序章:甘い誘惑のチェックイン 都会の喧騒を忘れさせるかのように、白亜の壁に金色の装飾が施された超高級ホテル「ルミエール・ド・プリューム」。その外観はまるで巨大なウェディングケーキのように華やかで、エントランスには春の訪れを告げる色とりどりの花々が咲き乱れていた。 多比良凡夫にとって、ここは一生に一度訪れるかどうかの聖域だった。しかし、隣に立つ少女——ロベリー・スリーズの天真爛漫な笑顔と、彼女が漂わせる甘い焼き菓子のような香りに誘われ、彼は導かれるようにこの門をくぐった。 事の始まりは、凡夫がいつものように教室の窓際で昼寝をしていた時だった。不意に頬を撫でた甘い香りと、「ねえ、起きて? とっても美味しいケーキのお店を見つけたの!」という鈴を転がしたような声。目を覚ました彼の視界に飛び込んできたのは、クリームのようにふわふわと巻いた金色の髪と、完熟したベリーのように情熱的な赤い瞳。お菓子を愛し、愛を振りまくホムンクルス、ロベリーだった。 彼女は凡夫の「普通さ」に、言いようのない心地よさと安心感を見出した。そして、今日は特別な日だからと、彼を驚かせるためにこのスイートルームを予約していたのだ。 「ふふっ、びっくりした? 凡夫くん! ここ、とっても素敵でしょ♪」 重厚なダブルドアが開いた瞬間、視界に飛び込んできたのは、眩いほどの贅沢な空間だった。