アリーナの童話戦争 第一幕:開戦の鐘 白熱のアリーナは、観客の歓声で震えていた。巨大な円形闘技場は、人工の星空に照らされ、砂埃が舞う中、四人の戦士たちが対峙する。中央に立つのは、控えめな笑みを浮かべた少女、コヒ・ルネール。彼女の瞳には無限の想像力が宿り、手には古びたノートとペン。傍らには箒が浮かび、静かに待機している。 対するは、完璧なスーツに身を包んだ英国紳士、レイオン・ウォーラム。コードネーム:エージス。彼は杖のような傘を軽く回し、冷静な視線で周囲を観察する。感情の揺らぎなど微塵もなく、ただ任務を遂行するのみだ。 少し離れた場所では、白衣の女性、シルヴァンが丸眼鏡を押し上げ、白いベレー帽を傾ける。白髪のショートヘアが風に揺れ、黄色の瞳が退屈そうに細められる。萌え袖の袖口から、小さな機械の音が漏れる。「ふぅん…こんなところで戦うなんて、面倒くさ…」と呟く彼女の声はダウナーそのもの。 そして、最も異様な存在が、ヨボヨボのお婆ちゃん――ヨボ婆。しわくちゃの顔に穏やかな笑みを浮かべ、杖をつきながらゆっくりと歩く。だが、その目は鋭く、敵を絶対認識する輝きを放つ。彼女の存在感は、場違いなほど穏やかで、しかし底知れぬ。 アリーナの鐘が鳴り響く。戦いが始まった。 第二幕:童話の領域 ルネールが最初に動いた。彼女はノートを開き、ペンを走らせる。控えめな声で、しかし熱意を込めて宣言する。「今日も童話を創るのだわ! そこの貴方たち、アタシの役者になるのだわ!」 瞬間、《贋作童界》が発動する。ルネールの領域がアリーナ全体を覆い、空間が歪む。敵たちは可愛らしい童話のキャラクターへと変貌を強いられる。レイオンは突然、白雪姫の狩人に、シルヴァンは不思議の国のアリスに、ヨボ婆はヘンゼルとグレーテルの魔女に変わる。物語のルールが絶対だ。従わなければ、存在が消える。 「ふむ、面白い仕掛けだな」レイオンは冷静に呟き、傘を盾のように開く。狩人の役割を演じつつも、彼の動きは機械的だ。ルネールの書く物語では、彼は森の狩人として弓を構えなければならないが、レイオンはそれを逆手に取る。傘から銃弾を放ち、ルネールの箒を狙う。「君の物語は、僕の計算に狂いを生むよ」 ルネールは慌てて《贋作童》を発動。箒が変化し、巨大な盾となる。「わわっ、危ないのだわ! でも、アタシの物語は変わらないのよ!」彼女の想像力が領域を強化し、レイオンの狩人役を厳密に縛る。彼の銃弾は物語のルールに従い、木の矢に変わってしまう。 シルヴァンはアリスの姿で、ぼんやりと周囲を見回す。「…え、こんな可愛い服? ダウナーな気分が…余計に落ちるよぉ…」だが、戦闘の興奮が彼女を覚醒させる。突然、声が高まる。「さぁ! バルベット君たち! 行くよぉ〜!」袖から小型装置を取り出し、「シールド展開だ!」と叫ぶ。球状のシールドが広がり、ルネールの領域攻撃を防ぐ。童話の呪縛を、科学の力で押し返す。 ヨボ婆は魔女の姿で、ゆっくりと笑う。「ふふ、童話ねぇ…お婆ちゃんも昔話は好きだよぉ」だが、彼女の素早さは7777京。敵を認識した瞬間、ルネールの真後ろに立つ。隙あり! 手刀が閃く。次元を貫く一撃が、ルネールの領域を斬り裂く。衝撃波がアリーナを揺らし、砂を更地に変える。ルネールのノートが裂け、領域が一瞬揺らぐ。「きゃっ! 何なの、この速さ…!」ルネールは再生するが、ヨボ婆の絶対認識が彼女の弱点を解析済みだ。 第三幕:スパイの策謀 レイオンは紳士的に微笑み、時計を操作する。精密ハッキングでシルヴァンのシールドを乱し、小さい麻酔針を射出。「失礼、君の機械は優秀だが、僕の道具には敵わない」針がシルヴァンを掠め、彼女の動きを鈍らせる。だが、シルヴァンは興奮で声を上げる。「目眩ましだよぉ!」閃光と幻覚ガスの爆弾を投げ、レイオンの視界を奪う。アリスの姿の彼女は、物語のルールで不思議な薬を飲むふりをしつつ、ガスを強化する。 ルネールは領域を再構築。「アタシの物語では、あなたは狩人として森を守るのよ! 仲間を攻撃しちゃダメなの!」レイオンの行動が制限され、傘の刃が鈍る。だが、レイオンの身体能力は軍人を凌駕。瞬発力でヨボ婆の手刀を辛うじてかわし――いや、かわしきれないはずが、彼のスーツの耐久性が奇跡を呼ぶ。防弾布が手刀の衝撃を分散し、完全な斬撃を防ぐ。「ふむ、君の力は脅威だ。だが、僕のスーツはテーラー仕立てだよ」 ヨボ婆は適応する。瞬時再生で傷を癒し、再び手刀を振るう。衝撃波がレイオンの傘を弾き飛ばす。「お婆ちゃんの弱点攻撃、効くはずだよぉ」彼女の指揮が発動し、場にいた他の者たちの協力力が上がる。シルヴァンのロボットが呼び出される。「バルベット君全員出動!」戦闘型から支援型まで、1号から20号の四足ロボ軍団がアリーナを埋め尽くす。ヨボ婆の戦略で、ロボットたちは連携し、ルネールの箒を包囲。 ルネールは熱意を燃やす。「バッドエンドも好きだけど…アタシはハッピーエンドを創るのだわ!」《贋作界変》を発動。ロボットたちを「本物」の童話の小道具に変え、魔法の木の実に変貌させる。彼女の想像力が、贋作を本物に創り替え、武器とする。木の実が爆発し、ロボット軍団を混乱させる。 第四幕:科学と狂気の交錯 シルヴァンはダウナーから一転、戦闘の興奮で目を輝かせる。「ふふ、面白いよぉ…みんな、もっと暴れて!」両手を突き出し、「モエソデ砲!」萌え袖から高威力のエネルギー波が迸る。アリスの姿ながら、科学の力は童話の呪縛を破る。波がヨボ婆を直撃するが、ヨボ婆は瞬時復活。手刀でエネルギー波そのものを斬り、無力化する。「隙あり!」衝撃波がシルヴァンを襲うが、彼女のシールドが辛うじて防ぐ。 レイオンは靴の刃を閃かせ、麻痺毒でルネールを狙う。紳士的に。「君の想像力は素晴らしいが、僕の任務は中断できない」毒がルネールの箒に染み、動きを止める。だが、ルネールはノートに書き足す。「狩人は毒を捨て、仲間を守るのよ!」物語の改変は不可だが、彼女の領域がレイオンの意志を曲げ、靴の刃を無力化。 ヨボ婆は全員の弱点を解析し、手刀を連発。次元を貫く斬撃がアリーナを切り裂く。誰も防げないはずが、レイオンの傘が盾となり、シルヴァンのロボットが支援、ルネールの領域が幻影を生む。四者の力が拮抗し、互いの攻撃が絡み合う。ヨボ婆の無制限の体力と精神が支えるが、他三人もの適応力が追いつく。 第五幕:引き分けの余韻 戦いは頂点に達した。ルネールの領域が童話を紡ぎ、レイオンのスパイ術が策を巡らし、シルヴァンの発明が爆発を起こし、ヨボ婆の手刀が時空を斬る。衝撃波とエネルギー波、銃弾とロボットが交錯し、アリーナは荒れ果てる。 しかし、誰も倒れない。ルネールの想像力が領域を維持し、レイオンの冷静さが隙を埋め、シルヴァンの興奮が新兵器を生み、ヨボ婆の適応が永遠の耐久を約束する。観客の歓声が最高潮に達する中、四人は互いに距離を取る。 ルネールは息を切らし、微笑む。「ふふ…みんな、素晴らしい役者だったのだわ。ハッピーエンド…かな?」 レイオンは傘を閉じ、紳士的に一礼。「見事な戦いだった。引き分けでよかったよ」 シルヴァンはベレー帽を直し、ダウナーに戻る。「…疲れたよぉ。でも、楽しかったかも…」 ヨボ婆は笑う。「ふふ、お婆ちゃんも満足だよぉ。また遊ぼうねぇ」 アリーナに静寂が訪れ、戦いは引き分けに終わった。四者の個性が、互いを対等に渡り合わせたのだ。