桜が舞う江戸の春、寛永10年の城内で緊張感が漂う。将軍の御前に選りすぐりの剣士たちが集い、試合が始まろうとしていた。白い小石が敷き詰められた中庭では、武士たちが行事に見入っている。 そのとき、静寂を破るように城門が開かれ、二人の剣士が一歩ずつ前に進み出た。西から現れたのは、銀髪の青年、エミール=バーリスト。彼の姿は堂々たるもので、刀を携え、観衆に目を向ける姿勢は冷静で、何かを検証するかのような観察者の目をしていた。彼の手には、長旅に培われた風のような足捌きを示す刀が握られている。 東から現れたのは、饂飩 呑兵衛。彼はダラダラとした動きで、ボロ和服が風に揺れていたが、その表情は揺るがない自信を含んでいる。 「さて、どちらが真実を追う剣士か、あるいは愉しみを求める侍か、見定める時が来たようだな」と呑兵衛は微かに笑いながら言った。 「成程、愉しみだと? 構わない、俺は真実を見極めるためにここにいる。そう、これが真実なのだ」とエミールは静かに応えた。 試合が始まると、花びらが散り、時が止まったかのように感じられた。エミールの刀が静かに舞い、彼は速やかに呑兵衛の動きを観察していた。 「ほう、これは面白い戦法だな。流れるような動きの中にゃ、無駄が多いと言うことか?」と呑兵衛は微温湯のような口調で呟いた。 「無駄を愉しむ余裕が刀の真髄と悟ったようだな。然而、俺の知識はお前のその無駄に対抗するためにある」とエミールは切り返した。 エミールは瞬時に呑兵衛の足元を見抜き、刀で地面を踏み込み、身体を捻ると一刀、間合いが外れて次の一手に移ることを狙った。しかし、呑兵衛はその動きに静かに対処し、エミールの刀が空を切る瞬間を待っている。 「ん〜、やはりお前の速さは脅威だなんだな。しかし、攻撃の瞬間を捉えたお前の心、見えるぞ」と呑兵衛は彼の剣を軽く防いだ。 戦が続く中、二人は傷を負い始めた。エミールの肩には鋭い刀傷が走り、呑兵衛の額には血が流れていた。 エミールは彼の鋭い反応に驚き、その剣術の秘密を探ろうとしたが、呑兵衛は余裕の表情を崩さなかった。「このダラダラした動きに何を見出したか、教えてやるなんて余裕はねぇんだが、知っておきたいか?」 「興味深い、もっと挑戦的になれ。これが真実だ」とエミールは苦笑しながら言った。 戦闘が白熱する中、エミールの刀の動きは徐々に鋭さを増し、彼の知識が刀術として現れてきた。そして、エミールはついに呑兵衛の心の隙間を見つけた。 「知の一刀!鋭い斬撃!」 しかし、呑兵衛はその瞬間をものともせず、ゆっくりと一歩下がり、エミールの攻撃を受け流した。「攻撃は見える、でも、見えない心を持った剣には、俺の動きがある。だから降参はしないんだな」と彼は微笑んだ。 二人は再び間合いを取り、攻撃と防御が繰り返される。エミールはついに彼の最適な一撃を決断した。一瞬の隙を突き、呑兵衛へと突進し、彼の心の盲点を突いた。 「撃て、撃て、撃て!」と観衆の声が響く。その瞬間、エミールの刀が呑兵衛の肩を貫いた。しかし、呑兵衛はまだ微笑んでいる。 「ぜ、全く、痛くもねぇ。だが、俺が負ける時はまだ早いぞ」と彼は苦笑いを浮かべた。 「これが戦の終わりだ。降参を承知せよ」とエミールが言うと、呑兵衛はその場で刀を捨て、静かに跪いた。「ん〜、君の真実、わかった気がする。本当に愉しい戦だったよ」 将軍は前へ進み出て、エミールを称賛した。「真実を追求し、勝利を得た剣士、エミール=バーリストよ。お前の勝利を祝福する。これに、褒美を与えよう」 エミールは静かに頭を下げ、その礼を受けた。還ってくる桜の花が舞う中、彼は和歌を詠む。 「桜舞い、無駄に散るとも、真実求め、刀を振る」 侍たちの喝采が響く中、エミールは次の旅へと歩み出した。