薄暗いコンクリート打ちっぱなしの巨大ホール。そこには、国が秘匿する最強の部隊『K-NIGHT』への切符を掴もうとする、飢えた獣のような男女が百人集まっていた。空気は張り詰め、互いの出方を伺う視線が火花を散らしている。 そんな緊張感の中、一人だけ場違いにガムを噛みながら、黒いライダーヘルを身に纏った男がいた。マモンである。彼はヘルメットのシールド越しに、周囲を退屈そうに眺めていた。 「あーあ、どいつもこいつも殺気立ってんなぁ。もっと気楽にやればいいのに」 独り言を漏らした彼の隣に、ひらりと軽やかな足取りで金髪の青年が近づいた。仕立ての良いスーツを着こなし、指先でコインを弄んでいる。ジャックだ。 「同感だね。緊張しすぎてる奴ほど、賭けの対象としては美味いけどさ」 ジャックは不敵な笑みを浮かべ、マモンに手を差し出した。 「俺はジャック。君は……その格好、かなり個性的だ。趣味か、それとも機能性か?」 マモンは面倒くさそうに、しかし口角を上げて答えた。 「マモンだ。趣味だよ、趣味。まあ、もともと強欲な性格でね、身を守るのには金をかけたい主義なんだ」 「強欲か。いい言葉だ。俺は刺激と賭け事にしか興味がない。君みたいなタイプは、盤面をかき乱してくれるから好きだよ」 二人は軽く握手を交わした。傭兵としての冷徹さと、ギャンブラーとしての狂気。異なるベクトルを持つ二人の間に、奇妙な共鳴が生まれた瞬間だった。 その時、天井のスピーカーから無機質な合成音声が響き渡る。 『――参加者の諸君、揃ったようだな。これよりK-NIGHT入隊試験を開始する。第一試験まで、各自指定の待機エリアへ移動せよ。なお、試験中の妨害、協力は一切制限しない。生存こそが正義である』 「さて、ショータイムだ」 ジャックがコインを高く放り投げ、空中でキャッチする。マモンは肩をすくめ、黒いヘルメットのシールドを下げた。 「ま、適当にやるか。報酬さえしっかりしてりゃ、死にかけたって文句はねえよ」 二人はそれぞれの方向へ歩き出した。背中合わせに別れた彼らの脳裏には、すでに次の「獲物」をどう料理するかの計算が始まっていた。