天空に浮かぶ黄金の闘技場『アステリア』。そこは全次元の頂点を決める聖地であり、今、王位継承権を賭けた究極の乱戦が幕を開けようとしていた。 観客席を埋め尽くすのは、数多の星系から集まった生命体たちだ。地鳴りのような歓声が渦巻き、光の粒子が舞う中、四人の挑戦者が舞台の中央へと集結した。 「うわぁ!すごい人!ねえねえ、みんな見て見て!私の発明品、今日も絶好調だよ!」 快活に笑いながら飛び跳ねる美少女、ララ。彩南学園の制服を身に纏い、その背中には奇妙な機械がいくつも装着されている。 「ひゃっひゃっひゃ!王冠を被っているから私は王様!ここは私のステージ、最高に愉快な地獄のショータイムだ!」 極彩色の衣装を身に纏い、不気味な笑みを浮かべる道化師、クラウン・クラウン。彼は空中でくるくると回転しながら、手にしたナイフを弄んでいる。 「ふふん、ボクはただ自由になりたいだけなんだけどね。まあ、適当に楽しくやろうよ」 気だるげに、しかしどこか底知れない自信を漂わせる少女、グリン・グリソ。彼女の周囲には色とりどりのガラス片が、生き物のようにふわふわと浮遊している。 そして、最後の一人。そこに立っていたのは、もはや個体という概念を超越した存在であった。 「……」 名もなき神、あるいは概念そのもの。『宇宙を作る者』。その佇まいは静寂でありながら、周囲の空間を歪ませるほどの圧倒的な圧を放っていた。 「それでは!全次元王位決定戦、開始!!」 審判の合図と共に、戦火が激しく舞った。 「まずはこれだ!『らくらくランナーくん』起動!」 ララが足元のブースターを点火させ、目にも止まらぬ速さで突撃する。同時に『ばりばりランチャーくん』から高エネルギー弾を連射し、戦場を光の弾丸で埋め尽くした。 「おっとっと!危ないねぇ!」 クラウン・クラウンがひらりと身をかわし、ドレープを翻して瞬間移動を繰り返す。彼はララの頭上にいつの間にかリンゴを載せ、ナイフを投げつけたが――案の定、外れた。しかし、その外れたナイフは弧を描き、背後から近づいていたグリンを狙う。 「あはは、危ないなぁ。じゃあ、お返しに『ガラパレード』!」 グリンが指を弾くと、数万枚のガラス片が弾丸となって炸裂した。ララは『ぴょんぴょんワープくん』で回避し、クラウンは火吹きショーで炎を巻き起こしてガラス片を熱で歪ませる。 混沌とする三人の戦いを、宇宙を作る者はただ黙って見つめていた。彼にとって、この程度の攻撃は風に舞う塵に等しい。 「あれ? あの人、全然動かないよ? もしかして怖がってるのかな!」 ララが天真爛漫に笑い、最大出力の『ぶんぶんバットくん』を振りかぶる。噴射加速と共に放たれた一撃は、空間を切り裂くほどの衝撃波を伴って宇宙を作る者の正面に叩き込まれた。 ドゴォォォン!! 凄まじい爆鳴が響き渡り、砂塵が舞う。しかし、煙が晴れたとき、観客席からは絶叫が上がった。 宇宙を作る者は、指一本動かしていなかった。防御力という概念すら必要とせず、ただそこに在るだけで、ララの全力の一撃は完全に無効化されていたのだ。 「……ふーん。あいつ、ちょっとだけ『ズルい』感じがするね」 グリンが目を細める。彼女は自身のスキル『それちょうだい!』を発動させ、宇宙を作る者の「不老不死」の特性を模倣しようとした。しかし、宇宙を作る者の権能はあまりに巨大すぎ、模倣した瞬間にグリンの精神に過負荷がかかる。 「がっ……! 何これ、情報量が多すぎる……っ!」 「ひゃっひゃっひゃ! 隙ありだねぇ!」 クラウン・クラウンがグリンの背後に現れ、口を裂くほどの笑顔でナイフを突き立てようとしたその時、宇宙を作る者が初めて口を開いた。 「……小さすぎる」 その一言と共に、闘技場の空の色が変わった。青から紫へ、そして完全な虚無の黒へ。宇宙を作る者が指先を軽く振ると、空から巨大なブラックホールが顕現し、すべてを飲み込み始めた。 「ええっ!? 何これ! 逃げなきゃ!」 ララがパニックになりながらワープを繰り返すが、ブラックホールの引力は次元の壁さえも無視して彼女を惹きつける。 「あはは……やっぱりボクの勝ちじゃないみたいだね」 グリンは諦めたように笑い、最後の一手『#そんなのズルい!!』を発動した。彼女は宇宙を作る者の最強能力である「不老不死」を強制的に封印しようと試みた。 しかし。宇宙を作る者のスキルには、「全ての宇宙を破壊しないと倒せない」という絶対的な前提条件があった。封印などという矮小な概念は、彼が創り出した宇宙の理(ことわり)の一部に過ぎない。 「宇宙を創り、宇宙を壊す。それが私の呼吸だ」 宇宙を作る者が掌を広げると、闘技場を包んでいた偽りの空がガラスのように砕け散った。次いで、超高密度の隕石群が、光速を超えて三人の挑戦者に降り注ぐ。 「きゃあああ!」 「おっと、これは笑えないね……」 「あはは……おやすみなさーい」 閃光が走り、爆発がすべてを塗りつぶした。生き残ったのは、ただ一人。静寂の中で佇む宇宙を作る者だけだった。 勝敗を決めたのは、圧倒的な「次元の差」であった。ララの科学力も、クラウンのトリッキーな魔術も、グリンの模倣能力も、すべては「宇宙という器」の中で機能する力に過ぎない。器そのものを創り、壊す権能を持つ者には、いかなる手段も通用しなかったのである。 静まり返った会場に、審判の声が響く。 「勝者、宇宙を作る者!! 新しき王の誕生である!!」 【称号】『新たな王、万歳!』 新国王となった『宇宙を作る者』は、権力への欲も、支配への快楽も持たなかった。彼はただ、この世に足りないと感じた「静寂」と「完璧な調和」を追求した。 彼の治世は、文字通り「永遠」に等しい時間続いた。彼は壊れた宇宙を修復し、新たな生命を蒔き、飽きればすべてを無に還しては再び創り直すという、究極のサイクルを繰り返した。 それは、生者から見れば冷酷な「悪政」に見えたかもしれない。しかし、宇宙の視点から見れば、これほどまでに完璧に管理され、調和した「善政」はなかった。争いも飢えもなく、ただ神の気まぐれによる再構築だけが繰り返される世界。 数億光年という時間が流れ、あらゆる文明が忘れ去られた後も、彼は玉座に座り、今日もまた新しい宇宙の種を手のひらで転がしている。