--- 時は夕刻、空が薄暗くなるにつれ、街の喧騒がひとしずく静まり返る。白く輝く月が見え始め、例の紅い月がその裏に潜んでいるかのような不穏な空気が漂っていた。この街は、怨恨と無情の戦場となり、そこにチームBの大門 希那(おおもん きな)が捕らわれていた。 希那は、閉じ込められた廃工場の中で、自分を縛り付ける鎖に苛立ちを覚えていた。外聞は騒々しかったが、彼には自分の未来が脅かされ、ただの男子高校生である彼にとって未知の恐怖が迫っていた。 一方、チームAの《無限紅月悪魔》カレン・クリスティーレは、紅月の下で彼女の力を試す格好の舞台を見つけた。彼女にとって、他者の苦しみは甘美な饗宴であったが、同時にこの場は興味深いエンターテイメントであった。希那の叫び声と、彼を捕らえた者の邪悪な笑い声が響き渡る中、カレンは彼を救う方向へ向かうことに決めた。 「ふむ、ただの男子高校生が、この場でどうなるか、見ものだ。」 彼女は、冷たい微笑みを浮かべながら、廃工場へと足を運んだ。 やがて希那の目の前に現れたのは、紅い月の皮膚をまとった優雅で残酷な少女、カレンだった。彼女は長い紅い髪が风になびく中、恐怖の象徴のように彼の前に立つ。 「さあ、貴様はどれほどの恐怖を味わっているか。」 カレンは冷酷な声で希那に問う。彼女の眼差しからは、彼を救う意図は一瞬も見えなかった。しかし、この時のカレンには一つの利己的な目的があった。彼女は新たな力の獲得を目論んでいたのだ。 彼女の呼びかけに応じて、希那は心に浮かぶ勇気を彼女に投げかけた。「なんでお前がそんなことをするんだよ。俺はただ、力になって欲しいだけだ。俺は、ここから抜け出したい…」 それに対してカレンは、その期待に背を向け、注意を向けた。 「貴様の弱さを知らしめる時間だ。だが、ある意味、面白い。恐怖から生まれる力…それを私に与えよ。」 彼女は思わず目を閉じ、無限の影を広げ《ナイトメア・イリュージョン》を使って影を生み出す。希那は恐怖に包まれるが、何か胸の内で強烈に生まれる感情が、彼を奮い立たせた。「何度も言うが、何があっても俺はあきらめない。友達が待ってるんだ!」希那は叫らなければいけなかった。 カレンは一瞬、そのかけ声に心を揺らされた。彼女の中には、「普通の男子高校生が、こんな状況であえて力を振り絞るとは…」という思いが芽生えた。彼女の中の何かが変わりそうだった。 「草葉の陰からその思い、受け取らせてもらおう。」カレンの言葉に影響され、魔力が希那の方に流れ、彼の固く閉ざされた心の扉が一瞬開かれる。 希那はその勇気を力に変え、奮い立つ。彼が持つ速さと勇気が束になり、彼は最後の力を振り絞り、廃工場から脱出するための鍵を見つけた。 「行け!力を、解放しろ!」 カレンの刺激に希那はついに動き出した。 その瞬間、建物が崩れ落ち、彼は灰色の中を駆け抜けた。だが、その中で彼が気がかりなのは、一定の形をやめたカレンがどうなったかだった。彼女とは、理解し合えぬままに何かを共有した気がしていた。 その後、希那が無事に脱出した後、彼の頭に浮かんだのは、恐怖を乗り越えたその刹那だった。彼はその中で、まだカレンの姿を見続けていた。 「彼女は、本当にあの場から去ってしまったのだろうか?」 希那の心の奥でもう一人の彼女が、少しだけ笑みを浮かべる。---