深夜、月明かりさえも拒絶するように厚い雲に覆われた森の奥。そこに、時代に取り残されたような巨大なゴシック様式の屋敷が鎮座していた。重厚な鉄門を潜った四人の男女——あるいは人ならざる者たち——の目的はただ一つ。屋敷に眠るお宝を掠め取り、最低15,000ゴールド分を持って生還することだ。 しかし、ここには「ルール」がある。得た宝は個人の財産となる。つまり、仲間と協力して潜入しても、最後に笑うのは欲深い者だけかもしれない。そして、屋敷に潜む「掃除屋」たちに見つかれば、一撃で意識を飛ばされ、すべてを失うことになる。 第一章:不協和音の潜入 「……いいか、作戦は単純だ。分散して効率よく集め、合流して脱出する。無駄な争いは避けてくれ」 ピンク色の長い髪をなびかせ、慎重に周囲を警戒しながらディアボロが口を開いた。彼の瞳には常に疑心暗鬼の色がある。隣では、地味な黒いスーツに身を包んだ女性、成若大名が小さく頷いている。彼女の表情は乏しいが、その内側には底知れない渇望と嫉妬が渦巻いていた。 「了解。まあ、適当にやるよ」 気だるげに答えたのは、幽霊であるヴァルブハトだ。彼は実体を持たず、ふわふわと宙に浮いている。そして最後の一人。彼らは互いに顔を見合わせたが、そこにいたのは「人間」ではなく、全長数メートルの大型貨物トラック、Big Rigsであった。エンジン音すらしない。ただそこに、バグったテクスチャのような不気味な存在感を放って鎮座している。 「(……なぜトラックがいるんだ。だが、この状況でそれを問うのは時間の無駄か)」 ディアボロは心の中で毒づき、重い玄関扉を押し開いた。ギィィ……という不快な音が静寂を切り裂く。その瞬間、彼らは本能的に悟った。この屋敷は、彼らを歓迎していないことを。 第二章:静寂と狂騒の収集 屋敷の中は埃っぽく、至る所に豪華な調度品が転がっていた。彼らは手分けして探索を開始する。 成若大名は、廊下の隅に置かれた銀の燭台(2,000ゴールド)を手に取った。同時に、彼女の視線はディアボロの背中を追っていた。彼が持つ「何か」——その特別な能力への嫉妬が、彼女の精神を刺激する。彼女は静かに、ディアボロの立ち振る舞い、呼吸、そして能力の片鱗を模倣し始めた。 一方、ヴァルブハトはテレポートを繰り返し、屋敷の至る所から宝石や金貨をかき集めていた。彼にとって物理的な壁は意味をなさない。金色のシャンデリア(5,000ゴールド)をひょいと抜き取り、懐にねじ込む。 そして、Big Rigs。彼は……文字通り、廊下を「すり抜けて」いた。壁にぶつかることもなく、不自然な挙動で直進する。彼は偶然にも、地下室への通路にある金色の彫像(8,000ゴールド)を車体に「めり込ませる」形で回収した。ブレーキを踏むと一瞬で停止するその挙動は、物理法則を完全に無視していた。 だが、静寂は長くは続かない。 ガシャンッ!! Big Rigsが、運悪く床に置いてあった大きな花瓶をなぎ倒した。SEは鳴らないはずだが、物理的な衝撃音だけは屋敷に響き渡る。 「……っ! 音を立てたか!」 ディアボロが叫ぶ。その直後、廊下の突き当たりから、凄まじい速度で何かを構えた影が現れた。大型銃を携えた幽霊、ウィニットだ。彼女は音に反応し、容赦なく銃口を向けた。 ドォォォォン!! 凄まじい衝撃波が走る。しかし、弾丸はBig Rigsの車体をすり抜けた。当たり判定がないため、彼は無傷だ。だが、その背後にいた成若大名が、ウィニットの鋭い視線に捉えられた。 「しまっ……!」 成若が回避しようとした瞬間、ウィニットの銃弾が彼女の肩をかすめた。いや、かすめたのではない。このゲームのルールにおいて、敵の攻撃は絶対的だ。成若大名は悲鳴を上げる間もなく、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。気絶である。 第三章:追い詰められた帝王 「チッ、不運な女だ。だが、俺は違う」 ディアボロは前髪の内側で【エピタフ】を発動させた。十数秒後の未来。そこには、背後から鎌を振り下ろす死神サジーと、正面から歩いてくる黒い重騎士ゼニスの姿があった。 「未来は見えた! 消し飛ばせッ!!」 【キング・クリムゾン】が発動し、時間が消し飛ぶ。ディアボロは消えた時間の中で軽やかに移動し、敵の攻撃範囲外へと回り込んだ。しかし、彼が気づかなかったことが一つある。 カチャ、カチャ……。 足元から聞こえる小さな音。見上げれば、そこにはナイフを構えた人形少女ルナが立っていた。彼女は「誰か一人を最後まで執拗に追い続ける」という呪いのような特性を持っていた。そのターゲットは、この潜入作戦で最も「自負」の強い男、ディアボロだったのだ。 「なっ……いつの間に!?」 ルナは無表情のまま、超人的な速度でナイフを突き出した。ディアボロは再び時間を消そうとしたが、ルナの攻撃は「追跡」という概念に基づいた執念の攻撃であり、回避の隙を与えない。そして、運悪く背後からゼニスの巨大な足音が近づいていた。 ズシン!! ゼニスの姿が見えた瞬間、ディアボロは戦慄した。見つかった時点で気絶確定。逃げ場はない。前にはルナ、後ろにはゼニス。 「くそっ! 俺が……この俺がこんなところで!!」 シュパッ!! ルナのナイフが、そしてゼニスの重い甲冑の一撃が同時にディアボロを襲った。帝王は、情けない声を上げて気絶し、床に転がった。 第四章:混沌の脱出劇 残されたのは、幽霊のヴァルブハトと、バグだらけのトラックBig Rigsだけだ。 ヴァルブハトは冷静だった。彼は状況を俯瞰し、気絶した仲間たちの懐からお宝を回収し始めた。成若の燭台、ディアボロが密かに持っていた金時計(3,000ゴールド)などをすべて自分の懐へテレポートさせる。 「まあ、結果的に俺が全部持つことになるな」 しかし、脱出路である玄関に向かう途中で、彼は最悪の事態に遭遇した。廊下を完全に塞ぐように、死神サジーと重騎士ゼニス、そして銃のウィニットが三位一体となって立ちはだかっていた。さらに、ルナが獲物を失った寂しげな顔でこちらを凝視している。 絶体絶命か。だが、ヴァルブハトは不敵に笑った。 「時間停止」 世界から色が消え、すべての動きが止まる。ヴァルブハトは悠々と敵の脇をすり抜け、玄関へと向かった。しかし、そこで彼は奇妙な光景を目にする。 Big Rigsが、バック走行を開始していた。 ……(無音)…… BGMもSEもない。だが、彼の速度は指数関数的に上昇していた。100km/h、10,000km/h、1億km/h……。バック走行による無限加速。もはや視認できない速度となったトラックは、物理的な壁など関係なく、屋敷の構造そのものをバグらせながら後退していた。 「おい、待て! 一緒に逃げるぞ!」 ヴァルブハトが叫び、時間を再び動かした。その瞬間、敵たちが一斉に襲いかかる。だが、彼らが狙ったのはヴァルブハトではなく、巨大な質量(?)となったBig Rigsだった。 しかし、Big Rigsには当たり判定がない。敵たちの攻撃はすべて空を切り、彼らは混乱して互いにぶつかり合った。 そして、Big Rigsは屋敷の正門を突破した瞬間、ブレーキを一度だけ踏み込んだ。 キキッ!(※音はしないが、そういう概念の停止) 時速10の36乗km/hから一瞬で0km/hへ。その急停止による衝撃波(バグ)で、周囲の空間が歪み、ヴァルブハトもろとも屋敷の外へと弾き飛ばされた。 エピローグ:勝者は誰か 朝靄の中、四人は屋敷の外で目を覚ました。成若大名とディアボロは、後からふらふらと出てきた(あるいは誰かに運ばれた)様子だ。 「……完敗だ。あんな人形に、あんな騎士に……」 ディアボロは地面に伏せ、絶望に打ちひしがれていた。成若大名もまた、自分の無力さを噛み締め、静かに涙を流している。 一方、ヴァルブハトは満足げに懐からお宝をぶちまけた。銀の燭台、金色のシャンデリア、金色の彫像、そして金時計。すべてを合計すると、18,000ゴールドを軽く超えていた。 そして、Big Rigs。彼は何も持っていなかった。荷台は空っぽ。しかし、彼のフロントガラスには、なぜかシステムメッセージが浮かび上がっていた。 『YOU'RE WINNER』 物理法則も、ゲームのルールも、そしてプライドさえも置き去りにした、あまりにも不可解な潜入作戦の結果であった。 【作戦結果】 脱出成功者: ヴァルブハト(お宝を独占し、余裕で生還) Big Rigs(バグの力で生還) 脱出失敗者: ディアボロ(ルナとゼニスにより気絶) 成若 大名(ウィニットにより気絶) 集めたお宝総額: * 18,000ゴールド以上(成功条件15,000ゴールドを達成)