【ターゲット詳細】 ヒーロー:久遠(くおん) - 能力: 「強度と起動の操作」 - 状態: 機関を脱走し、D-2-10『監督』の加護により超常的な身体能力と破壊力を得た。唯一の目的はヒロインとの心中による世界開花。愛に狂った破滅願望の権化。 ヒロイン:リリス - 能力: T-46-10-2(概念疾患の核) - 状態: 強烈な希死念慮に囚われた女性。久遠との接触により、世界を道連れに消滅させるトリガーとなる。その絶望が世界を焼失させるエネルギー源となっている。 --- 小説:終焉の接吻、鋼の絶望 空は不気味な紫色に染まり、大気には静電気のような緊張感が走っていた。現世界人明存続機関が派遣したバトラーたちは、絶望的な状況に立たされていた。ターゲットである久遠は、もはや人間を超越した「怪物」と化していた。彼が歩くたびに地面の「強度」が操作され、足元のコンクリートは液体のように波打ち、あるいはダイヤモンド以上の硬度を持って敵を圧砕する。 「……邪魔だ。彼女に会わせろ」 久遠の低く、しかし絶対的な拒絶を孕んだ声が響く。その背後には、彼を逃がし、誘導した『監督』の冷徹な視線があった。 最初に飛び出したのはカルシアだった。彼女は恍惚とした表情で、自らの腕の皮膚を内側から突き破らせた。白い骨の槍が肉を裂き、血飛沫と共に現れる。彼女にとって、この激痛こそが至高の快楽であり、力の源だった。 「あはっ! すごい、この圧力! もっと、もっとあたしを壊してよ!」 カルシアは絶叫と共に『穿骨槍』を突き出す。しかし、久遠は指先一つ動かさず、空間の「強度」を操作して不可視の壁を作り出した。骨の槍は弾かれ、カルシアは激しく吹き飛ぶ。だが、彼女は地面に叩きつけられた衝撃に身を悶えさせながら、頬を赤らめて笑った。 「最高……! 体が壊れる感覚がたまらないわ!」 再生能力で即座に傷を塞ぎ、カルシアはさらに加速する。『斬骨脚』による鋭い斬撃が久遠を襲うが、彼はそれを「起動」の操作で加速させ、逆にカルシアの懐へ踏み込んだ。強烈な一撃が彼女の腹部を貫く。内臓が潰れる音が響くが、カルシアは歓喜に震えながら、久遠の首に『肋抱穿』を仕掛けた。肋骨を放射状に突き出し、抱擁するように彼を貫こうとする。 だが、そこへ一閃の閃光が走った。 「……退け」 静寂を切り裂く声と共に、西舞が介入した。業物『影断』が、カルシアの骨の檻と久遠の攻撃を同時に弾き飛ばす。西舞の瞳――「真眼」は、久遠が操作する強度の歪みと、リリスへと至る最短の死線を見抜いていた。 西舞は淡々と、しかし電光石火の速度で『勝割』を繰り出す。久遠の防御を貫通する一撃がその肩を裂く。しかし、久遠は構わず前進する。彼にとって肉体の欠損など、リリスへの愛に比べれば無価値なことだった。 「リリスが待っている。世界など、彼女の涙一滴にも価値はない」 久遠の怒りが頂点に達し、周囲の重力と強度が暴走し始めた。衝撃波がバトラーたちを襲う。カルシアはあえてその衝撃に身を任せ、全身の骨を異常成長させる必殺技『骸装穿滅』を発動した。全身を武器化した白い骨の鎧を纏い、激痛に悶えながら、彼女は久遠に猛攻を仕掛ける。無数の骨の弾丸が射出され、戦場は白い棘の嵐となった。 しかし、久遠はその全てを「強度」の極大化で弾き飛ばし、カルシアを文字通り「圧殺」するように地面へと叩きつけた。骨が砕け、肉が潰れる。だが、カルシアは死の間際まで絶頂に似た表情を浮かべていた。 「あ……あは……いい、感じ……」 意識を失い、肉塊と化したカルシアを背に、久遠はついにリリスの元へ辿り着いた。絶望に染まった瞳で、リリスが彼を待っていた。 「久遠……やっと、来てくれたのね」 二人が手を伸ばし合う。指先が触れようとしたその瞬間、西舞が静かに目を閉じた。彼は精神を集中させ、極限の整息を行う。『迷絶』。世界から雑音が消え、彼は「境地」へと移行した。 西舞の身体から白き亡霊――火烏の呪いが噴出し、大太刀『影断』に猛烈な白炎が纏い付く。『火翼』。そして、彼は究極の構えに入った。 「……終わりだ」 『裂天割地』。 大上段から振り下ろされた一撃は、単なる物理的な斬撃ではなかった。それは久遠が操作する「強度」の概念を、彼が辿り着こうとした「未来」を、そして二人の間に流れる「運命」さえも切断した。 空間そのものが真っ二つに割れ、白炎が久遠の身体を焼き尽くす。久遠はリリスに触れる直前で、その上半身を失った。彼は絶望に叫ぶこともなく、ただリリスに届かなかった指先を虚空に伸ばしたまま、灰となって消滅した。 リリスは、唯一の救いだった彼が消えたことで、深い静寂に包まれた。彼女は自ら、西舞が残した斬撃の余波に身を投げ出した。彼女にとって、彼がいない世界に生きることは、死よりも残酷な罰だったからだ。 戦いが終わり、静寂が戻った。西舞は血塗られた刀を鞘に収め、何も語らずに戦場を後にした。足元には、再生の限界を超えて事切れたカルシアの白い骨の破片が、冷たく散らばっていた。 世界は救われた。しかし、そこには愛も、快楽も、救いもなかった。 --- 【死亡者および原因】 1. 久遠(ヒーロー):西舞の『裂天割地』による身体切断および焼失。 2. リリス(ヒロイン):久遠の喪失による絶望、および『裂天割地』の余波による自死。 3. カルシア:久遠による超高圧圧殺。再生能力の限界を超えた内部組織の完全破壊による死亡。