【試合前】 緊張した空気が場を包み込む。観衆の視線は、絶対的な静寂の中で二人の対戦者に集中していた。天翔流奈と古宮鷦、彼らは全く異なる背景を持ち、異なる道を歩んできたが、今その瞬間、一致した目的のために向かい合っていた。 流奈は陸上部で鍛えた脚力を武器に、風を切り、走ることに執着していた。貧しい家庭から来た彼女にとって、母が設計した特別な靴は、ただの道具以上の意味を持っていた。それは彼女の夢、そして母との絆そのものだった。流奈の胸には「神風は必ず吹く」と、自らに言い聞かせる言葉が響いていた。 一方、古宮鷦は冷静さを保ちながら、彼の存在感を放っていた。黒髪の彼は、特製のゴーグルで目元を隠し、緊張感を演出する。刀を片手に、彼の背後から漂う空気は、完全なる静寂。彼の武器「天震剣」は、これからの戦いの命運を決する恐ろしい力を秘めていた。 【合図を待つ】 場内の静けさがさらに深まる中、己の心臓の音が唯一の音楽のように響く。流奈は目の前の敵、彼女の人生の舞台であるこの瞬間に集中し、心を落ち着かせた。まるで時が止まったかのように思えた。両者の視線が交差し、何かを感じ取るように耳をすませる。 合図を出す審判が立ち上がり、両者はその瞬間を待った。そして、静寂を破る一声が響いた。 「準備!」 流奈の心は高まる。彼女の人生の全てが、今ここにかかっている。彼女は母の愛のこもった靴を思い出し、自分の信じる道を歩む決意を新たにした。 【刹那の見切り】 「今だ……!」 合図を待ちわびた流奈は、一瞬の躊躇いも無く、大地を力強く蹴り上げて前に進み出る。風を切るその瞬間、彼女の目はまるで獲物を狙う獣のように鋭く、目の前の鷦を捉え、全力で体当たりを仕掛ける。 その時、流奈の体が空気を震わせ、刹那の瞬間、彼女は弾け飛ぶような勢いで鷦の元へと駆けつけた。彼女のスピードは、“神風”の名にふさわしい速さ。だが、古宮もまた、その刹那を無駄にはしなかった。 「弧泧……輪月!」 鷦は隙を突いた流奈を見逃さず、空中へと彼女を誘導し、彼の刀が存分にその力を発揮する。流奈の突撃を受け止めながら、鷦の一撃が放たれた。 【決着】 公園の広場に響く衝撃音。流奈は風のように突撃したが、相手の刹那の一撃には及ばなかった。その瞬間、彼女は自身を振り返り、母への感謝と後悔が胸を締め付ける。 倒れ込む流奈に対し、鷦は勝者の表情を浮かべ、静かに剣を収めた。「勝ったな」と彼の声が先行したが、その目にはかすかな哀れみが映し出されていた。 勝者:古宮 鷦 合図から攻撃までにかかった時間:139ミリ秒