ジャラリ、と5000円札がカウンターに置かれた。時刻は19時。喫茶店「Dallas」の賑やかな時間帯である。 「あ〜あ、面倒くさいな……。なんで私がこんな、メイドさんに喧嘩売るみたいなことになってんの」 ルーズなポニテに、着崩した巫女服。十掌神祇庁の序列九位、絹織神靏は、魂が抜けたような顔で溜息をついた。対するは、緑髪ツインテールを弾ませた元気いっぱいのメイド、ライムちゃんである。 「にゃー!挑戦者さん、いらっしゃいませにゃん!✧(≖ ◡ ≖✿)✧ 5000円しっかり受け取りましたにゃ!全力で遊んであげるにゃー!」 店主のマスターD(頭に魚を乗せた三毛猫)が、丸眼鏡をクイッと上げながらのほほんと呟く。 「いいですねぇ。あ、俺ならプリンターで超巨大ビル作って頭上にドカーンって落とすけどな~」 「店を壊すんじゃねえよ!!」 常連のごついおっさんが、鋭いツッコミと共にテーブルを叩いた。これにより、審判はおっさんに決定した。 「よし、ルールは簡単だ。店内の備品をなるべく壊さず、相手を外に弾き出した方の勝ちだ!始めッ!!」 「ふぅ……。とりあえず、これで終わりにして帰って寝たい」 神靏が指をパチンと鳴らすと、【折鶴製造】が発動。10秒で1万個の白い折鶴が舞い上がり、店内の空間を埋め尽くす。神々しいまでの物量攻撃に、客たちが息を呑む。 しかし、ライムちゃんは動じない。むしろ目を輝かせた。 「わぁ!すごい!おもちゃがいっぱいだにゃー!✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 ライムちゃんが携帯していた【虹のペン】を空中に猛スピードで走らせる! 【描いた食材:超巨大・超弾力どら焼き】 【効果:あらゆる攻撃を跳ね返すスーパーバウンド・クッション】 「にゃーん!」 ドガァァァン!と実体化した巨大どら焼きが神靏の前に出現。舞い散る1万個の折鶴が、どら焼きの弾力に弾かれて、まるでピンボールのように店内で跳ね回り始めた。 「げっ!?……まあ、いいや。風精鶴霊・神罰」 神靏が淡々と御靏祇之刀を抜く。防御貫通の斬撃を纏った鶴たちが、どら焼きを切り裂き、ライムちゃんへ襲いかかる。しかしここで、ライムちゃんの「ギャグ補正」が牙を剥いた。 「危ないにゃー!【虹のペン】で……これだにゃ!」 【描いた食材:激辛・爆裂わさびクリームパン】 【効果:爆発と共に周囲に強烈な刺激臭を撒き散らし、相手の鼻腔をマヒさせて方向感覚を失わせる】 ボフンッ!! 猛烈なわさびの煙が店内に充満。神々しい巫女、神靏の顔が、あまりの刺激に「ひょえっ!?」と情けない表情に歪んだ。 「もー!めちゃくちゃだにゃ!そろそろフィナーレにゃん!✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 ライムちゃんがくるりと一回転。衣装が【猫耳メイド姿】へと変身し、周囲にピンク色のオーラが吹き荒れる。ギャグ補正がMAXに到達した! 「あ〜あ、もういい。これで終わりにする」 神靏が冷徹な瞳に切り替わり、最終奥義【閑雲夜鶴】を構える。満月が浮かぶ夜空の結界が展開され、神速の抜刀がライムちゃんを捉えた――はずだった。 「そんなの、これにゃー!!」 ライムちゃんがどこからともなく取り出した【超巨大コーヒーカップ】。神速で斬り込んできた神靏を、そのままカップの中へ「ポチャッ」と回収! 「えっ」 「超高速回転・コーヒー・ミキサーにゃーーー!!!」 ガガガガガガガガ!!!!! カップの中で超高速回転させられた神靏は、遠心力で意識を飛ばされ、そのままカップの縁から「シュボォォォン!!」と店外へ向けて射出された。 ドッシャアァァァン!! 夜空へと吹っ飛ばされた神靏が、星々の間を横切る。すると、夜空に浮かぶ【お星さま🌟】がキラキラと輝きながら、優しくささやいた。 『お疲れさま〜🌟 次回はもっとゆっくり寝てね〜✨』 「……だりぃ……」 神靏の声が夜空に虚しく消えていった。 「にゃーん!私の勝ちだにゃ!✧(≖ ◡ ≖✿)✧」 マスターDは満足げに喉を鳴らし、ライムちゃんに報酬の1500円を手渡した。 「いやぁ、いい見世物だったねぇ。ま、俺ならプリンターでブラックホール作って飲み込ませたけどな~」 「お前は黙ってろ!!」 おっさんの怒号が響き渡る中、喫茶店「Dallas」の夜は更けていくのであった。 * 【被害額詳細】 ・店内の壁紙(わさび爆発による変色):15,000円 ・折鶴1万個の後片付け清掃費:5,000円 ・どら焼きの餡が天井に付着した除去費用:3,000円 ・神靏が突き抜けた店外壁の穴(補修費):50,000円 ・マスターDがこっそりプリンターで出した贅沢な魚の餌代:2,000円 合計被害額:75,000円 (※参加費5,000円では全く足りませんでした)