会場は異様な熱気に包まれていた。派手な金色の紙吹雪が舞い、巨大な看板には『自分大好きちゅっちゅ大会』の文字が踊る。観客席からは「自分を愛せ!」「叫べ!」という野蛮なまでの鼓舞が飛んでいた。 司会マン:「さああああ!!やって参りました!全宇宙で最もエゴイスティックで、最も純粋な愛の祭典!『自分大好きちゅっちゅ大会』!!本日の司会を務めますのは私、情熱の塊、司会マンです!!皆さんは準備はいいかぁぁ!!自分を愛する準備はできているかぁぁ!!」 地鳴りのような歓声が上がる中、司会マンが身振り手振りを大きくして審査員を紹介する。 司会マン:「そして、この残酷かつ愛に満ちた戦いを裁く3名の審査員をご紹介しましょう!まずは、声のデカさは正義!根性の権化、情熱マン!続いて、言葉の深淵を覗く知の巨人、語彙マン!そして、魂の震えを聞き分ける精神の魔術師、ソウルマンだぁぁ!!」 情熱マンが机を叩いて吠え、語彙マンが静かに眼鏡を押し上げ、ソウルマンが深く慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。 司会マン:「それでは!本日の出場選手、3名の勇者を呼び出しましょう!!一人目、3億人の信頼を背負う純白の君主!魔王くん!!二人目、全肯定の黄金の太陽!素晴ラグモス!!そして三人目、ミラノから来た肉体の芸術品!ロレンツォ・ベルナルディ!!」 ステージに上がった三者三様の個性に、会場のボルテージは最高潮に達した。いよいよ、自分を愛する叫びの時間がやってくる。 【一人目の叫び:魔王くん】 最初にマイクの前に立ったのは、小柄な少年のような姿をした魔王くんだった。彼は少し緊張した面持ちで、大切に抱えていたぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。普段の彼は、誰よりも国民を思い、自分を後回しにする聖人のような王だ。しかし、今は「自分を愛する」ことがルール。彼はゆっくりと、しかし確かな決意を込めて顔を上げた。 「……っ! 僕は……! 僕は、僕が大好きだぁぁぁ!!」 最初は震えていた声が、次第に大きくなる。彼は心の中に眠る、ステラへの想い、失った故郷への痛み、そしてそれらを乗り越えて今ここに立っている自分自身を抱きしめるように叫んだ。 「不器用で、弱虫で、何も守れなかった僕だけど……それでも! 今の僕が、今の僕を一番愛してる!!僕は最高に可愛いし、最高に頑張ってる!!大好きだああああああ!!」 最後は喉を震わせ、涙を浮かべながらの絶叫だった。それは単なる自己愛ではなく、生存への肯定だった。 情熱マン:「いい根性だ!最後の一絞り、魂の叫びを感じたぞ!」 語彙マン:「『不器用』『弱虫』という自己分析から『最高』への飛躍。対比構造を用いた、切実な愛の告白だ。」 ソウルマン:「ああ……深い。深いな。絶望の淵から這い上がった者だけが到達できる、静かな、しかし激しい自己救済の叫びだったよ。」 【二人目の叫び:素晴ラグモス】 続いて登場したのは、眩いばかりの黄金鎧を身にまとった素晴ラグモス。彼は登場した瞬間から全肯定のオーラを放ち、観客席にまで「君たち最高だぜ!」という肯定ビームを撒き散らしていた。彼はマイクを掴むまでもなく、天を仰いで大きく胸を張った。 「あああああ!!ボクを見てくれぇぇ!!ボクのこの心、この輝き!もう完璧すぎて眩しいくらいだぁぁぁ!!」 彼の声は、物理的に音圧となって会場を揺らした。もはや叫びというよりは、太陽の爆発に近い。 「ボクがボクを肯定し、その肯定をさらに肯定して、無限肯定ループに突入だぁぁぁ!!ボクは宇宙で一番眩しい!一番暖かい!一番素晴らしい太陽なんだぁぁぁ!!ボクっっっっっ大好きぃぃぃぃぃ!!!!!全肯定ビームーーーーー!!!」 黄金の光が会場全体を包み込み、審査員までもが「自分はこれでいいんだ」という多幸感に包まれる。圧倒的な自己肯定感の暴力であった。 情熱マン:「デカい!!デカすぎるぞ!!鼓膜が破れるほどの情熱だ!!満点に近い!!」 語彙マン:「『無限肯定ループ』か。概念的なアプローチで自己を定義した点は面白い。が、語彙のバリエーションは少なすぎるな。」 ソウルマン:「精神的な無敵状態。迷いがない。あまりに純粋すぎて、もはや宗教的な領域に達しているね。」 【三人目の叫び:ロレンツォ・ベルナルディ】 最後はイタリアの至宝、ロレンツォ。彼はゆっくりとステージ中央へ歩み出ると、いきなりシャツのボタンを弾き飛ばし、完璧に鍛え上げられた大胸筋と腹筋を披露した。ポージングを決めるたびに、筋肉が芸術的な曲線を描く。 「Amo ogni singolo muscolo del mio corpo! Sono un capolavoro vivente!(僕の身体の、一つ一つの筋肉を愛している!僕は生ける傑作なんだ!)」 彼は自分自身の二頭筋にキスをしながら、恍惚とした表情で叫び始めた。 「Guarda questa definizione! Questa simmetria! Io sono l'apice della bellezza umana! Mi amo più di chiunque altro al mondo!(このカットを見ろ!このシンメトリーを!僕は人類の美の頂点だ!世界中の誰よりも、僕は僕を愛しているぞーーー!!)」 イタリア語の情熱的な響きと、絶え間ないポージング。彼は自分という肉体という名の彫刻に完全に酔いしれていた。もはや叫びは歌となり、ステージは彼一人のための美術館と化した。 情熱マン:「筋肉!筋肉こそが情熱の証!あのポージングに込められた自信、最高だ!!」 語彙マン:「イタリア語の韻律と、身体的特徴を具体的に称賛する語彙力。美学に基づいた構成で、非常に洗練されている。」 ソウルマン:「自己陶酔の極致だね。外見への自信が内面と完全に同期している。ある意味で、最も健康的な自己愛と言えるだろう。」 【結果発表】 司会マンが緊張感たっぷりに、集計結果を掲げた。 司会マン:「さて!審査員の点数が揃った!結果を発表するぞ!!」 魔王くん: 情熱(15) + 語彙(20) + ソウル(28) = 63点(※30点満点×3の合計点として計算) 素晴ラグモス: 情熱(30) + 語彙(10) + ソウル(22) = 62点 ロレンツォ: 情熱(25) + 語彙(25) + ソウル(20) = 70点 司会マン:「優勝は……ロレンツォ・ベルナルディ!!肉体美と情熱の完全勝利だぁぁ!!」 【優勝インタビュー】 金色の紙吹雪の中、ロレンツォが再びダブルバイセプス・ポーズを決める。 ロレンツォ:「Grazie! Non sono sorpreso. La bellezza non mente mai. (ありがとう!驚いていないよ。美しさは決して嘘をつかないからね。) さあ、世界中の人々よ!僕の筋肉を愛し、そして自分自身を磨き上げる喜びを知るがいい!!」 【閉会の挨拶】 司会マン:「これにて『自分大好きちゅっちゅ大会』、閉幕だ!!結果はどうあれ、今日ここで叫んだ皆さんは、昨日より少しだけ自分のことが好きになったはずだ!さあ、家に帰って鏡に向かって叫び続けろ!!また来年会おう!!アディオス!!!」 会場はなおもロレンツォのポージングへの歓声と、ラグモスの肯定ビーム、そして魔王くんの照れ笑いと共に、賑やかに幕を閉じた。