最新設備を誇る「万種族総合病院」。そこは人間から異能者、さらには概念的な存在まで、あらゆる種族の健康を管理する聖域である。白を基調とした清潔感溢れる待合室には、風変わりな面々が集まっていた。 【待合室:不安と期待の交差】 アリスは豪華なドレスの裾を苛立たしげに揺らし、ふんぞり返って座っていた。隣には車椅子に身を預け、静かに微笑む生永命。そして、黒外套を纏い静かに本を読むレイスと、セーラー服に身を包んだ屈強なムバンが並んでいる。 「ちょっと! なぜこんなに待たされるのかしら! この病院の管理体制はどうなっているの!? 無能の集まりなの!?」 アリスが突然怒鳴り散らす。周囲に響き渡る罵詈雑言に、ムバンがクスクスと笑いながら口を開いた。 「あらあら、お嬢様。そんなに怒るとお肌に悪いわよ❤ 健康診断なんだから、ゆったり構えていればいいじゃない❤」 「誰がお嬢様よ! この、筋肉ダルマが!!」 レイスは本から視線を外さず、淡々と呟く。 「……騒がしいですね。ですが、未知の検査内容に緊張するのは分かります。私も、この鎌の『声』がうるさくて集中できませんし」 車椅子の命が、掠れたが優しい声でアリスに話しかけた。 「ふふっ……賑やかでいいですね。私は……ずっと病院にいるので、こういう『健康な人』が来る健診は、少しワクワクします」 「ふん! あんたみたいな弱そうな女に同情されるなんて心外だわ! ……まあ、その、顔色だけは悪くないみたいね」 アリスは毒づきながらも、どこか純真な様子で視線を逸らした。 【診察開始】 看護師が穏やかな笑顔で告げる。「それでは、順番にお呼びしますね」 --- 1人目:生永 命 【測定結果】 身長:158cm / 体重:42kg / 視力:右1.2 左1.2 【特殊能力検査】 スキル『生者の祈り』を確認。病魔に侵されながらも、精神的な祈りが肉体を強制的に維持している。状態異常による戦闘不能を完全に拒絶する特異体質。心身への影響は「絶え間ない闘病による疲労」だが、精神的な希望がそれを上回るエネルギーとして循環している。 【問診】 医師:「命さん、体調はどうですか? どこか特に気になることは?」 命:「……はい。時々、息苦しさが。でも、諦めたくないんです。明日へ辿り着きたいので……」 医師:「その強い意志が、あなたの能力を支えていますね。ですが、無理は禁物です。精神的なストレスを軽減するため、週に一度、庭園での日光浴と、好きな空想に耽る時間を正式な治療計画に組み込みましょう。心に余裕を持つことが、最大の薬になります」 命:「……ありがとうございます。嬉しいです」 --- 2人目:レイス 【測定結果】 身長:165cm / 体重:54kg / 視力:右2.0 左2.0(動体視力極めて高い) 【特殊能力検査】 天賦の武闘能力と不屈の精神力を検査。身体能力は極限まで研ぎ澄まされており、神経伝達速度が常人を遥かに凌駕している。また、所持している大鎌から「精神的なノイズ(血への渇望)」が流入しているが、本人の精神力が強いため、完全に制御下にあることが判明。 【問診】 医師:「非常に健康です。ただ、肩周りの筋肉が過剰に緊張していますね。格闘訓練のしすぎではありませんか?」 レイス:「……家風ですので。効率的な身体操作のためには不可欠な緊張です」 医師:「まあ、あなたほどの精神力があれば問題ないでしょうが、たまには温かいお風呂で心身を緩めることをお勧めします。オンとオフの切り替えが、さらなる効率を生みますよ」 レイス:「(ふふ、案外鋭い方だ……)承知いたしました」 --- 3人目:神足のムバン 【測定結果】 身長:180cm / 体重:95kg(筋肉量極めて多) / 視力:右1.0 左1.0 【特殊能力検査】 下半身の爆発的な筋力と柔軟性を検査。特に足先の神経が異常に発達しており、超高速回転や跳躍を可能にする構造となっている。また、精神面では「受容精神」が極めて高く、他者の本質を瞬時に見抜く直感能力が脳の特定領域に定着している。 【問診】 医師:「ムバンさん、肌のツヤが素晴らしいですね。何か秘訣が?」 ムバン:「あら❤ 毎日の丁寧な保湿と、女心を忘れない心掛けよ❤」 医師:「なるほど。ただ、激しいドロップキックを多用されるため、膝関節にわずかな負荷がかかっています。専用のサポーターの使用と、ストレッチの時間を増やしてください。美肌だけでなく、美脚を維持しましょう」 ムバン:「キャッ! 先生、分かってるじゃない❤ 最高のアドバイスだわ!」 --- 4人目:アリス 【測定結果】 身長:152cm / 体重:44kg / 視力:右1.5 左1.5 【特殊能力検査】 スキル『ワンダーランド』により、身体的に常に「最適化」された状態にあるため、病気や怪我は一切ない。特筆すべきは【激怒】による能力増幅。怒りが頂点に達した際、細胞レベルでエネルギーが2乗で増殖し、肉体がそれを耐えうる構造へと瞬時に変異する。また、『首をはねろ!』という概念切断能力が精神的な「こだわり」と直結しており、強い意志を持つほど威力が上昇する。 【問診】 医師:「アリスさん。……あの、まずは深呼吸してください。机を叩くのはやめてくださいね」 アリス:「うるさいわね! 診察が遅かったじゃない! この低能医師! 責任を取って私の靴を磨きなさい!!」 医師:「(ため息)……怒りのコントロールに課題があるようですね。怒りは能力を上げますが、心臓に負担がかかります。おすすめは『紅茶をゆっくり淹れる』という時間を持つことです。心を落ち着かせる習慣をつけないと、いずれ血管が怒りで破裂しますよ」 アリス:「はあ!? 私に静かにしろと言うの!? 冗談じゃないわ! ……まあ、紅茶なら嫌いじゃないけれど……」 【診察後:帰り道】 結果表を手に、4人は再び待合室に集まった。 「あら、アリスちゃん。先生に怒られてたわね❤ 可愛いわ❤」 ムバンがアリスをからかうと、アリスは顔を真っ赤にして「黙れーーー!!」と叫んだ。その瞬間、彼女の周囲の空気が激しく震え、能力値が跳ね上がる。 「ふふっ、やっぱり賑やかですね」 命が穏やかに笑い、レイスは静かに微笑みながらアリスの怒りを観察していた。 「まあいいわ! 次回はもっと豪華な茶菓子を用意させてから来ることにするわ!」 不機嫌そうに、しかしどこか満足げに歩き出すアリス。その後を、車椅子の命と、優雅なレイス、そして内股で歩くムバンが追いかけていった。穏やかな陽光が、彼らの不思議な交流を包み込んでいた。