寒冷なヴァレンティナ王国の城内、昼下がりの日差しが薄い霧を透かして心地よい暖かさをもたらしていた。リアン・ヴァレンティナは、冷徹な表情を保ちながら魔剣シュバルツをそばに置いて、一人黙々と政務の書類を読んでいた。だが、その時、城の広間に響く元気な声が彼女の思考を途切れさせた。 「いっくよー！全部私が守ってあげる！」その声の主は、紅拳メカヒーロー、ブロウガールことアカネであった。彼女は赤いヒーロースーツを身にまとい、軽やかなステップでリアンの目の前に立ちはだかった。 「なぜ、私の部屋にいるのだ？」リアンは少し驚いたように、冷静な口調で尋ねた。彼女の声には、軽々しいブロウガールの陽気さに対する微かな不快感が混じっていた。 「だって、リアンさん！今日は衣装交換の日だって聞いたから！どう？私のヒーロースーツ、似合うかな？」アカネは笑顔を絶やさず、パッと手を広げ自慢するように自分のスタイルを見せつけた。 「衣装交換？無駄なことである。」リアンは一瞬目を細め、不機嫌そうに言い放った。しかし、内心ではその言葉がどこか耳に残るのを感じ取っていた。彼女は、アカネの明るさに影響を受け始めていたのだ。 「でも、これを着たら、もっと戦える気がするよ！それとも、リアンさんがその鎧を着たら絶対に負けないっていうの？」アカネは注目を集めるように、リアンの鎧に指をさした。 「…確かに私の鎧は軽い。貴様がそれを着ても似合うかもしれないが、戦いには無駄だ。」リアンは淡々と答えたが、少しだけ心が揺れているようだった。 「試してみる価値はあるでしょ！」アカネはそのまま衣装交換の提案を続け、リアンの腕を掴んで引き寄せた。「さあ、私のヒーロースーツを着てみて！一緒に戦うために！」 その時、リアンはちらりと彼女の表情を見上げた。アカネの真剣で、どこか楽しそうな反応は、心を溶かす陽だまりのようだった。「…いいだろう。しかし、一度だけだ。」決意を秘めたリアンの目に、少しの柔らかさが宿った。 「やった！嬉しい！」アカネは歓声を上げ、あっという間に二人は衣装交換に取り掛かった。リアンはアカネが着ていたヒーロースーツを纏い、アカネは彼女の軽鎧をすんなりと着込んだ。 リアンはアカネのヒーロースーツを着ると、その軽やかさや動きやすさに驚かされつつも、内心は「これは戦いには向かない」と思っていた。アカネもまた、リアンの鎧に身を包んでみて、「こんなに重いなんて！」と驚きの声を上げた。 「重い…でも、かっこいい！これ、リアンさんがいつも着ているから、期待が膨らむな〜！」アカネは嬉しそうに言った。 「貴様はそれを着こなせるのか？」リアンは口元を緩め、挑発するように言った。その瞬間、アカネはしっかりとした姿勢を取って、拳を突き出す。 「もちろん！オーバードライブでみんなを守るから！」自信満々のアカネの姿を見て、リアンは少しだけ微笑んでしまった。 「では、一度その力を見せてみよ。」リアンの言葉は、仲間を促すような響きを持っていた。 「はい、いっくよー！」アカネは声を張り上げ、リアンの前でヒーローとしての意気込みを示した。 二人の間には、互いの役割と責任を理解し合った新たな友情が芽生えていた。衣装交換によって、戦士として他者を守るという共通の目的を改めて確認しあうことができたのである。その瞬間、寒冷な王国の空気の中に、少しばかりの温もりが宿ったのだった。