国家直属極秘部隊『K-NIGHT』。その名は、選ばれし「騎士」として国家の影で汚れ仕事を完遂する者たちにのみ与えられる。入隊試験会場である巨大なドームには、およそ百人の志願者が集まっていた。多種多様な種族、異能者、そして正体不明の化け物たち。張り詰めた空気の中、異様な存在感を放つ二つの「丸い体」が隣り合わせになっていた。 一方は、頭に無骨な鉄コンクリート製の四角い箱を被った、どっしりとした体躯の個体。もう一方は、自分の体の倍ほどもある巨大なサイバーグラスを装着し、ドットの瞳をパチパチと点滅させている小柄な個体。 「……あの、こんにちは」 鉄の箱の中から、もこもことした、おどおどした声が響いた。マシクフリビーノルョチである。彼は極度の受け身であり、周囲の刺々しい視線に縮こまっていた。 サイバーグラスのドットが「^_^」という形に変わる。イハザだ。 「あぁ、こんにちは。……っていうか、あなた随分と重苦しい格好をしてますね。暑苦しいですよ、黙りやがれ下さい」 丁寧な口調に混ざる、突き放すような不遜な物言い。しかし、イハザのサイバーグラスは激しく左右に揺れている。彼は極度のビビりで、周囲の強者たちの気配に本能的に怯えていた。 「すみません……僕、これを被っていないと、周りの人に迷惑をかけるので。あ、僕はマシクです」 「イハザです。まあ、どうせここで生き残るのは僕みたいな器用なタイプでしょうし。あなたみたいな鈍重な方は、早めに諦めて帰宅されることをお勧めしますよ」 口では傲慢に振る舞うが、イハザは内心で(うわぁ、この箱の奴、何かヤバいエネルギーが出てる……近寄りたくないけど、盾にするにはちょうどいいかも)と計算していた。一方のマシクは、(この人は口は悪いけど、なんだか速そうだな。ついていけば安心かも……)と、優柔不断に思考を彷徨わせていた。 その時、会場に冷徹な機械音声のアナウンスが鳴り響いた。 『――志願者各位。これより入隊試験を開始する。各自、指定の待機エリアへ移動せよ。なお、本試験における殺傷および妨害行為は、生存を目的とする限りにおいて全面的に許可される』 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、会場の空気が一変した。互いに牽制し合っていた参加者たちの目に、獲物を狙う獣のような光が宿る。マシクとイハザは、不意に訪れた緊張感に、反射的に距離を取った。 「……じゃあ、せいぜい死なないように頑張ってくださいね」 「あ、はい……あなたも」 二人は一旦別れ、それぞれの運命を分かつ第一試験のステージへと足を踏み出した。