江戸の春、桜の花びらが舞い散る中、徳川将軍の御前に集まった群衆は、熱気を帯びた雰囲気を醸し出していた。城の中庭に並ぶ白い小石の道を挟むように、西と東から互いに入場してきたのは、二人の剣士だった。 一人は、冷淡な眼差しを持つ男、鳥倉檻弥。彼の刀術「鳥籠刀術」は、相手の動きを巧みに操り、その間隙を突いて致命的な一撃を加える技であった。もう一人は、16歳の剣豪少女、デレニア・ヘレネイド。彼女は「黄泉と曳航を司る剣豪少女」として、その冷静で非情な技術を誇った。 「お前が依頼の人物か。」檻弥がクールに呟くように言う。 「うん、そうだよ。」デレニアは淡々と答えた。「でも、お前も簡単にはいかないよ。」 静寂が広がり、将軍が両者に対して試合の開幕を告げる。観衆は息を飲み、緊張した空気が辺りを支配する。 檻弥は、タバコを咥え、朧気な瞳でデレニアを見つめる。歌い始めた。「かごめかごめ、かごの中のとりは…」 彼の声は低く、子守唄のように耳を打つ。それに合わせて彼は刀を振るい、巧妙に相手の動きを誘い出す。デレニアは眉をひそめ、冷静に反応する。「その謎の旋律が、私の心を揺らすと思っているのか?」 彼女は一瞬の隙を見逃さず、刀を構えて襲いかかる。青い炎が周囲を包み、蒼炎の斬撃が檻弥に向かって舞い上がる。 「小細工は必要ない…」檻弥は彼女の襲撃を回避し、即座に反撃に転じる。巧みな動作で、刹那の隙を狙った斬撃を放つ。 デレニアはその斬撃を【燼り】で防ぎ、瞬時に灰に変えてしまう。「遅いよ、檻弥。」 彼の心中には不安が生まれる。彼女の技は神速で、何度も繰り返し投げかけられる攻撃に対して、同じ手は通用しないと理解し始める。一瞬の隙が妙な恐怖を引き起こした。 「かごめかごめ…」彼は歌を続けるが、心は揺らぎ始めた。彼が思ったよりも、デレニアの剣技は得体が知れないものであった。 再度の攻撃、今度は檻弥が握る刀の先から鳥籠のような空間を形成する。「お前の心を揺らすには、まだまだ足りないか?」 デレニアは冷静を保ち、「黄泉の世界は怖くない…少し眠るだけだから」と告げ、彼の言葉を無視して攻撃を繰り返す。 彼女の剣はまるで暴風のように吹き荒れ、檻弥はそれを受け止めることに苦戦を強いられた。耳の中に響く“Awwww…”という音は彼の心をさらに苛立たせる。 「お前の技が、俺に通じると思ってんのか?」檻弥は、身体を捻って逃げたが、その瞬間、左肩をかすめる斬撃を受ける。「くっ…!」 血が流れる。彼はすぐに切り返しを試みるが、彼女の動きは一瞬で次の攻撃に転じた。 「愚かな挑戦者。」デレニアは言葉を持ちながら、その目は驚くほど冷淡だった。今、彼女の体の周囲の蒼炎は、更なる力を増していた。そして、一気にその力を放出する。 「この技で終わらせてやる…、【燻り、抜刀】!」一瞬、彼女の刀が空気を切り裂くように動いた。 檻弥はそれを見た。背筋が冷たくなる感覚。彼は思いついた。 「後ろの正面だあれ…!」最後の一閃、檻弥は歌の終わりと共に体勢を整え、彼女の一瞬の隙間をついた。歓声が上がる中、彼女の心を声と音楽で狂わせ、刃の間隙で一撃必殺の斬撃を返した。 立ち上がる両者。デレニアは、彼の斬撃を受けながらも微笑む。「いい攻撃だった。でも、私にはまだ負けない理由があるよ。」 檻弥はその言葉に動揺を覚えた。すでに彼女の肩には深い傷ができていたが、デレニアは、それを全く気にしない様子だった。 「私もだ…!」檻弥は燃え盛る意志を示し、再び向かい合う。 時が経つにつれ、彼らの戦いはさらに厳しくなり、互いに傷つきながらも全力を尽くす。しかし、この試合は決して譲ることのない戦いであった。 長い時間が経つと、二人はそれぞれ心と体に深く傷を負った。いつしか、空は夕日に染まり始めた。 「負けたら…。仕方がない。」檻弥は苦しみながらも強く言った。 「では、私も…全力で向かうよ。」デレニアは硬い決意を持ち、最後の一撃を放つ。 その瞬間、最後の斬撃が二人の体を貫き、舞い上がる桜の花びらのように舞った。静寂が場を覆った。 しばらくの後、将軍がその光景を見守りながら言葉をかける。「勝者は…両者である。お前たちの戦いは、実に素晴らしいものだった。」 彼は言った。惚れ惚れするような戦いに心を震わせ、その後、勝者を讃え、切腹を思わせる厳かさの中、共に和歌を詠む光景が、そこには留まることになる。