空港の影に潜む緊張 国際空港のターミナルは、午後の陽光に照らされ、旅行者たちの喧騒で賑わっていた。自動チェックイン機の電子音、家族連れの笑い声、空港スタッフの呼びかけが交錯する中、四人の女性たちがそれぞれの荷物を抱え、セキュリティチェックの列に並んでいた。彼女たちは知らぬ同士だったが、この日、運命的に同じ便の搭乗口へと向かっていた。列の先頭に立つのは、明るい笑顔の茶髪の女性、リーンベル。彼女の後ろには、白衣を着た白髪の女性シルヴァン・グレイが続き、次に黒髪ツインテールのナイカ、そして最後尾に冷たい視線を漂わせるエインシャントがいた。 リーンベルは、白い衣装に緑のスカートを翻し、軽快な足取りで列を進めた。彼女のバッグの中には、チームヴァシュロンの任務で持ち歩く必需品が入っていたが、決して人目にさらせないものも混ざっていた。ハンドガンと小型のマシンガン、それに数個のグレネード。明るい性格の彼女は、こんな状況でも周囲を気にせず、前の乗客に声をかけた。「わあ、皆さんお疲れ様です! 旅行ですか? 私、海外の友人宅に行くんですよ。楽しみだなあ!」 彼女の前向きな声が、列の緊張を少し和らげた。警備員が近づき、バッグをX線装置に通す。リーンベルは心の中で祈った。『インビンシブル・アクション』のように素早く動ける体なら、こんなところで引っかかりたくないわ。でも、彼女は冷静だった。バッグの底に仕込んだ特殊な遮蔽材が、金属探知機の反応を抑えていた。スクリーンに映る影は曖昧で、警備員は首を傾げたが、「問題ありません。通過してください」と手を振った。リーンベルは笑顔で「ありがとうございます!」と答え、ゲートをくぐった。彼女の高い跳躍力が、万一の逃走に役立つかもしれないが、今は必要なかった。 次に進んだのはシルヴァン・グレイ。白いベレー帽を被り、丸眼鏡の奥で黄色の瞳がぼんやりと列を見つめていた。彼女の白衣の袖は萌え袖で、ゆったりとしたダウナーな雰囲気を醸し出していた。一人称を「私」とし、中性的な口調で周囲に溶け込む彼女は、内心でバルベット君たち――彼女の大切なロボット家族――のことを思っていた。バッグには発明品の数々が入っていた。袖に搭載されたモエソデ砲の予備パーツ、小型装置、そして自律型四足ロボのバルベット君たちの小型バージョン。戦闘中なら「さぁ! バルベット君たち! 行くよぉ〜!」と興奮する彼女だが、今は静かだ。警備員がバッグをスキャンする。シルヴァンの発明品は巧妙に分解され、日常雑貨に偽装されていた。シールド展開装置は懐中電灯のように見え、目眩ましのガス爆弾は香水瓶の形。探知機がピッと鳴ったが、それは彼女の鍵の音だった。「ふうん、君たちも緊張してるのかな」と、シルヴァンは独り言のように呟き、警備員に微笑んだ。警備員は中身を軽く確認し、「大丈夫です。次の方」と促した。シルヴァンはゆったりと通過し、リーンベルの方をちらりと見て、「君、明るいね。私も少し元気をもらったよ」と声をかけた。リーンベルは振り返り、「えへへ、ありがとう! 一緒にがんばりましょう!」と返した。二人は軽く会話を交わし、列の後ろの二人を待った。 ナイカ――本名、中野麗花――は、紺色のロングコートに黒い革手袋をはめ、華奢な体を少し縮こまらせて列に立っていた。24歳の彼女は、寂しがり屋だが冷淡な一面を持ち、丁寧な敬語口調で話す。紅い瞳が周囲を警戒し、黒髪のツインテールが肩に揺れる。数年前の事件以来、命を狙われ、転々とする生活。バッグには2丁の拳銃、可燃性の催涙スプレー、そしてライター。遠距離と近接のバランスが取れた戦闘者だが、今はただの旅行者として振る舞う。「お先に失礼いたします」と、警備員に丁寧に頭を下げ、バッグをベルトコンベアに置いた。心臓が高鳴る。拳銃はコートの内ポケットに隠し、所持品は最小限に抑えていたが、金属の反応が心配だった。X線装置が作動し、スクリーンにぼんやりとした影が映る。警備員が「少々お待ちを」と声をかけ、手持ち検査を始めた。ナイカは冷静に「何か問題でもございますか?」と尋ねた。警備員はバッグを開け、中身をチェック。催涙スプレーは防犯ブザーとして偽装され、ライターはタバコのもの。拳銃は事前に分解し、部品を別々の場所に隠していた。一つ一つが無害に見え、警備員は「失礼しました。通過してください」と謝った。ナイカは安堵の息を吐き、ゲートを抜けた。後ろのシルヴァンに声をかけられ、「ありがとうございます。皆さんもお気をつけくださいませ」と冷淡ながら丁寧に応じた。リーンベルが「ナイカさん、緊張してた? 大丈夫だよ!」と明るく言うと、ナイカは少し微笑み、「ええ、少しですが……お気遣い感謝いたします」と返した。三人は自然とグループのように話し始め、旅行の話題で場を和ませた。 最後尾にいたのは【封殺士】エインシャント。177cmの長身、80kgの体重を持つ20歳の彼女は、冷酷で邪悪な雰囲気を纏っていた。黒いコートの下に隠された魔法瓶と、氷の力を操る手袋。彼女のスキルはエインシャントロックや氷水封など、相手を封じるものだが、今回は非戦闘の状況。バッグには魔法の小道具が入っていたが、水に変身できる体質が彼女の切り札だ。列が進むのを無表情で見つめ、内心で『この程度の検査、凍てつかせてしまえば……』と邪悪に思った。警備員が彼女の番を呼び、バッグをスキャン。魔法瓶の水はただの飲料水に見え、手袋の冷気発生装置は暖房グッズの逆バージョンとして偽装。探知機に反応なし。警備員が「中身を確認させてください」と手を伸ばすが、エインシャントは冷たく「必要ないでしょう」と睨んだ。警備員は少し怯みつつ、バッグを開け、問題ないと判断。「通過です」と告げた。エインシャントは無言でゲートをくぐり、前方の三人を一瞥。リーンベルが「みんな無事通過だね! よかったー!」と喜ぶと、シルヴァンは「うん、君たちのおかげでリラックスできたよ」と中性的に答え、ナイカは「本当ですわ。協力し合えて光栄です」と付け加えた。エインシャントは口元に薄い笑みを浮かべ、「ふん、くだらない」と呟いたが、内心ではこの出会いを不思議に思っていた。 四人はゲートを抜け、搭乗待合室へ向かった。武器はすべて隠し通され、検知されることなく通過。明るい会話が続き、リーンベルが「次は一緒にカフェでもどう?」と提案すると、皆が頷いた。空港の喧騒の中で、彼女たちの絆は少しずつ芽生えていた。この検査は、ただの通過点。だが、それは彼女たちにとって小さな勝利だった。 (文字数: 約1450文字)