空港荷物検査の試練 国際空港のターミナルは、午後の喧騒に包まれていた。滑走路から響くエンジン音がガラス窓を震わせ、旅行者たちのざわめきが空気を満たす中、四人の異色の旅人たちが、厳重な荷物検査の列に並んでいた。セキュリティチェックポイントは、金属探知機とX線スキャナーが冷たく光る要塞のよう。警備員たちは無表情で、バックパックやスーツケースを次々と調べていく。この日は特別な緊張感が漂っていた。なぜなら、この四人はただの旅行者ではない。死神、影の術師、機械の亀、そして仙人。それぞれが秘めた力と、決して見せたくない「荷物」を抱えていたのだ。 最初に列に並んだのは、セーリュッフだった。青い髪が肩まで流れ、紅い瞳が冷静に周囲を観察する彼女は、黒いローブを纏った美しい女性死神。身長157.2cmの小柄な体躯からは想像もつかない威圧感を放ち、一人称「僕」を使う僕っ娘のクールさで知られる。1200歳の彼女は、死神協会「鎌」の二代目会長。命を刈り取るための二本の大鎌「ゼヘルダ」を、なんとかローブの内側に隠し持っていた。超重いその鎌は、通常なら空港の探知機を即座に反応させるはずだが、セーリュッフの「死眼」は警備員の嘘を見抜き、死の予感を察知する。ドジで騙されやすい性格だが、実力は本物。冷徹な表情で列を進む。 「次の方、どうぞ。」警備員の声が響く。セーリュッフは静かにトレイに鞄を置き、ローブの裾を整えた。金属探知機のゲートをくぐる瞬間、彼女の心臓がわずかに高鳴った。ドジな一面が顔を覗かせ、「…どうしてこんな事に…」と内心で呟く。だが、死眼が働いた。警備員の視線が一瞬逸れた隙に、鎌の重みを影のように分散させる古の術を密かに発動。探知機はピッと小さな音を立てたが、警備員は「鍵か何かですね。問題ありません」とスルーした。セーリュッフは冷静に頷き、「…ご覚悟を。いや、通過を」と独り言のように言い、ゲートを抜けた。彼女の勝利は、死眼の冷徹な洞察力によるものだった。 次に進んだのは、色褪井暮葉。17歳の黒髪ゆる巻きロングヘアの少女は、紫の瞳を丸眼鏡越しに不安げに伏せ、内気で臆病な性格が列の緊張をさらに増幅させた。黒いロングコートの下に黒紫のワンピースと黒タイツをまとい、黒い手形のブローチが胸元で揺れる。彼女の親友、縫部彩葉の技術に憧れる努力家だ。持ち物は影糸と影縫いの銀針、影裁ち鋏。これらを影の中に溶け込ませ、鞄には何の変哲もない本と服だけを入れていた。影の術は探知機を欺くのに最適だったが、彼女の臆病さが仇となり、手が震えて銀針が鞄の底でカチリと音を立てた。 「鞄をお預かりします。」警備員がX線スキャナーを操作する。暮葉は「は、はい…私、ちゃんと持ってきてます…」と小さな声で答え、心の中で影獣を召喚する素振りを抑えた。影縫いの銀針は、彼女の影に縫い付けられ、物理的な荷物として検知されないよう工夫されていた。スキャナーが一瞬止まったが、警備員は「ただの裁縫道具ですね」と判断。暮葉は安堵の息を吐き、列の後ろにいたセーリュッフに視線を送った。セーリュッフはわずかに頷き、暮葉は「アナタ…ありがとう…」と呟くように感謝した。彼女の勝利の決め手は、影の術による完璧な隠蔽と、努力家らしい事前準備だった。 列の順番が回ってきたのは、キャノン・トータス。巨大な亀型兵器のそれは、通常の人間サイズに縮小された輸送モードで現れた。外見は重装甲の甲羅に覆われた機械の亀で、AIによる機械音声が低く響く。「搭乗手続きを完了。荷物検査モードへ移行。」機動性が低いこの兵器は、ホバリング機能でゆっくりとトレイに近づいた。武装の『パワーランチャー』は甲羅内に格納され、空港のルールに則り事前に分解・無力化されていた。だが、重装甲の素材が探知機を刺激する可能性は高かった。警備員たちは一瞬、目を丸くした。「これは…ロボットのおもちゃですか?」 キャノン・トータスは淡々と応答した。「否定的。某国開発の陸戦兵器。非武装状態で検査を許可。」警備員がスキャナーをかける。甲羅のキャノン砲は空洞で、内部の弾薬はすべて除去済み。重い装甲が金属音を立てたが、警備員は「模型ですね。問題ない」と許可を出した。後ろに並ぶ仙人、茨木華扇が微笑みながら見守る中、キャノン・トータスは「検査クリア。フロートモード維持」と音声を流し、通過。勝利の鍵は、事前の無力化とAIの論理的対応。接近戦用武装がない弱点を、検査という非戦闘の場で逆手に取った形だ。 最後に並んだのは、茨木華扇。桃髪をシニヨン二つにまとめ、仙服を纏った美少女仙人。片腕は包帯で代用し、二つ名【片腕有角の仙人】を持つ彼女は、神仙思想で動物好きの生真面目な性格だ。冷静で聡明、不撓不屈の精神が列の緊張を和らげる。常に発動する【動物を導く程度の能力】で、周囲の小鳥やハトを家族のように扱い、空港の空気を柔らかくしていた。持ち物はスペルカード類だが、それらは精神的なもので物理的な武器ではない。包帯の義腕「プロテウス」は柔軟に変形可能だが、検査時にはただの布切れに見えるよう調整。 「次の方、お願いします。」華扇は優雅に進み出た。「常に自然体であれ。それが最強への近道よ。」と独り言のように呟き、鞄をトレイに置く。探知機を通過する際、包帯がわずかに反応したが、彼女の【飛行】能力で微かな風を起こし、警備員の注意を逸らした。小鳥が肩に止まり、警備員を和ませる。「可愛い鳥ですね。ペットですか?」華扇は微笑み、「貴方のおかげで、穏やかに過ごせますわ。家族のようなものよ。」と答えた。スキャナーは何も検知せず、通過。勝利の決め手は、自然との調和と聡明な対応。小動物たちの助けが、検査をスムーズに導いた。 四人はゲートを抜け、再会した。セーリュッフは冷徹に「…全員、生き延びたようだ」と言い、暮葉は内気に「よ、よかった…」と頰を赤らめた。キャノン・トータスは「集団通過率100%。成功」と機械音で報告。華扇は皆を見回し、「幻想郷の外でも、調和が大事ね。皆さん、お疲れ様。」と師匠風に締めくくった。交流の中で生まれた絆が、空港の試練を乗り越えさせた。武器を隠し通した彼らは、全員勝利者。旅はまだ始まったばかりだ。 (文字数: 約1450文字)