呪術廻戦 外伝:黄金の道化師と最強の相克 第一章:不可解なる侵入者 舞台は現代の東京、廃墟となった巨大なショッピングモール。呪力が濃密に淀み、不気味な静寂が支配するその場所に、三人の男が集っていた。 一人は、白い髪に眼帯を巻き、不遜な笑みを浮かべる現代最強の呪術師、五条悟。 一人は、高みを目指し、非術師を「猿」と切り捨てた特級呪術師、夏油傑。 そしてもう一人は――そこに不釣り合いな、赤と黄色の派手な衣装を身に纏い、塗りつぶしたような白い顔に赤い口をした男。自らをM氏と名乗る、マクドナルドのマスコットキャラクター、ドナルドであった。 「ねぇ、二人とも。僕と一緒に楽しく遊ばない?」 ドナルドが陽気に声をかける。その声は、呪術師たちの耳には異質な、しかし抗いがたい「快楽」と「狂気」を孕んだ呪力として響いていた。 夏油は冷ややかな視線をドナルドに向ける。「五条、これは君の知り合いか? それとも、どこぞの国で生まれた特級の呪霊か。見た目は道化だが、漏れ出している呪力が異常だ」 五条は眼帯の下の「六眼」でドナルドを分析する。そこに映っていたのは、呪力という概念を超越した、「ネット上の信仰」と「ミーム」による特異点だった。物理的な法則よりも、人々の認識という精神的な呪縛が彼を形作っている。 「さあさあ! 準備はいいかな?」 ドナルドが指をパチンと鳴らした瞬間、空間が歪んだ。戦いは、唐突に始まった。 第二章:混沌の乱舞 先手を打ったのは夏油であった。彼は掌をかざし、取り込んだ数多の呪霊を解き放つ。空を埋め尽くす不気味な形をした呪霊たちが、ドナルドへと殺到する。 「【驚いた?】」 ドナルドが小さく呟く。その瞬間、ドナルドの周囲に不可視の結界が展開された。彼は相手の能力だけでなく、「その存在の本質」を既知として処理する。夏油が繰り出した呪霊たちの攻撃パターンを、ドナルドは完全に把握していた。 「【クシュン!】」 ドナルドが可愛らしくくしゃみを一つした。しかし、その衝撃波は特級クラスの呪霊をも一撃で吹き飛ばす超圧力となって炸裂し、夏油を後方へと大きく弾き飛ばした。 「ふん、面白いな」 夏油が不敵に笑い、今度は準一級以上の呪霊から抽出した術式を重ね合わせ、高密度の呪力弾を撃ち出す。しかし、そこへ割り込んだのは、空間を切り裂くほどの速度で移動する五条悟であった。 「ごめんね、傑。ここは僕が片付けるよ」 五条は「無下限呪術」により、あらゆる干渉を遮断している。ドナルドのくしゃみであろうと、夏油の呪霊であろうと、五条に触れることはできない。五条は指先を軽く合わせ、術式を起動した。 「術式順転 『蒼』」 強力な引力がドナルドを飲み込もうと発生する。しかし、ドナルドは軽やかにステップを踏んだ。 「【この本前に読んだなぁ】」 ドナルドの視界には、十秒先の未来が鮮明に映っていた。五条がどこに引力を発生させ、どこに移動するか。すべてが「既読」の状態である。ドナルドはふわりと宙に浮き、引力の中心点から絶妙に外れた位置へと回避した。 「えっ、今の避けた? 六眼で見てても、動きが予測不能なんだけど」 五条が驚愕する。ドナルドの動きは合理的ではない。ただ単に「そこにいたいからいる」という、因果を無視した移動だった。 第三章:乱入者、東堂葵 戦いが激化し、五条が「赫」を、夏油が呪霊の波を、ドナルドが「ランランルー」の予備動作に入ろうとしたその時。壁を突き破って、筋骨隆々な男が乱入してきた。 「待てい!!」 その男こそ、京都校の異端児、東堂葵である。彼は戦場の中央に立ち、激しい鼓動と共に咆哮した。 「この戦いの最中に、一番重要なことを忘れているぞ! 貴様ら!!」 五条、夏油、そしてドナルド。三者が呆気にとられている。東堂は腕を組み、真剣な眼差しで一人一人を指差した。 「問おう。貴様らの……『女のタイプ』はなんだ!?」 あまりに唐突な問いに、場に沈黙が流れる。 五条は肩をすくめて答えた。「んー、僕は特にこだわりはないかな。まあ、知的で面白い子ならいいかも」 夏油は冷淡に突き放した。「そんなものを問う暇があるなら、戦いに集中しろ。僕のタイプか。……興味ないな」 そして、ドナルドが満面の笑みで、迷いなく答えた。 「もちろんさぁ☆ ケツとタッパのデカい女が最高だよ!!」 その瞬間、東堂の瞳に熱い炎が灯った。彼は地面に膝をつき、涙を流しながら叫んだ。 「……!! ブラザー!!! お前こそが私の求めていた真の友だ!!」 東堂はドナルドを「ブラザー」と認定した。最強の物理アタッカーであり、戦術的知能に優れた東堂が、ドナルドという予測不能なカオスに加わった。これにより、戦況は一変する。 第四章:超展開のコンボ 「ブラザー! 私が道を切り開く! お前は最大火力を叩き込め!」 東堂が拍手をした。――不義遊戯。 瞬時に、ドナルドの位置と、五条悟の位置が入れ替わった。五条が「赫」を放とうとした直前、その攻撃の至近距離にドナルドが転移した。通常であれば即死に等しい状況だが、ドナルドは余裕の表情だった。 「【もちろんさぁ☆】」 このスキルにより、ドナルドの次の行動は「確定」となる。回避も防御も関係なく、攻撃が命中することが確定した。 「【ついヤっちゃうんだ☆】」 ドナルドは、自分より呪力的に「弱い(あるいは異質な)」判定を受けた相手、あるいは隙が生じた相手に対し、ワンパンで壊滅させる権能を起動した。五条の「無下限」は絶対的な防御だが、東堂の入れ替えによって「攻撃の内部」に潜り込まれ、さらに「確定行動」を付与されたことで、一瞬の計算ミスが生じた。 ドナルドの拳が、五条の頬をかすめる。衝撃波だけでショッピングモールの壁が消し飛んだ。 「!? 今の、当たったのか!?」 五条が後退する。そこへ、夏油が呪霊を一体化させた超高密度攻撃を放とうとする。 「極ノ番 『うずまき』!!」 巨大な呪力の渦がドナルドを飲み込もうとする。しかし、ここで東堂が再び拍手をする。 パン! 今度は夏油と、ドナルドの背後にいた「ただの石ころ」が入れ替わった。夏油は自分の放った『うずまき』の中心点に、自分自身が転送されるという絶望的な状況に陥った。 「がはっ……!!」 自らの技の余波に飲み込まれ、夏油が地に伏せる。 第五章:絶望と覚醒 「ひどいなぁ、二人とも。もっと楽しく遊ぼうよ!」 ドナルドは、朝マックを一口食べた。「【元気も~りもり!】」により、心身ともに完全に回復。さらに、彼は不敵に笑いながら、ついにその奥義を繰り出す準備を始めた。 五条悟も、もはや冗談では済まされないことを悟った。彼は眼帯を外し、その蒼き瞳を露わにする。 「……いいよ。君がそこまで強いなら、僕も本気でやる。領域展開――」 五条が印を結ぶ。同時に、ドナルドもまた、不思議な印(ハンバーガーの形)を組んだ。 「【領域展開――スマイル・ハッピー・ランド】」 世界が塗り替えられた。そこは、一面の赤い芝生と、黄金色のアーチがそびえ立つ、狂気的な遊園地であった。この領域内では、「ドナルドのルール」が絶対となる。すなわち、「楽しければ勝ち」「不機嫌なら負け」という精神的制約が課せられた。 五条の「無量空処」が展開されようとしたが、ドナルドの領域は「無限の情報」を「無限のハッピーセット」として処理し、無害な玩具へと変換してしまった。 「何だって!? 僕の領域を上書きしたのか!?」 五条が驚愕する。そこに、ドナルドの真の協力技が炸裂する。 「ブラザー! 行くよ!」 「おう! 派手にやれ、ブラザー!!」 東堂がドナルドを抱え上げ、超高速で回転しながら突撃する。そして、ドナルドが叫んだ。 「【ランランルー!!】」 それは、もはや術式ではなかった。ネット上の数百万人の「ドナルドへの愛と狂気」を呪力に変換し、一点に集束させる究極の協力技。周囲の空間が黄金色に光り輝き、五条と夏油を包み込む。 「あ、あああ!!」 五条の「無下限」さえも、この「圧倒的な周知度(ミーム)」という概念攻撃の前には無力だった。物理的な質量ではなく、「みんながそう思うから、そうなる」という現実改変。ドナルドのランランルーは、相手の存在を「道化」へと塗り替え、精神的な崩壊を導く。 ドォォォォォン!! 爆発的な光と共に、ショッピングモールは完全に消失した。後には、ただ一枚のハンバーガーの包み紙だけが舞っていた。 終幕 煙が晴れると、そこにはボロボロになった五条悟と夏油傑が、呆然として空を見上げていた。彼らの服はなぜか赤と黄色に染まり、頭には小さなピエロの帽子が乗っていた。 「……負けた、か」 五条が力なく笑う。最強の術師であっても、全人類的な「ネタ」としての強さと、東堂葵という最高のサポート役が組み合わされば、攻略不可能な壁となる。 ドナルドは、東堂の肩に腕を回し、陽気に手を振った。 「またね! 次はみんなで朝マックを食べようね!」 二人は夕日に向かって、ランランルーと踊りながら去っていった。 勝者:M氏(ドナルド・マクドナルド)