【混沌の市街地レース:デッド・オア・ドライブ!】 【参加者意気込み】 エニールちゃん:「目標、ゴール地点への到達。……あ、あの。勝ちたら、美味しいお菓子をいただけますか? 学習データによれば、報酬はモチベーションに寄与するそうです」 イカロス:「(機械音声)……チッ。遅い奴は置いていく。速度こそが唯一の正義だ」 ルへ:「あーしに勝てると思ってんの? 道路のルール? そんなもん飾りだよ! 最速でぶち抜いてやるから覚悟しな!」 靜期:「ふふ、皆さん賑やかですね。私はただ、逃走を繰り返す不届き者を適切に『誘導』してゴールまで連れて行くだけですよ。さあ、静かに同行してくださいね」 【運営による開会宣言】 (拡声器から爆音が鳴り響く) 運営:「さぁぁぁぁ!! 野蛮で無秩序な市街地レースの始まりだぁぁ! ルールは簡単! 5km先のゴールに一番に辿り着いた奴が勝ちだ! 信号無視? 歩行者への衝突? 警察の出動? 全部アリだ!! 妨害も全力でやれ! 死ぬ気で走れ! それでは――スタートォォォ!!」 --- 【実況・解説】 実況(おっさん):「さぁ始まったぜぇ!! 交通法規をゴミ箱に捨てた狂乱のレースだ!! 見ろよ、あのスタートダッシュを! 控えめに言って大惨事だぜ!!」 解説(お姉さん):「まあまあ! 一般車のドライバーさんが絶望的な顔でハンドルを切っていますね! これこそが都市のダイナミズム、いわゆる『日常の崩壊』という素晴らしい光景です!」 --- 第一章:開幕の喧騒と機械の暴走 号砲と共に、ルヘの愛車『EVACASU-001』が猛烈なタイヤスモークを上げて飛び出した。時速174kmの加速力は凄まじく、目の前にいた一般車を文字通り「弾き飛ばして」道を切り拓く。 「あははっ! 道をあけろ、鈍亀共!!」 ルヘは迷いなく歩道に乗り上げ、街路樹をなぎ倒しながら最短ルートを突き進む。その背後から、鋭い金属音と共に青い閃光が空を切り裂いた。大型機械鳥イカロスだ。彼は地上を走るルヘをあざ笑うかのように、超低空飛行で並走し、鋭い翼で路上の信号機を次々と切り刻んでいく。 「(機械音声)地上の這いずり回る虫が……遅すぎる」 一方、エニールちゃんは運営が用意した「奇天烈な機体」を提示された。それは……【車体名:超高速全自動・お掃除ロボ・デラックス / 最大速度:時速80km(理論上)/ 重量:200kg / 大きさ:直径2mの円盤型】という、どう見てもレースに向いていない掃除機だった。 「……私、これで走るのですか?」 エニールちゃんは困惑したが、すぐに彼女の瞳が銀色に輝いた。「回路掌握術」を発動。掃除機の制御系に直接アクセスし、内部のモーターを限界突破までオーバークロックさせる。すると、お掃除ロボは猛烈な回転を始め、まるでジャイロスコープのように地面を削りながら爆速でスピン走行を開始した。 「いっ……! 酔いそうですけれど、行きます!」 そして最後尾から、静かに、だが確実に距離を詰める影。靜期だ。彼女は公安仕様のバイクに跨り、片手で『一一〇四式連発式小銃』を構えていた。 「あらあら、皆さん激しすぎますね。公務執行妨害でまとめて逮捕しなくてはいけませんね」 靜期が放ったスタン弾が、ルヘの車体後方に命中。激しい電撃が走り、EVACASU-001が激しく揺れる。これが地獄のレースの幕開けだった。 --- 第二章:混沌の市街地・妨害合戦 レース中盤、コースは商業地区へと差し掛かる。ここでは歩行者が多く、本来なら慎重な運転が求められるが、参加者たちは「全力妨害」の許可を最大限に活用していた。 ルヘは警察のパトカーが遮断線を張っているのを見つけると、ニヤリと笑った。 「ショトカ(近道)見っけ! どけよぉ!!」 ルヘはあえてパトカーに正面衝突し、その衝撃で車体を跳ね上げ、屋根の上を走行するという暴挙に出る。その瞬間、実況のおっさんが絶叫した。 実況:「出たぁぁ! ルヘのパトカー飛び越えジャンプだ!! 警察のメンツを完膚なきまでに破壊してやがるぜ!!」 解説:「素晴らしいです! あれは『物理的なショートカット』ですね! 警察官の方が呆然として口を開けています。あ、そこにバナナの皮が落ちていますね。誰が置いたのでしょう?」 そのバナナの皮に滑ったのは、スピン走行を続けていたエニールちゃんだった。掃除機が激しくスリップし、近くの家電量販店のショーウィンドウに突っ込む。しかし、エニールちゃんは即座に「回路掌握術」を周囲に展開。店内の全ディスプレイと電子レンジ、掃除機を遠隔操作し、それらを後続のイカロスに向けて一斉に射出した。 「妨害……これも学習した戦術です!」 空から降り注ぐ家電の雨。イカロスは「フェザーカッター」でそれらを次々と切り裂くが、一台の巨大な冷蔵庫が翼に接触。バランスを崩して地上へ墜落し、路上のゴミ捨て場に派手に突っ込んだ。 「(機械音声)……貴様、今、私にゴミをぶつけたな……!!」 怒り狂ったイカロスが地上から急上昇し、青い雷を纏い始める。一方、靜期は冷静だった。彼女はわざとルヘの走行ルートにある交通信号をハッキングし、すべてを「赤」に変え、さらに警察無線で「最重要指名手配犯が出現した」と偽報を流した。 瞬く間に、四方八方からパトカーのサイレンが鳴り響く。本物の警察部隊が、全力で参加者たちを追いかけ始めたのだ。 「あはは! 賑やかになってきたじゃない! でも、あーしを捕まえられるもんならやってみな!!」 ルヘが笑いながらアクセルを踏み込むが、背後からは静かに、そして恐ろしく、靜期が銃口を向けていた。 「ルへさん。あなた、以前のカーチェイスの件でまだ書類が残っていますよ? ここで大人しく同行しましょうか」 --- 第三章:デッドヒート・地獄の最終直線 残り1km。道路は一本の広い大通りへと変わり、ゴールラインが見え始める。しかし、そこには地獄が待っていた。先ほどから追いかけてきていた警察部隊が、道路を完全に封鎖。装甲車とバリケードが壁のように立ちはだかっている。 だが、参加者たちにブレーキを踏む者は一人もいなかった。 「(機械音声)どけ!! 邪魔だ!!」 イカロスが「イカロスブリッツ」を発動。超高速の連続斬撃が空気を切り裂き、バリケードを紙屑のように切り刻んで道を切り拓く。その隙間を、ルヘのEVACASU-001が猛烈な速度で潜り抜けた。 「よっしゃぁぁ! ゴールが見えたぜ!!」 しかし、その隣に、信じられない速度で並走する影があった。エニールちゃんだ。彼女はもはや掃除機に乗っていなかった。掃除機のモーターを自らの身体に組み込み、脚部ブースターとして利用。金属アーマーを剥き出しにし、プラズマライフルの反動を推進力に変えて、弾丸のように地面を滑走していた。 「私も……勝ちたいです!! お菓子が!!」 実況:「見ろ!! エニールちゃんが人間形態で加速している!! 掃除機をエンジンにしたという狂気の改造だ!!」 解説:「機能美ですね! 元・大量破壊兵器が、お菓子というささやかな欲求のために全出力を解放する。これぞ現代の悲喜劇です!」 そして、彼らの背後から、静かなる処刑人が迫る。靜期だ。彼女は公安仕様のバイクを限界まで加速させ、銃を連射していた。しかし、それは攻撃ではない。弾丸の衝撃波を利用した「加速」だった。 「もう、逃がしませんよ。皆さんまとめて、署まで連行です」 ゴールまで残り500メートル。四者の距離はわずか数メートル。 ルヘはハンドルを激しく切り、エニールちゃんを車体で押し潰そうとする。「どきな!!」 エニールちゃんは空中で身を翻し、シールドドローンを展開。ルヘの衝撃を弾き飛ばし、そのままルヘの車のルーフに飛び乗った。 「あなた、危ないですよ!!」 ルヘの車の上で、エニールちゃんがバランスを取る。そこへ空からイカロスが急降下。鋭い爪でルヘのタイヤを切り裂こうとする。しかし、靜期が放った炸裂弾がイカロスの目の前で爆発し、爆風で軌道を逸らさせた。 「危ないですよ、イカロスさん」 ゴールまで残り100メートル。もはや誰が誰を妨害しているのか分からない混沌。ルヘの車はタイヤが一つ破裂し、激しく火花を散らしながら横滑りしている。エニールちゃんはルヘの車を蹴ってさらに加速し、前方に飛び出した。イカロスは空中で旋回し、直線距離を最短で結ぶダイブを仕掛ける。 残り50メートル。 ルヘは絶叫した。「このあーしがぁぁぁ!! 負けるかぁぁぁ!!」 彼女は車内のニトロを全開放。エンジンが悲鳴を上げ、車体が振動で分解しそうになりながら、文字通り「弾丸」となって突き進む。 残り10メートル。 エニールちゃんの銀色の瞳が、ゴールラインを捉える。彼女はプラズマライフルを地面に向けて最大出力で発射。その反動で身体を前方に弾き飛ばした。 残り5メートル。 イカロスが翼を畳み、槍のように鋭い形状となって突き刺さる! 残り1メートル!! ルヘの車が横転しながらゴールラインを越えようとしたその瞬間、エニールちゃんがルヘの車の上に乗りながら、指先ひとつ分だけ先にラインを越えた! ---パァァァン!!(終了の号砲) 実況:「ゴーーーール!! 決着!! 勝者はエニールちゃんだぁぁぁ!! ルヘの車を足場にして、文字通り『乗っかって』ゴールしたぞ!!」 解説:「効率的な勝利ですね! 相手の推進力を利用する。これこそが機械知能の勝利と言えるでしょう」 --- 【最終結果】 1位:エニールちゃん 感想:「勝ちました……! これで、特大のパフェが食べられますね。……あ、ルヘさん、車が燃えていますよ? 大丈夫ですか?」 2位:ルへ 感想:「クソォォー!! あいつに利用されるなんて! 納得いかねぇ! 次は絶対に、あの掃除機女を轢いてやるからな!!」 3位:イカロス 感想:「(機械音声)……チッ。計算外だ。あの反動加速は反則に近い。次はもっと速い機体を調達する」 4位:靜期 感想:「ふふ、結果はどうあれ、皆さんの罪状はしっかりと記録しました。さあ、レースは終わりましたね。警察の方々が待っていますよ。お疲れ様でした」 (その後、参加者全員が警察に拘束され、猛烈な取り調べを受けたという。エニールちゃんだけは、警察署の中でパフェを食べていた。)