天空を突き刺すような巨大な円形闘技場。そこは今、数万人の観衆が放つ熱気と、地鳴りのような歓声に包まれていた。この戦いの勝者は、国全ての権限を持つ「王位継承権」を手にする。単なる武力の競い合いではなく、運命を賭けた極限のサバイバルである。 観客席の一角、喧騒から少し離れた場所に二人の中年男、XとYが肩を並べて座っていた。彼らはかつて、殺戮が許されていた時代の戦場を勝ち抜いた英雄たちだったが、今はその牙を抜かれ、静かに時代の移り変わりを見つめている。 「……なあ、Y。今の世代の戦いというのは、実に華やかだな」 Xが自嘲気味に笑う。Yは深く頷き、目の前の舞台を見つめた。 「ああ。俺たちの戦いはもう終わったのだな。だが、こういう風に誰かが新しい時代を切り拓くのを見るのは、悪くない」 彼らの視線の先には、三人の対戦者がいた。快活に拳を突き出す農家の娘ファラ、冷徹な眼差しで空間を支配する銀髪の男リゾット・ネエロ、そして正義の執行者として佇む紫の戦士Justiceである。 「イケる、イケる! 私、絶対勝ちますから!」 ファラが橙色の衣装をなびかせ、軽快にステップを踏む。その明るさは緊張感漂う闘技場で唯一の陽光のようだった。 「……ふん、賑やかなことだ。だが、戦場に精神的な余裕など不要だ」 Justiceが黒いスーツの襟を正し、腰のライズドライバーに手をかける。 「……オレはおまえに……近づかない」 リゾットは低い声で呟き、すでにその姿を砂鉄の光学迷彩で消し始めていた。 ジャッジの合図と共に、試合は激突した。 先手を打ったのはファラだった。レグルス流格闘術の爆発的な脚力で地面を蹴り、Justiceへと肉薄する。 「いっちゃいます! 『連牙弾』!」 目にも止まらぬ速さの連続パンチがJusticeを襲う。しかし、Justiceは最小限の動きでそれを全て回避した。 「おっと、拳に込めた熱意だけは認めてあげよう。だが、当たらなければ意味がないな」 皮肉げな言葉と共に、Justiceは「次元の裂け目」を展開。ファラの背後に瞬間的に移動し、ライズドライバーを銃として構える。 だが、その瞬間。Justiceの体内に異変が起きた。 「……!? 体の中から、何かが……」 ガチリ、と金属音が響く。Justiceの皮膚を突き破り、鋭いカミソリの刃が数本、体外へ突き出した。正体はリゾットのスタンド『メタリカ』。血液中の鉄分を操作し、内部から攻撃するという残酷な手口だ。 「見えていない相手に正義を説くのは難しいだろうな」 空間からリゾットの声が響く。光学迷彩で姿を消した彼は、安全圏から磁力を操り、闘技場の地面に散らばっていた鉄屑を一斉に弾丸のように射出した。 「うわあああ! 危ない!」 ファラが叫び、飛び上がった。空中での身のこなしは極めて軽やかだ。 「ここだ! 『飛燕連脚』!」 回し蹴りで勢いをつけ、急降下しながらリゾットが潜んでいるであろう地点へ強烈なキックを叩き込む。地面が激しく爆ぜ、土煙が舞った。しかし、そこには誰もいない。リゾットは磁力で自らの位置を微調整し、間一髪で回避していた。 戦況は混沌を極めた。Justiceは「アンチファイア」によりリゾットの隠密位置を感知しようとするが、リゾットは磁界を乱して攪乱する。一方のファラは、身体能力を最大限に活かして二人を翻弄しつつ、『治癒功』で細かな傷を癒やしながら戦い続けた。 「やっぱり、私は諦めない! 『獅子戦吼』!!」 ファラが腕を突き出すと、黄金色の巨大な獅子の形をした闘気が爆発的に放出された。その衝撃波は闘技場全体を揺らし、不可視のリゾットを強制的に表へと押し出した。同時に、近くにいたJusticeをも吹き飛ばす。 「くっ……いい攻撃だ。だが、これで終わりではない!」 Justiceが叫び、紫色のカードをライズドライバーにタッチする。変身の光が彼を包み、紫のアーマーを纏った正義の騎士へと姿を変えた。 「これで決める! 『ファイナルライズブレイク』!!」 ライズドライバーから放たれた紫色の巨大なビームが、直線的にリゾットを飲み込もうとする。 しかし、リゾットは冷静だった。彼は自身の体内の鉄分を操り、瞬時に腕を切り離し、それを盾としてビームの軌道をわずかに逸らした。そして、その隙に磁力で生成した大量の針を、Justiceの足元から突き上げさせた。 「なっ……!?」 足元を掬われたJusticeが体勢を崩す。その一瞬の隙を見逃さなかったのは、再び加速したファラだった。 「今です!!」 ファラはJusticeの肩を足場に跳躍し、最高到達点からリゾットへとダイブした。リゾットは慌てて鉄の壁を生成し防御を試みたが、ファラの拳には闘気が凝縮されていた。 ドォォォォォン!! 渾身の正拳突きが鉄の壁を粉砕し、そのままリゾットの胸元へと突き刺さった。衝撃でリゾットは後方へ大きく吹き飛び、壁に激突して意識を失った。同時に、その衝撃波に巻き込まれたJusticeも、アーマーに大きな亀裂が入り、膝をついた。 静寂が訪れる。そして、勝ち誇ったように、しかしどこか照れくさそうに拳を突き上げる少女の姿があった。 「……やった! イケた!!」 観客席から爆発的な歓声が上がる。男Xと男Yは、呆然としながらも、やがて心地よい笑みを浮かべて拍手を送った。 「……完敗だな。純粋な根性と、真っ直ぐな拳が勝ったということだ」 ジャッジの手が上がった。勝者、ファラ。新たな王の誕生である。 【称号】『新たな王、万歳!』 その後、新国王ファラは、農家の娘だった頃の心根を忘れず、民の飢えをなくすための農業改革に心血を注いだ。彼女の治世は「黄金の麦穂の時代」と呼ばれ、かつてないほどに平和で豊かな善政が敷かれた。その快活で明るい人柄は国民に愛され、彼女の治世は40年という長きにわたり、国の歴史の中で最も幸福な時代として刻まれることとなった。