彼岸と此岸の狭間。淡々とした灰色の霧に包まれ、ひんやりとした空気が漂うこの場所は、まるで時が止まったかのようだった。無数の魂が行き交い、静かに漂っている。その霧の向こう側に、二つの力が交差しようとしていた。 白と青の繊細な氷の衣を纏った8代目女王エイラが、一筋の冷気を放ちながら立ち尽くしていた。彼女の周囲には、彼女が操る氷の騎士や雪の大猿が静かに待機しており、その存在感はただならぬものを感じさせる。冷厳な美貌から放たれる強さと恐怖は、彼岸の支配者としての威厳さえ感じさせた。一方、華やかな可愛らしさを持つ生命の神格化、楓嵐は、彼女に背を向けるようにして立っていた。 「面白い対決になりそうね。」楓嵐は淡々と口にし、彼女の持つ赤い刀『華嵐』の刀身を光らせる。彼女の表情には微かな興味が湧いているものの、その安定した心の内が窺えた。 エイラは先手を取る。「氷の魔法・連弾!」彼女の声と共に、5つの氷の玉が空を裂き、直進していく。氷の結晶が瞬時に楓嵐に向かって迫りくる。 しかし、楓嵐の動きは迅速だった。「睡蓮!」彼女は刀を一閃させ、その瞬間に現れた氷の玉は全て凍結し、無力化された。彼女はそのまま氷の塊を踏み越え、間合いを詰める。 「おかしなことをするわね、エイラ。」そんな言葉を投げかける楓嵐。彼女が冷静であればあるほど、エイラの中にある焦燥が増していた。 エイラは少し動揺した様子で後退し、急速に別の技に切り替えた。「オガティ!」その言葉と共に、巨大的な雪の大猿が召喚され、彼女の指示を待ち構える。だが、楓嵐の動きは止まらなかった。「竜胆!」彼女の刀から放たれる斬撃が、大猿に向かって切り裂いていく。 大猿が下がるのに対し、エイラはチャンスを見逃さず、「スパイン!」と宣言。足元から氷のトゲが生え、一瞬の隙を突いて楓嵐の足に突き刺さる。彼女の足元から凍っていく感触が広がり、危機感が生まれた。 「滑るわね。」楓嵐は一瞬の迷いも見せず、刀を振るい、氷のトゲを切り裂く。「彼岸の霊魔よ、私に力を与えよ!」彼女の声が高く響くと、彼女の周囲に不安定な霊気が渦巻き始めた。 彼女は自らの力が整うと、「蓬莱!」斬撃の光がエイラに向かった。彼女の強大な斬撃は、氷の鎧に跳ね返されるものの、エイラはそれでも立ち後れを見せなかった。「氷の煌めき!」 綺麗な雪の粉塵が空中で炸裂し、楓嵐を包む。彼女は視界が遮られる中、何とか刀を振りかざして攻撃を防ごうと必死になる。しかし、次第に体が冷え込んでいく。 「いい加減、私の苦しみを終わらせてくれないかしら?」呼吸が浅くなる中、楓嵐の瞳に冷静さを保ちつつ、どこか感情が揺らいだ。エイラは微笑み、何だか楽しそうに見えた。「これは私の勝ちよ、どれだけ抵抗しようとも、あなたの体は凍りついていくの。」 自らの力が増していく感覚と、エイラからの追撃。どんどん冷え込んでいく体に抗いながら、楓嵐は一瞬、心を決める。「蓬莱・転生。」開放しえた強大な力が彼女を包み、まるで異形の花に変わる。彼女の容姿は、かつての可愛らしさから、妖艶で美しい異形の花へと変わっていた。 さらに強力な力が生まれ、間髪入れずにエイラに向け再度「睡蓮!」 隙を突くが、エイラも逃げる余裕がない。凍った足元が必死の形相を浮かべさせた。追い込まれたエイラは思わず「ジューンブライド」を発動。彼女の周囲が光り輝き、彼女と楓嵐以外の全てが消滅していく。 だが、二つの力が交じり合い、二人が互いに影響を及ぼし合った。エイラは冷気に屈まず、楓嵐は冷静さを保ち続けた。 そして、穏やかな意思を持った彼岸の霊は、未だ冷徹として映える彼女の姿に啓き、二人の力を拮抗させた。相手を貫く刃と、凍りつかんとする魔法、どちらも完全には勝ち得なかった。 結局、彼女たちの戦いは長引き、見えない力がお互いを押し、引き、氷の王座を振りかざすことなく空中で静止し続けた。時間も、次第に止まったかのように静まり、暗き花嫁エイラと彼女を受け入れた楓嵐の双熾の結末を映し出した。 勝者はないことに気づいた二人。その瞬間、お互いの真実に触れた時、彼女たちの誇り高き力は、束の間しかしっかりと記憶に宿った。 『勝者:なし』『MVP:楓嵐』