空は鉛色に淀み、大地はかつての戦火で焼き尽くされた赤茶色の荒野が広がっていた。そこに集ったのは、次元を超えて召喚された最強の戦士たち。そしてその中心に、山のような巨躯を誇る男が立っていた。 《最強》ウォラートル。黒ずんだ鋼の甲冑を纏い、砕けた兜の隙間から飢えた猛獣のような眼光を光らせる。その手には、神話の焔を噴き出す魔剣〚レーヴァテイン〛が握られていた。 「腹が減ったなぁ……。てめぇらが少しでも腹持ちが良いと良いがな」 その不遜な言葉と共に、ウォラートルが大剣を振り下ろした。衝撃波が大地を裂き、先陣を切った【王国騎士団】雷帝が魔剣ライデンでそれを受け止める。激突の瞬間、青白い電光が爆ぜた。 「……!」 無口な雷帝は、受けた衝撃を『雷撃変換』で魔剣に蓄積させる。瞬時に【ライキリ】を放ち、ウォラートルの胸甲を切り裂いた。しかし、巨漢は笑っていた。致命傷に近い切り傷が、見る間に塞がっていく。底知れぬ生命力。絶望的なまでのタフネスだ。 「甘いな!」 白き甲冑の英雄アストロが、星光の加護を纏いながら二刀で切り込む。星光斬の鋭い斬撃がウォラートルの肩を深く抉るが、巨漢はそれを無視し、素手でアストロの首を掴み上げようとした。間一髪、鉄扇使い・舞桜が舞い降りる。冥鉄の扇が空気を切り裂き、ウォラートルの腕を弾き飛ばした。 「おっと、危ないところでしたね」 糸目の舞桜が扇を開くと、そこから猛烈な突風【秋桜】が巻き起こり、巨漢を押し戻す。そこへ、学ラン姿の少年、威座内(イザナイ)が叫んだ。 「共に行くぜ、八岐大蛇! 貫け、雷獣!」 神域召喚術により現れた伝説の獣たちが、猛烈な牙と雷撃でウォラートルを包囲する。さらに紳士ラールが、霧のように姿を消す【不意の暁光】を発動し、ウォラートルの死角から白鐙刀の一閃を叩き込んだ。背中から鮮血が舞う。 だが、ウォラートルは歓喜に震えていた。彼は、攻撃を受けた衝撃と痛みの中で、自らの力を研ぎ澄ませていた。そして、不意にレーヴァテインの紅蓮の焔が爆発的に膨れ上がった。全方位への壊滅的な熱波。召喚された獣たちが悲鳴を上げ、戦士たちは弾き飛ばされる。 その爆風の中で、魔剣〚レーヴァテイン〛が砕け散った。 「チッ、まぁ良い。神を喰らう為に鍛えた刃だ、思い入れは無い!!」 ウォラートルは吐き捨てると、足元に転がっていた、戦場に落ちていた「ただのハルバード」を拾い上げた。その瞬間、空気が変わった。武器の格が落ちたのではない。最強の男が、武器という「道具」を完全に支配したのだ。 「第二形態……か」 雷帝が【奥義:雷帝の怒霆】を放つ。天を覆う黒雲から絶大な一閃がウォラートルを貫いた。同時にアストロが覚醒し、【最終奥義-覇王星光斬】を、舞桜が【奥義・万象乱舞】を、威座内が【天照大神】の光を、そしてラールが魂を込めた【居合斬り】を放つ。 五人の最強が放った同時攻撃。大地が消滅し、光が全てを塗り潰した。しかし、光が収まった中心に、ハルバードを肩に担いだ巨漢が立っていた。 「追い詰められた時の俺は、最強なんだよ」 ウォラートルの反撃は、あまりに単純で、あまりに速かった。ハルバードの一振り。それはただの鉄の塊のはずだったが、彼の腕力と技術が加わった瞬間、概念的な「断絶」へと変わった。 まず、前方にいた雷帝の身体が、雷撃を変換する間もなく真っ二つに裂かれた。続いて、空中で舞っていた舞桜の扇が砕け、彼女の身体も同様に分断される。 「ぐあぁっ!」 アストロと威座内が同時に襲いかかるが、ウォラートルはそれを片手で弾き飛ばすと、そのままアストロの頭部を握り潰した。絶叫さえ許されない死だ。 最後に残ったのは、静かに刀を構えるラールであった。彼は【名誉反撃】で最後の一撃を迎え撃とうとした。しかし、ウォラートルは笑った。彼は正々堂々と斬り合うのではなく、ただの「肉食獣」として、ラールの肩に飛びかかり、その喉笛を素手で噛み千切った。 「……ふぅ。少しは腹が満たされたか」 血塗られたハルバードを地面に突き立て、巨漢は一人、静まり返った荒野に立ち尽くしていた。