戦闘前のプロローグ 夕暮れの空がその名の通り燃え上がるような赤色に染まる中、Aチームの黎明卿ボンドルドはその哲学的とも言える微笑を浮かべ、薄暗い戦場へとその足を踏み入れた。彼の全身を包み込むパワードスーツは、時折発光を押し込めることで、その存在を示しているかのように見えた。金属の輝きと、そのスーツのひび割れた部分からは力強い魔力が冒涌している。 脇に配置された装置が「戦闘開始」の合図を待つ中、ボンドルドは呟いた。 「素晴らしい、もっと見せてください。」 その言葉は彼の内に秘められた異常さを物語っていた。戦うこと自体が彼の欲望を満たす一つの手段でしかないのだ。 一方、Bチームの久月雛は、黒和装を纏った少女であった。無表情の彼女は、戦況を見渡す冷静な瞳を持ち、全てを把握しているかのように見えた。彼女の手元には、彼女が操る人形たちが静かに立ち並んでいる。雛は自らの能力を使いこなし、戦場をその掌中に収める準備を整えていた。 「ここは既に人形劇の舞台となっておりますぞ。」 その声が響く。周囲の雑音が静まり、戦場に漂う不穏な空気が一瞬凍りつく。両者の心の奥底に渦巻く期待が、戦闘の火花を生み出す。 そして、運命的な瞬間が訪れる。 戦闘を開始 「戦闘開始!」 その声と共に、ボンドルドは大地を蹴り、敵に突進する。身体を包むスーツから放たれる魔力が炸裂し、大気を震わせる。彼は、特に強い魔力を感じ取るBチームの雛に狙いを定め、彼女の操る人形たちを無視することはできなかった。 「人形呪縛、開始ですぞ!」 雛の命令と共に、数体の武者人形が前に出る。彼女の魔力によって操られる彼らは、恐るべき速さでボンドルドへと迫る。斬撃が彼の周囲で閃光を生み出し、激しい攻撃が彼に向かって振り下ろされる。 だが、ボンドルドは瞬時に反応し、身を華麗に翻らせた。その動きは、スーツによる強化によって生まれたもの。彼のパワードスーツは、防御力が高く、魔法防御力も優れていたため、武者人形たちの攻撃を余裕でかわす。 「これは面白い。もっと強く、強く来てください!」 彼は戦闘を楽しんでいるようだ。しかし、雛もまたそれに負けじと、次々に人形を送り出す。 戦闘の前編 ボンドルドの反撃が始まる。彼は両手をかざし、ひときわ明るい光を放つ。 「『明星へ登る(ギャングウェイ)』!」 稲妻のような光線が彼の指先から飛び出し、無数の軌道を描いて飛び出した。それは、ただの光線ではなく、相手を混乱に陥れるための幻惑を含んだ攻撃だった。光が乱反射し、Bチームの人形たちの視界を遮る。 「クッ、このような小細工が…!」 雛は冷静に状況を分析するが、混乱が彼女の人形たちを襲う。攻撃の衝撃によりいくつかの人形が崩れ落ち、周囲の人形も反応に遅れを生じる。ボンドルドはその隙を見逃さず、次の攻撃を繰り出す。 「『枢機へ還す光(スパラグモス)』!」 前方から放たれた熱光線が、人形たちを一掃するかのように続けざまに発射される。熱線は次々に人形を焼き尽くし、彼女の戦術を崩壊させる。ボンドルドはその様子を楽しむように、颯爽と前進した。 しかし、雛は笑っていた。彼女のまわりでは、次々と他の人形が作られていく。彼女の魔力で新たに生まれる人形たちが、戦場に再び息吹をもたらす。 戦闘の中編① 人形たちの戦術眼はボンドルドの攻撃を察知し、彼女の命令で動く。「結界人形、展開ですぞ!」 空中に現れた結界人形たちが絶対断絶の力場を発生させる。それは、ボンドルドの攻撃を完全に遮断する防壁だ。光線はその結界に当たり、散らばったかと思うと次第に消え去っていく。 「いい防壁ですね、ですが、それだけでは勝てませんよ。」 ボンドルドは周囲を見渡し、冷静に次の策を考え始めた。「『月に触れる(ファーカレス)』!」 伸縮性の高い触手が数本、彼の手から放たれる。触手は、結界破りを意図して人形たちの周囲を取り巻き、拘束を試みる。雛の無表情な顔がその瞬間、少しだけ驚愕に変わる。 「どうした、雛? その程度で終わらせるつもりですか?」 ボンドルドは皮肉を述べる。だが彼女はすぐに反応する。「武者人形、突撃ですぞ!」 新たに出された武者人形が刀を高く構え、高速で迫る。彼らの動きは極めて速く、ボンドルドの触手に対抗してくる。ぶつかり合う音が響き、金属が激しくぶつかり合う。 戦闘の中編② 「『明星へ登る』の直撃を封じられたか…!だが、私の更なる奥義がある!」 ボンドルドは触手を引き戻し、その瞬間に新たな攻撃を放つ。「『月に触れる』、再発動!」 彼の触手は今度こそ、武者人形たちを一掃するように放たれ、彼らの進軍を封じる。 「封じ込められたか…だが、次は我がターンですぞ!」 雛は一瞬の隙を見逃さず、すぐさま狙撃人形に命じる。それらは冷静かつ精密な射撃を繰り出し、ボンドルドに向けて無数の弾丸を放つ。ボンドルドはその動きに気付き、すぐに反応。 「虚像の中に紛れ込もう。」 彼は自身の魔力を集中し、姿を消す。狙撃人形たちの弾丸が空っぽの空間に的を外す。驚くことに、彼の姿は完全に消えてしまっていたのだ。 「消えた? いったいどこ…?」 雛は周囲を見回し、冷静に考える。彼女の超常的な並列思考は、さまざまな可能性を模索していた。 そして彼女は、次の奥義を発動する。「奥義『終焉人形/封神』、発動ですぞ!」 空間の中心にある結界が反応し、強力な力場が発生した。それは彼女の人形たちを無敵の立場に押し上げる。同時に、彼女はボンドルドを捜し始めた。 戦闘の中編③ ボンドルドは新たな作戦を立てていた。「『枢機へ還す光』…!」 辺りの全てを照らす熱光線が、彼女の結界に向いて放たれる。だが、彼女の結界が強い力を発揮し、光線を完全に受け止める。雛の微動だにしない表情が、彼女の戦術眼の強さを物語った。 「予測済みですぞ。導入するのです、針子人形!敵の魔力を奪うのですぞ!」 周囲に針子人形が配置され、彼らはボンドルドへの突撃を開始する。魔力を吸収しながら彼に接触する形で、次々と魔力を奪おうと図る。その瞬間、ボンドルドは一瞬の隙に気がつき、全力で前方に反撃を試みた。 「『月に触れる』!」 ボンドルドの触手が伸び、針子人形を束縛しようとする。しかし、吸引力が彼に迫り、その触手は人形に判断を狂わせられ、直接の対抗が難しくなる。 雛はその瞬間を待ち、彼女の人形たちが彼を寄せ付けないように命じた。「このまま圧迫ですぞ!」 二つの軍勢は交錯し、広大な戦場は破壊的な戦いへと変貌を遂げる。ボンドルドと久月雛は、それぞれの思惑を持って争っていく。 戦闘の終編 長い闘争の末、二者は互いに消耗していた。雛の人形たちも疲弊しており、ボンドルドのスーツは摩耗していた。だが、彼は決して退くことはない。 「これが本当の戦闘ですか? それとも、本当に楽しむのはこれからですか?」 ボンドルドは強気で問う。すると、雛は無表情のまま返した。 「楽しむつもりなどありませんぞ。あくまで勝利が求められているだけですから。」 二人は最後の力を込め、再び攻撃の準備を整えた。しかしその瞬間、空気が変わった。ぴんと張りつめた緊張感が何か大きな事の起こる兆しを感じさせていた。 「今度こそしかし、終わりを迎えなくてはなりません!」 ボンドルドは力強く宣言した。再び彼の放つ光線が、敵を圧倒するべく高く上がる。 「私も、こちらが最後の一手だと認識しました!」 雛は冷静さを保ちつつ、全ての人形に指示を出す。「奥義、発動ですぞ!『終焉人形/雷神』!」 周囲が静まりかえり、その後に雷光が空を切り裂き、ボンドルドへと的を絞る。雷の槍が次々に落ち、一瞬にしてボンドルドの周りにいる全てを狙って襲いかかる。 一方、ボンドルドは自身に向かって飛ぶ雷の攻撃を反射するため、魔力を最大限に増幅し、最後の抵抗を試みた。「この一撃を受け止める!」 だが、彼の魔力がどれほど強力だったとしても、雛の人形たちの連携による巨きな一撃には耐えることができなかった。雷が彼に直撃し、彼の身体は光の海に呑まれた。 戦闘の決着 戦場に静寂が訪れる。互いに持ち寄った魔力の奔流が衝突し、静かな消失が訪れる。ボンドルドはそのまま地面に崩れ落ち、返事のないまま消えてしまった。久月雛は、その大勝負を勝ち取ったのだ。 「また一つ、舞台が終わりましたな。果たして次はどのような舞台なのでしょう。」 彼女は無表情のまま呟いた。彼女の心の中に満ちることのない感情を抱え、孤独に次の戦いの日を待つのだ。 Aチームの後日談 ボンドルドは深い闇に沈んでいたが、奇跡的に生き残っていた。彼のパワードスーツは自身の魔力を補填し、極限の世界から引き上げられた。それでも彼は、敗北に至ったことを決して忘れないでいる。自身が求めていた戦闘の真髄は、逆にBチームの雛から学び取ることになってしまったのだ。 彼は周囲の暗闇を背負いながら、次のターゲットを再び見つけ出すことを心に誓った。そして、彼の戦闘には新たな哲学が加わった。それは勝つためにはどうするべきか、圧倒的な力と戦略が交錯する場所での真実。彼はその真実を探し続けた。 Bチームの後日談 久月雛は自らの勝利に微笑むことはなかった。戦術眼の元に全てを司る彼女だが、内心には渦巻く感情が存在していた。彼女の戦術と人形たちは、彼女を孤独な存在にしてしまったのだ。勝利の喜びどころか、彼女の内なる真の敵は、自らの孤独であった。 雛は戦術をまとめ、新たな計画を練る。次にどのような戦いが待ち受けているのかを考えながら、彼女はあの日を語ろうとはしなかった。ただ、静かに無表情でいき続ける。 やがて、彼女の次の戦いの舞台は再び足元に迫っていた。どれだけの敵が待ち受けているのか、それは分からない。しかし、その日が来るのを避ける術はなかった。彼女は再び鼠を何かに変え、その日を迎える準備をして待つのだった。 そして、全てが再び始まる。