【超法規的・全速力!一般道路5kmサバイバルレース】 ■開幕宣言と参加者紹介 都市の一角、全長5kmの一般道路。そこには異常な光景が広がっていた。道端には、隙間なく、文字通り「所狭し」と警察官たちが並んでいる。彼らはただの警官ではない。選び抜かれた精鋭中の精鋭であり、その肉体は鋼のように鍛え上げられ、視線は鋭い。彼らは互いに言葉を交わさない。なぜなら、日々の過酷な訓練で結ばれた彼らは、もはや「心の友」であり、呼吸一つで連携が完了する以心伝心の集団だったからである。 そして、その精鋭集団の頂点に立つ、対能力者専門部隊《ж》の二人。 「ふふっ、皆さん準備はいいですか? 交通ルールを守って、楽しく走りましょうね。……守れない方は、私が『お片付け』しますから」 黒髪に紺色のメッシュが鮮やかな女、愛羅が柔らかい口調で微笑む。背負ったギターケースの中には、因果律さえ捻じ曲げる魔弾の銃が忍んでいる。 「……あー、だるい。早く終わらせて家に帰って寝たい。適当に走って、捕まる奴は捕まって、さっさと解散しましょうよ」 白衣をだぼだぼに羽織り、丸眼鏡の奥で眠たげな目をしている女、ラフザが欠伸を噛み殺す。しかし、その指先には世界を縛り上げる不可視の細糸が準備されていた。 【実況・解説ブース】 お姉さん(実況):「はーい!皆様こんにちはー!!本日のレースはとにかく全力!ルールを守れば平和!破れば地獄!そんな刺激的な5kmレースが開幕しますよー!!テンション上げていきましょう!!」 おっさん(解説):「けっ、どいつもこいつも正気じゃねえな。ルールを守ってレースだあ? 冗談じゃねえ、どっちが先に警察にぶち込まれるか競う地獄絵図だろ! ガハハ!」 --- ■参加機体・エントリー詳細 ① KTCM-001 【機体】コンバットロード軍事帝国・量産型汎用人型兵器。130cmの美少女型機械体。性能は至って平凡。標準的な小銃CMFH-07Kを装備。 【意気込み】「……目標地点まで最短ルートで移動。効率的に完走します。……戦闘開始。」 ② シィルア 【機体】コンバットロード軍事帝国・イレギュラー機。旧世代の大太刀『镹遠零式』と小銃『笠』を装備。量産型でありながら戦況を支配する怪物。 【意気込み】「あはは♪ 私が狙われるのはいつものことだけど、まあいいや。せいぜい追いかけてみてよ!」 ③ ジェットファイア 【機体】サイバトロン星からの来訪者。SR-71ブラックバードに変形可能な巨大人型ロボット。老朽化しており、杖代わりのパーツを携行。 【意気込み】「ふん、地上のルールなど知らん! だが、この老いぼれの意地を見せてやろう。……ミサイルが変な方向に飛ばなければいいがな」 ④ とてもすごくて森羅万象なレッカー車!!!! 【機体】見た目は普通の中型レッカー車(白地に水色のライン)。動力・防御・牽引すべてが「森羅万象」レベルの超常的な性能を誇る。運転手Aが操縦。 【意気込み】(運転手A)「どうぞよろしくお願いいたします。安全運転で、森羅万象を牽引しながらゴールまで向かわせていただきますね」 --- ■レース本編:混沌の5kmロード 「レディー……ゴーッ!!!」 お姉さんの絶叫と共に、号笛が鳴り響いた。瞬間、静寂だった一般道路は爆音と衝撃に包まれる。 先陣を切ったのは、さすがの加速力を見せるシィルアと、単純な出力で押し切ろうとするKTCM-001。そして、爆音と共に黒い影となって飛び出したジェットファイア。しかし、彼らの後方からは、のっそりと、しかし確実に「空間ごと」進んでいるかのような速度で森羅万象レッカー車がついてくる。 「おっと! 早々に違反者が! ジェットファイア選手、ロボットモードのまま一般道を快走! これは立派な道路交通法違反です!!」 「ガハハ! 当たり前だ! あのデカさで走れば道路が砕けるわ! 警察の出番だぜ!!」 道端に並んでいた精鋭警察たちが、一斉に動き出した。彼らは言葉を交わさず、完璧な連携でジェットファイアを包囲する。身体能力の限界を超えた跳躍で、屋根から屋根へ飛び移り、網を投げ、警棒を振るう。その動きはまるで一つの生き物のようだった。 「ぬおお! 小癪な! どけ、どけえい!」 ジェットファイアが苛立ち、腕のミサイルを斉射した。しかし、老朽化していたミサイルは、あろうことか真横のコンビニの看板に向かって曲がっていく。その隙を、警察官たちが逃さない。 「あらあら、危ないですよ」 ふわりと空中に舞い上がったのは愛羅だ。彼女はギターケースから超精密銃を抜き放つ。 【魔弾:能力封じ】 放たれた弾丸がジェットファイアの足元で弾け、不可視の結界が展開された。瞬間、ジェットファイアの電子回路にノイズが走り、一時的に変形機能とブースターが停止する。 「な、なにっ!? 体が動か……!」 「はい、捕獲チャンスです」 愛羅が微笑むと同時に、後方から白衣の女、ラフザが死神のような速度で接近していた。指先から放たれた不可視の糸が、巨大な金属生命体の関節を瞬時に、そして完璧に縛り上げる。 【瞬九流捕縛術壱式:無能無肢】 「……ふぅ。デカすぎて糸をたくさん使った。疲れた。帰りたい」 ジェットファイアは、もはや巨大な金属の繭となって、精鋭警察たちにズルズルと道端へ運ばれていった。 一方、前方を走るKTCM-001とシィルアは、一般車の間を縫うように走行していた。KTCM-001は完璧な計算に基づき、信号が赤になる0.1秒前にブレーキをかけ、交通ルールを遵守して走行している。対してシィルアは、面白半分に車道ではなく「歩道」を全力疾走し、歩行者を驚かせていた。 「あはは! こっちの方が早いよー!」 「あー! シィルア選手、歩行者天国じゃないですよ! 大違反です!!」 お姉さんの絶叫が響く。同時に、前方に待機していた警察官たちが、一斉にシィルアに飛びかかった。彼らは人間とは思えない跳躍力で彼女を押し潰そうとするが、シィルアは軽く大太刀『镹遠零式』の柄で彼らを弾き飛ばす。 「あはは、いい運動になるね!」 だが、そこへ冷徹な狙撃音が響いた。愛羅の銃弾が、シィルアの足元の地面を貫いた。 【魔弾:絶対命中】 この弾は、命中することが「確定」している。シィルアがどれほど回避行動をとろうとも、因果律が逆転し、弾丸は彼女の逃げ道を完全に塞ぐ位置に「既に着弾していた」。 「あれ……? 今のは……」 シィルアが足を止めた瞬間、上空から巨大な法陣が展開される。ラフザが指を鳴らしたのだ。 【瞬九流捕縛術弐式:識絶之陣】 半径3kmにおよぶ意識断絶の陣。シィルアの高度な戦闘知能が、一瞬だけ「真っ白」に塗りつぶされる。そのわずかな隙に、精鋭警察たちが一斉にダイブし、彼女を文字通り人力の山で押し潰して拘束した。 「ふふっ、お疲れ様でした」 愛羅が柔らかく笑う。シィルアはもがいていたが、ラフザの糸が彼女の四肢を完全に固定し、身動きひとつできなくなった。 最後に残ったのは、KTCM-001と森羅万象レッカー車。 KTCM-001は淡々と、しかし着実に信号を守って前進していた。一方のレッカー車は、なぜか後方に「捕縛されたジェットファイア」と「シィルア」を牽引して走っていた。しかも、道路の車線を無視して、森羅万象の力で「空間を滑るように」移動している。 「あーっ!! レッカー車選手!! 牽引してるのはいいですが、車線逸脱しています!! それにそもそも、警察が捕まえた人を勝手に牽引して運ぶなー!!」 「ガハハ! 警察が捕まえても、レッカー車が持っていけば正解だろ!!」 運転手Aは丁寧に微笑んでいた。「すみません、ついつい効率的に運ぼうと思いまして」 警察たちが激怒してレッカー車に飛びかかるが、車体の防御力は「森羅万象」。警棒で叩こうが、催涙ガスを浴びせようが、傷ひとつ付かない。それどころか、警察官たちが車体にぶつかると、そのまま「森羅万象の反動」で後方に弾き飛ばされていく。 「……目標地点まで、残り100m。速度を維持します」 KTCM-001が、完璧なルール遵守走行でゴールラインを突破した。 その直後、森羅万象レッカー車が、捕虜(?)を大量にぶら下げたまま、音もなくゴールラインを跨いだ。 --- ■レース終了後:結末と順位 ゴール地点では、疲れ果てた警察官たちと、満足げな愛羅、そして地面に転がって寝ているラフザの姿があった。 【最終結果】 1位:KTCM-001 【結末】逃走成功(完走) 【感想】「……ルールを遵守した結果、勝利しました。当機の計算通りです。」 2位:とてもすごくて森羅万象なレッカー車!!!! 【結末】逃走成功(完走) 【感想】(運転手A)「皆様をまとめて運ぶことができ、大変光栄でした。またのご利用をお待ちしております」 圏外(捕縛):シィルア 【結末】捕縛 【感想】「あはは! まさかあんな変な糸で縛られるなんてね。次はもっと派手に暴れるよ♪」 圏外(捕縛):ジェットファイア 【結末】捕縛 【感想】「くっ……! ミサイルが曲がったのが運の尽きだ……! 次回は整備してから挑んでやる!!」 【総評】 お姉さん:「いやー! 最高にカオスなレースでしたね!! 結局、真面目に走った子が勝ち、最強の車が全部持っていき、最強の能力者たちが捕まるという、なんとも不思議な結末に!!」 おっさん:「ま、警察の連携だけは本物だったな。あの《ж》の二人がいなきゃ、今頃街が半分消えてたぜ。ガハハ!」 愛羅は静かにギターケースを閉じ、ラフザは白衣に顔を埋めて深い眠りに落ちた。こうして、5kmの一般道路を舞台にした、法と混沌のレースは幕を閉じたのである。