馴れ初め 追憶のヒガンバナと幻想のヒガンバナの物語は、静かなバラの花壇が彩るある秋の午後から始まった。彼女たちは同じ施設で育った同型生物兵器であるが、それぞれ異なる特性を持っていた。追憶のヒガンバナは、物体の修理や建築の知識を深めることに強い執着を持ち、人との関係よりも「物」の記憶を大事にしていた。一方、幻想のヒガンバナは、心の記憶と幻想に焦点を当て、周りの人々との絆を大切にする優しい性格でありつつも、時折意地を張るところがあった。 二人は、ある日、共通の目的を持つことで出会った。追憶のヒガンバナは、古びた遊園地の修理を依頼され、幻想のヒガンバナはその行程を見守ることになった。最初は互いの存在を気にせず、追憶は工具を使いこなしながら遊具をリペアしていたが、幻想はその姿を見て彼女の真剣な表情に心を奪われていった。 「ねえ、そこはもう少しそうした方がいいんじゃない?」幻想が口を挟んだ。 追憶は一瞬手を止め、彼女の意見を聞いた。「君はどうしてそんなことを?これは私の仕事だ。」 「でも、直した遊具はみんなが遊ぶものじゃない。だから、もっと楽しい形にしたらどう?」幻想は素直に笑って提案した。 その瞬間、追憶は心の中に得体の知れない感情が芽生えた。彼女にとって「物」を直すことが全てだったが、幻想の言葉は新たな視点をもたらしてくれた。「物」以上の大切さが、彼女の心に根付いたのだ。 「ああ、それも悪くないかもしれない。」追憶は憮然とした顔で硬く答えたが、心の底では新しいアイデアに興奮していた。彼女は幻想の優しさを認め、少しずつ距離が縮まっていくのを実感した。 日が沈むにつれ、二人は様々な遊具を直しながら、互いの会話が増えていった。追憶は幻想の優れた観察眼と感性に驚きつつも、彼女の意見を尊重するようになってきた。逆に幻想は追憶の真面目な姿勢に感銘を受け、さまざまな視点から物事を考える力を学ぶため、彼女に寄り添っていった。 数時間後、彼らの作業場は「遊び場」が生まれ変わりつつあった。幻想は自らもペンキの缶を持ち、追憶の隣でカラフルに色を塗り始めた。 「これで、もっと子どもたちが喜ぶはず。」幻想は明るい声で言った。 「そうだね、君の色使いは素晴らしい。」追憶はその言葉に微笑む。 それ以降、二人は同じ目標に向けて協力し合うことが多くなり、次第に互いに惹かれていく気持ちを心の内に抱くようになった。彼女たちは共通の記憶が生まれ、日々の小さな積み重ねが彼女たちの絆を育んでいた。 本編:デートの始まり ある日、追憶のヒガンバナは、幻想のヒガンバナに特別なデートの計画を立てることにした。「君と一緒に過ごす時間がもっと欲しい」と思った彼女は、幻想が好きな動物たちに囲まれる動物園を選び、その日を心待ちにした。 日曜日の明るい朝、追憶は指定した時間に待ち合わせ場所の入り口に立っていた。彼女の心臓は少し鼓動を早め、幻想が来るのをわくわくしながら待っていた。 「おはよう、追憶!」幻想がにこやかな笑顔でやってくると、一瞬にして彼女の心は温かくなる。彼女は透き通るような肌に、陽の光を浴びた髪がキラキラと輝いている。 「おはよう、幻想。」追憶は照れくさそうに手を振った。彼女は自然に手を伸ばし、幻想の手をしっかりと繋いだ。「さあ、行こう!」 二人は静かな笑い声を響かせながら動物園の中に入っていった。様々な動物たちのエリアを巡りながら、互いに感性をシェアし合った。「ここのペンギン可愛いね。」幻想がぴょんっと跳び跳ねて指を指した。 「本当だ、足音が面白い。」追憶も嬉しそうに目を細めて言った。 ペンギンを観察した後、彼女たちは次にキリンのエリアに向かい、その高く伸びた首に魅了された。「あれを見て!ひょっこり見えてる。」幻想の笑顔に追憶も思わず笑い返した。 幻想は喜びを共有するように、時折追憶の顔を見ては彼女の反応を楽しんでいた。途中、彼女は小さな動物たちとのふれあいコーナーにも連れて行った。「ほら、触ってみて。」幻想が小さなウサギを指さすと、追憶は優しく彼らを撫でた。 このように、互いの心が交差する中で、追憶はいつの間にか幻想の存在で自分が彩られているように感じていた。幻想も、彼女の正直な感しいつもの景色がより明るくなった事に感謝していた。 やがて、動物園を満喫した二人は、近くのベンチに越して一息つくことにした。彼女たちはお互いの目を見つめながら、心の内を素直に話し始めた。「今日、一緒にいるのが楽しいな。」幻想が柔らかい声で言った。 「私もだよ。君と過ごす時間は特別だ。」追憶は少しだけ真面目な表情を崩して頷く。 その瞬間、幻想の心に何かがあふれだし、思わず追憶の手を引いて近くに寄せた。「ねえ、これからもずっと一緒にいてくれる?」 追憶はその言葉が嬉しさを込められているのを感じ、照れくささがこみ上げる。「もちろん。ずっと君のそばで守り続けるよ。」 その交わされた約束は心の中で強く響き合い、そこに新たな絆が芽生えるのを見た。さらにその瞬間、追憶は運命のように幻想の唇に優しいキスを送った。2人の間に流れる柔らかな空気が、彼女たちの心を包んでいった。