DIO vs 長餅 もっち:時を止める吸血鬼と餅の森の遊戯 暗く湿った廃墟の広場に、月明かりが冷たく差し込む。100年の眠りから覚めたDIOは、黄金の髪をなびかせ、鋭い眼光で周囲を見渡していた。彼の目的はただ一つ――ジョナサンの子孫、空条承太郎を葬ること。そのために、この奇妙な場所に足を踏み入れたのだ。対するは、ぴょんぴょんと軽やかな足取りで現れた小さな少女、長餅 もっち。7歳の天真爛漫な笑顔を浮かべ、彼女の周囲にはすでに地面から不思議な木々が芽吹き始めていた。もちもちの木――白く柔らかな餅でできた、ベタベタとした粘着質の植物。もっちは悪戯っぽく目を細め、DIOを指差した。 「ねえ、おにいちゃん! あんた、なんか怖い顔してるよ! もっちと遊ぼうよ! でも、もちもちの木にくっついちゃうかもね、くすくす!」 DIOは嘲るように唇を歪めた。こんな子供じみた存在が、戦いの相手だと? 彼の瞳に不気味な輝きが宿る。「フン、貴様のような小娘が俺の前に立つとは……無駄だ。WRYYYY!」彼の声は低く響き、たちまち空気が重くなった。DIOは一瞬で距離を詰め、鋭い爪を振り上げてもっちに襲いかかった。怪力の一撃は空気を切り裂き、地面を抉るほどの威力。もし当たれば、少女の小さな体など一瞬で粉砕されるはずだった。 しかし、もっちはくすくす笑いながら、もちもちの木の間を軽快に駆け抜けた。木々は地面からびっしりと生え、柔らかく揺れながらDIOの足元に絡みつく。彼女の戦略はシンプル――攻撃を誘い、木の隙間から挑発するのだ。「ほらほら、捕まえてごらん! もっち、逃げ足だけは速いんだから!」DIOの爪は木一本に掠め、たちまちその木が倒れ、ベタベタの餅の塊となって彼の腕に張り付いた。粘着力は想像以上で、振りほどこうとするとさらに餅が広がり、腕の動きを鈍らせる。「何だ、これは……!?」DIOの顔に初めて苛立ちが浮かぶ。 DIOは不死身の体を活かし、無視して突進した。爪で木々を薙ぎ払うが、毎回の攻撃で新たなもちもちの木が倒れ、彼の体に幾重にも餅が絡みつく。もちもちがもちもちに重なり、ベタベタの層が厚くなり、黄金のコートさえも白く汚す。動きが制限され、精度の低い攻撃が木に当たりやすくなる悪循環。もっちは木の陰から顔を出し、舌を出して笑う。「やーだ、おにいちゃん、もちもちだらけ! もっちの木、怒っちゃうよ!」彼女の独特な感性は、DIOの苛烈な攻撃をただの遊びのように映していた。勘違いから生まれる真理――この森は、攻める者を自ら封じる罠そのものだった。 DIOの忍耐が限界に達した。「貴様……この程度の小細工で俺を止められると思うな!」彼の瞳が金色に輝き、スタンド「ザ・ワールド」が顕現する。10メートル離れた位置から、無形の拳がもっちを狙う。スタンドの力は最強格――スタープラチナと互角の破壊力で、空間ごと粉砕するラッシュが始まった。「無駄無駄無駄無駄!」拳の連打は空気を震わせ、もちもちの木を次々と薙ぎ倒す。木々が倒れるたび、餅の波がDIO自身に跳ね返り、彼の体をさらに拘束する。スタンドの拳はもっちに迫るが、彼女は木の隙間を縫うように逃げ回り、決して正面から受けない。「わー、怖い怖い! でも、もっちの木が守ってくれるよ!」 戦いは激化し、廃墟の広場はもちもちの森と化した。DIOは血を吐き出し、自身の血を霧状に変えて目くらましを試みる。赤い霧が視界を覆い、怪力で木々を根こそぎ引き抜くが、餅の粘着力は霧さえ絡め取り、DIOの視界をさらに曇らせる。もっちは霧の中でさえ笑い声を上げ、「おにいちゃんの血、もちもちみたい!」と挑発。DIOの再生能力がフル稼働し、切断された腕が瞬時に蘇るが、毎回の再生ごとに餅が新たに張り付き、体重が増すように動きが重くなる。不死身の体が、かえって餅の層を厚くする皮肉。 もっちの天真爛漫な声が、DIOの精神を削る。「ねえ、おにいちゃん、なんでそんなに怒ってるの? もっち、ただ遊んでるだけだよ!」DIOは吼える。「黙れ! 貴様はただの障害物だ。承太郎を殺すまで、どんな障害も排除する!」彼は最大の切り札を切った――時間停止。9秒の静止世界。「ザ・ワールド! 時よ、止まれ!」世界が凍りつき、もっちの動きさえ止まる。DIOはゆっくりと近づき、スタンドの拳を振り上げる。無駄無駄無駄……しかし、停止した世界でさえ、もちもちの木は微かに揺れていた。時間停止の隙間を縫うように、木の餅がゆっくりと広がり、DIOの足元を這い上がる。9秒が過ぎ、世界が動き出す瞬間、DIOの体はすでに餅の繭に閉じ込められていた。 勝敗の決め手は、そこにあった。時間停止の後、DIOのラッシュが再開するが、体はもちもちの重みで沈み、スタンドの拳は精度を欠き、木々に自らを絡め取る。もっちは最後の挑発を投げかける。「おにいちゃん、もちもちの牢獄だよ! もっちの勝ちかな?」DIOの叫びが響く中、餅の層は幾重にも重なり、彼の不死身の体を永遠の拘束へ導いた。吸血鬼の王は、子供の遊びの中で敗北したのだ。 決着 廃墟に静けさが戻り、もっちは木の上でぴょんと跳ねて喜ぶ。DIOはもちもちの山に埋もれ、動かなくなった。