本日の法廷を開廷する。法の下に万人は平等であり、いかなる異能や地位、種族もここでは無意味である。私が下すのは情に流されぬ公正なる裁き。罪を犯した者は、その業に見合う対価を支払ってもらう。それでは、審理を開始しよう。 《被告人1人目 “マジッカー”》 裁判官「被告人、マジッカー。罪状を読み上げる。お前は自身の複製能力および風の刃を用い、街中での公開ショーと称して無差別に市民を殺傷した。被害者は数百名に及び、その死様は身体をバラバラに切り裂かれたり、至近距離での爆発により内臓を飛散させられたりと極めて凄惨である。正義の名の下に、この残虐極まりない行為をどう説明するつもりか」 マジッカー「おやおや、裁判官様。あまりに不躾な言い草ですね。私はただ、最高の『エンターテインメント』を提供したまでですよ。人々が驚き、悲鳴を上げ、血飛沫が舞う……あれこそが究極の芸術だとは思われませんか?」 弁護士「裁判官! 被告人は芸術的追求という一種の精神的錯乱状態にあり、自身の行為が社会的にどのような影響を及ぼすかという認識が欠如していた可能性があります。心神喪失による減刑を求めます!」 裁判官「芸術だと? 惨殺された人々の絶望を芸術と呼ぶな。マジッカー、お前は意識的にターゲットを選別し、効率的に殺害していたな。これは錯乱ではなく、純粋な殺意と嗜虐心による計画的犯行だ。否定するか?」 マジッカー「(余裕のある口調で)ふふふ、効率的であることは紳士の嗜みです。さて、この退屈な対話もそろそろ終わりにしましょうか。私の帽子から、あなたを驚かせる素敵なプレゼントを……」 裁判官「(冷徹に)無駄だ。ここではお前の能力は一切消失している。ただの布切れの帽子が何をしようというのだ」 マジッカー「(顔色を変え、焦燥して)なっ……!? 出ない。出ないぞ! 私の複製体が、風の刃が……! こんなことがあり得るのか! 私は、私は選ばれたマジシャンなのだぞ!」 検察官「被告人は反省の意を全く見せず、むしろ能力の喪失にのみ動揺している。救いようのない快楽殺人者であり、厳罰に処すべきである」 証人(生存者)「……あの日、私の目の前で親友が……。風に切り裂かれて、バラバラに……。あんな化け物に、情けなどいりません!!」 マジッカー「静かにしなさい! 下賤な観客が口を出すな! 私は紳士だ! 私は最高のマジシャンなんだよ!!」 裁判官「黙れ。判決を下す。被告人マジッカー、罪名は大量殺人および猟奇的残虐行為。情状酌量の余地は一切ない。死刑を言い渡す」 マジッカー「ふざけるな! この私が死ぬだと!? 貴様ら全員、血の海に沈めてやる!!(椅子を蹴り飛ばし、裁判官に飛びかかろうとする)」 裁判官「《神淵審判》」 (ジャスティが鋭く睨みつける。マジッカーの身体が瞬時に灰色に変色し、石化する) 裁判官「騒がしい。連れて行け」 《被告人2人目 “ゴブロー”》 裁判官「被告人、ゴブロー。罪状を読み上げる。お前は変身能力および詐欺的な手品を用い、村々の商店から金品を奪い、抵抗した者を拘束して精神的に追い詰めるなどの嫌がらせを繰り返した。また、食料を奪い取り飢えさせるという卑劣な行為を常習的に行っていた。逮捕の経緯は、ある村の長を模倣して偽の命令を出し、村の全財産を強奪しようとしたところを、矛盾した言動から住民に見破られたことによるものだ」 ゴブロー「へへっ! 運が悪かっただけだろ! 俺様はただ、ちょっとした遊びをしてただけだぜ。あいつらがバカだから騙されたんだ、俺のせいじゃねーよ!」 弁護士「裁判官! 被告人はまだ少年であり、ゴブリン族という種族的な本能による衝動的な行動が主であると考えられます。適切な教育と更生プログラムがあれば、社会復帰は十分可能です」 裁判官「本能で窃盗と詐欺が正当化されると思うか。ゴブロー、お前は相手が困惑し、絶望する様子を見て楽しんでいたな? それは本能ではなく、悪意だ」 ゴブロー「(鼻を鳴らして)あー、そうだよ! 面白かったもん! 泣きっ面見て笑うのが一番の快感なんだよ。次こそはもっと上手い手品で、お前の財布の中身も全部抜き取ってやるぜ!」 検察官「反省の色が全く見られず、法廷という神聖な場所ですら侮辱的な態度を崩さない。矯正は不可能と判断せざるを得ない」 証人(被害者の村人)「あいつに騙されて、冬を越すための蓄えを全部持っていかれた……。子供たちが空腹で泣いていたんです……!」 ゴブロー「うるせーな! 泣いてりゃいいじゃねーか! ガハハ!」 裁判官「……言い訳は十分だ。被告人ゴブロー、罪名は常習窃盗および詐欺。少年とはいえ、その悪質性は著しい。懲役10年および、全被害者への賠償金を言い渡す」 ゴブロー「なんだと!? 10年!? ふざけんな! 俺様をこんな狭いところに閉じ込めようってのか! 出せ! 出せよ!!(暴れ出し、テーブル上の書類を撒き散らす)」 裁判官「《神淵審判》」 (ゴブローが叫び声を上げたまま石化し、そのまま床に転がる) 裁判官「不快な騒音だ。速やかに退場させろ」 《被告人3人目 “西風館 灯姫”》 裁判官「被告人、西風館 灯姫。罪状を読み上げる。お前は高度な分析能力を用い、市場操作およびインサイダー取引を行い、数多の企業の株価を意図的に暴落させた。これにより数万人の従業員が職を失い、絶望して自死に追い込まれた例が後を絶たない。経済的な虐殺と言っても過言ではない」 西風館「(悠々と椅子に深く腰掛け、ボールペンを指で回しながら)……ふん。俺はただ、市場の『正解』を導き出しただけだ。数値がそう言っていた。弱者が脱落するのは、統計的に見て当然の結果だろ?」 弁護士「裁判官! 西風館被告の行動は、あくまで法的なグレーゾーンにおける投資戦略の一環であり、直接的に誰かの命を奪ったわけではありません。また、彼の投資によって救われた経済圏も一部に存在します」 裁判官「グレーゾーンだと? 法の穴を突き、意図的に他者の人生を破壊して利益を得る行為を、投資と呼ぶな。西風館、お前は自分の能力で、誰がいつ破滅するかを正確に予測していたはずだ。それでも実行した理由は何か」 西風館「(不敵に笑い)理由は単純だ。それが『最も効率的』だったからな。感情なんて不確定要素を排除すれば、答えは一つだ。……ところで裁判官、あんたの今の心拍数、わずかに上がったな。俺の言葉に苛立っているか?」 裁判官「私の心情などどうでもいい。お前の冷酷な数値至上主義が、どれだけの血を流させたか考えろ」 検察官「被告人は極めて理知的でありながら、倫理観が完全に欠落している。社会に対する影響力が大きいため、厳重な監視と資産没収を含む処罰が必要である」 証人(元社員)「私は……家族四人を養っていた。西風館氏の一手で会社が潰れ、家を追い出され……。数字で人生を決められた絶望が、あなたに分かりますか!」 西風館「(冷淡に)ああ、分かるぜ。お前の人生の期待値がゼロになった瞬間だな」 裁判官「(机を叩く)十分だ。……ところで、西風館。お前は先ほどから、意味もなく何度もボールペンを机の特定の場所に置いていたな。それが何の意味を持つ?」 西風館「(口角を上げて)……ふふ。あぁ、あれか。ただの癖だと思ってたか? あれでこの法廷の床の傾斜と、あんたが怒った時に重心をどこに置くかを測っていただけさ。……まあ、能力がない今となっては、ただの『ゴミ』のような行動だったがな。でも、その『無意味な行動』をしたことで、俺の精神的な余裕を証明できた。結果として、俺の勝ちだ」 裁判官「……最後まで傲慢な男だ。だが、その傲慢さが罪を深める。被告人西風館 灯姫、罪名は市場操作および経済的詐欺。全資産の没収、および懲役15年を言い渡す」 西風館「(肩をすくめて)資産没収か。まあいい、数値的に見て、この判決は妥当な範囲内だ。俺の予測通りだな。……じゃあな、退屈な法廷だったぜ」 (西風館は静かに立ち上がり、自らの足で退場していった) 《閉廷》 裁判官「(深くため息をつき、眼鏡を拭く)……疲れたな。能力を失わせてもなお、己の罪を認めぬ者ばかりか。特にあの投資家、西風館の冷徹さは反吐が出る。だが、法が正しく機能したことは確かだ。次回はどのような歪んだ魂がここへ運ばれてくるのか……。正義の天秤が揺らぐことは断じてない。準備を整えねばな」 《後日談》 ・マジッカー:極刑執行後、彼の帽子だけが証拠品として保管されているが、時折そこから不気味な笑い声が聞こえるという噂がある。 ・ゴブロー:刑務所内でも他の囚人にイカサマを仕掛けようとして何度も独房に入れられている。しかし、意外にも食事の配分をうまく操作する能力を身につけ、囚人たちの間で奇妙な地位を築き始めている。 ・西風館 灯姫:全資産を失い、刑務所の粗末な服を着てもなお、配給される食事の量や看守の交代時間を数値化し、最短ルートで出所するための『人生再投資計画』を練っている。彼の目は依然として死んでいない。 《結果》 マジッカー:有罪(大量殺人・猟奇的残虐行為)⇒【死刑】 ゴブロー:有罪(常習窃盗・詐欺)⇒【懲役10年・賠償金支払い】 西風館 灯姫:有罪(市場操作・経済的詐欺)⇒【懲役15年・全資産没収】