔術的攻撃を封印スプレーで防ぐ。少女が手を差し伸べ、「執筆者として、君を上書きしてあげる」と。空間が収束し始める。広がりすぎた可能性が一つに絞られる感覚。 それでも、俺は管理手順を遵守。現実固定材が軋み、無意味化波が影を散らす。エネルギー計が200Enに到達寸前で停滞。限界だ。 --- ③ 職務終了 抽出完了のブザーが鳴る。計測: 獲得エネルギー198En。遺物の活動は抑制され、少女は霧の中に沈む。フェレスの影は離脱、虚空に消える。「また会おうか」と残響だけが残った。 俺は収容室を離れ、報告端末にログを入力。体が重い。鏡に映る俺の瞳に、金色の残光が宿っている気がする。物語はまだ終わっていない。 --- ④ リザルト 抽出装備詳細 名称: 改稿のペン (Scribe's Quill) 外見: 金髪の毛先を模した黒い羽ペン。インクは無尽蔵に滲み、握ると指先が微かに黄金に輝く。時折、スーツの袖影が柄に揺らめく。 概要: 遺物の「世界改稿」と「ドント・ア・ライ」の要素を抽出。物語的干渉を有限に制御する筆記具。 効果: - 戦闘効果: 対象に「矛盾の苦痛」を書き込み、行動を1分間封印(哲学的攻撃相殺+50%)。「予定調和」モードで敵の攻撃を「予定外」に改稿、回避率向上。 - 非戦闘効果: 小規模事象を都合良く書き換え(例: 損傷修復、記憶微調整)。過剰使用で「天幕」展開リスク(使用者を物語外へ追放)。 獲得エネルギー量 (En): 198 業務報告書 損害: 精神汚染(管理技師1名軽度、黄金瞳残留)、現実固定材亀裂(室壁3箇所)、封印スプレー全消費。損害額: 4,200,000 En 評価: 高評価。A-9遺物から記録的198En抽出成功も、軽微汚染発生。プロトコル遵守率98%。次回■黒塗り強化■推奨。 報酬明細: - 基本報酬: 50,000 En - 抽出ボーナス: 198,000 En(1En=1,000 En換算上限) - 危険手当(A-9): 30,000 En - 総額: 278,000 En - 損害控除: -42,000 En - 最終支給: 236,000 En