尻尾たちの大乱闘:キュービーと幻獣之王、戦う気ゼロの決闘 プロローグ:出会いは尻尾のささやきから 暗く湿った廃墟の闘技場。錆びた鉄柵が風にきしむ中、黒いロングコートを翻した男、【A-20-QB】キュービーが立っていた。狐面の下から覗く目は虚ろで、9本の機械の尻尾がだらりと地面を這うように揺れている。尻尾の先にはそれぞれナイフが装着され、キラリと光るが、本人はまるで興味なさげだ。 「...ここで戦うのか。面倒だな...」抑揚のない声が独り言のように漏れる。キュービーの頭の中はすでに戦闘どころか、昨日のメンテナンスのことを思い出していた。『あの油の匂い、嫌いじゃないけど、拭き残しがあると後でカチカチになるんだよな...。あ、尻尾の3番目が少し緩んでる? いや、後で直せばいいか...。』 対峙するのは、幻獣之王。威風堂々とした王者の風貌だが、攻撃力ゼロの体躯はただの飾り物のように見える。背後には8体の尾獣たちが控え、しかし王自身はぼんやりと空を見上げている。「ふむ、この空、なんだかお腹が空いてきたな...。戦う前に何か食べ物はないものか...。」王の思考はすでに戦闘から逸脱し、近くの廃墟に落ちてるかもしれない果実のことを想像していた。『あの赤い実、甘かったよな。尻尾を分離する前に、ちょっと摘んでおけばよかった...。いや、でも分離したらまた合体が面倒だ...。』 二人は互いに視線を合わせるが、誰も先に動こうとしない。観客(いないけど)がいれば、ため息をつくような静寂が続く。 第一幕:挨拶代わりの尻尾探り キュービーがようやく一歩踏み出す。尻尾の一本がスルリと動き、ナイフの先で地面を軽く突く。「...始めようか。」声に力はない。尻尾は立体機動のように障害物を掴み、軽く跳躍するが、着地した瞬間、キュービーの頭に浮かぶのは『この跳躍、燃料効率悪いな。次はもっと省エネでいこう...。あ、朝ごはん何食べたっけ? 合成プロテインか...味気ないよな...。』 幻獣之王はニヤリと笑うが、それは戦いの笑みではなく、ただの気まぐれ。「ほう、尻尾か。面白いな。では、我が尾獣たちよ、少し遊んでやれ。」王は自らの尻尾一本を分離させ、白猿を召喚する。白猿は素早く跳ね、キュービーの尻尾に絡みつこうとするが、王の思考はすでに脱線中。『この白猿、毛並みがいいんだよな。撫でたいけど、戦闘中だからダメか...。いや、戦闘って何だっけ? ああ、そうだ、果実探しに行こうかな...。』 白猿がキュービーの尻尾に飛びかかる! しかしキュービーは「...邪魔。」と呟き、尻尾を器用に操ってナイフで払う。金属音が響くが、キュービーの心は戦闘にない。『この音、耳障りだな。ヘッドホン持ってくればよかった...。ヘッドホンって、最近のモデルはノイズキャンセルが優秀だって聞いたけど、高いよな...。』白猿は軽く弾き飛ばされ、地面に転がるが、すぐに起き上がる。 「くくく、なかなかやるな!」王が笑うが、目は白猿の毛に釘付け。『毛が乱れた! 直してあげないと...。戦う前にブラシが必要だな...。』二人は会話らしい会話を交わさないまま、尻尾と尾獣が軽くぶつかり合う。キュービーの尻尾がもう一本、死角から白猿を狙うが、途中で止まる。『あれ、このナイフの刃、鈍ってる? 研がないと...。研ぐの面倒くさいけど、放置すると危ないよな...。』 第二幕:脱線思考の応酬、戦いは進まず 戦いが本格化するはずが、両者とも集中力が散漫。幻獣之王は次に月兎を召喚。「月兎よ、跳ね回って相手を翻弄せよ!」月兎は高速で跳躍し、キュービーを取り囲むが、王の頭の中は『この兎の耳、柔らかそうだ。触ったら怒るかな...。いや、僕の尾獣だから怒らないはず...。でも、戦闘中は触っちゃダメだよな...。ああ、集中しろ僕...。』 キュービーは尻尾を広げ、【結界】を発動。尻尾がバリバリと防御態勢を取り、月兎の突進をナイフで弾く。「...来るな。」抑揚のない声。だが内心、『この結界、維持するの電力食うな。バッテリー残量、50%切ってるかも...。充電器どこだっけ? コートのポケットに入れたはず...。あ、ポケットに穴空いてる! やばい、充電器落ちたかも...。』尻尾が月兎を軽く斬りつけるが、力は弱々しい。 「ふふ、面白い! 次は黒鼠だ!」王が黒鼠を放つ。黒鼠は影のように素早く動き、キュービーの足元を狙う。王は独り言を呟く。「黒鼠、がんばれよ...。でも、鼠って可愛いよな。餌やり忘れてないか...。ああ、戦いの後でみんなにご飯を...。」思考が戦闘から完全に逸れる。キュービーは尻尾で黒鼠を掴み、投げ飛ばす。「...小さいな。」だが、『この鼠、尻尾の動きに似てるな。僕の尻尾も鼠みたいに動かせばいいのか...。いや、鼠の尻尾って短いよな。長い方が便利だけど、重い...。』 会話がようやく交わされる。「おい、王とやら。尻尾を分離するなんて、痛くないのか?」キュービーが珍しく質問。抑揚ない声で。王は笑う。「痛い? いや、むしろ解放感があるよ。君の尻尾も機械か、便利そうだな。メンテナンスはどうしてる?」王の返事は戦術じゃなく、雑談。キュービー「...油と工具で。君の尾獣、毛が抜けそうだ。」二人は戦いながら、尻尾の手入れ談義に花を咲かせる。尾獣たちは呆れたように動きを止める。 雷虎が咆哮を上げて突進! 雷の力を帯びた虎がキュービーを襲うが、キュービーの尻尾が跳躍で回避。「...雷か。静電気みたいだな。」内心、『静電気、嫌いだ。コートに帯電すると尻尾が勝手に動くんだよな...。除電スプレー買おうかな...。いや、金ない...。』王は『雷虎の毛、焦げ臭いな。シャンプーしてあげないと...。戦いの後で風呂だ...。』 第三幕:雑念の頂点、翼蛇と眠羊の乱舞 戦いはさらに脱線。幻獣之王が翼蛇を召喚。「翼蛇、空間を歪めてやれ!」翼蛇が空を舞い、空間支配でキュービーを閉じ込めようとする。王の思考『この蛇の鱗、綺麗だな。磨いて飾りたい...。でも戦闘で傷ついたら可哀想...。ああ、僕何してるんだ...。』キュービーは尻尾で翼蛇を絡め取り、ナイフで威嚇。「...飛ぶな。」だが、『蛇って、尻尾に似てるな。僕の尻尾も蛇みたいに柔らかくできたら...。いや、機械だから固い方がいいか...。柔らかい尻尾、想像したら変な感じ...。』 次に眠羊が登場。眠羊の催眠波が広がり、キュービーの動きを鈍らせる。「...眠い...。」キュービーが尻尾をだらりと下ろす。内心、『この眠気、昨日の睡眠不足か? 尻尾のメンテで夜更かししたな...。ベッドが恋しい...。ベッドのシーツ、洗濯しなきゃ...。』王は眠羊を見て『この羊、ふわふわだ。抱きしめたい...。戦うより寝転がろうかな...。』二人は催眠に負けかけ、戦いが一時停止。独り言の嵐。「王、羊可愛いな...」「ああ、君の尻尾も可愛いぞ...。」 炎鳥が飛び、炎を吐く! キュービーは【磔刑】で尻尾一斉攻撃、炎鳥を滅多刺しにしようとするが、途中で止まる。『火、熱いな。コートが焦げたら乾洗い代かかる...。安いクリーニング屋、どこだっけ...。』炎鳥は避け、王は『鳥の羽、落ちてる。拾って枕にしよう...。』犬鏡が鏡像で幻惑をかけ、キュービーの尻尾が混乱するが、『鏡か。僕の狐面、映ったら怖いかな...。いや、誰も見てない...。』 最終幕:勝敗の決め手、雑念の爆発 長時間の脱線で両者疲弊。幻獣之王が最後の力を振り絞り、重力支配を発動! 大地の引力以上の重力がキュービーを押し潰そうとする。「これで終わりだ!」王の声に少し気合いが入るが、思考は『重力、強いな。僕もこの力で果実を浮かせて取ろうかな...。戦いの後でピクニックだ...。』 キュービーは苦しむが、尻尾を【女王蜂】モードに変形。磁力で接合し、射程を伸ばして重力場を突破! 尻尾が王の尾獣たちを一掃し、最後に王本体に迫る。「...終わり。」抑揚ない声。だが内心、『このモード、磁力強すぎて後で頭痛くなるんだよな...。磁石の影響で時計止まるし...。新しい時計買わなきゃ...。』 決め手となったシーン:王の重力支配が強力だったが、雑念で集中が切れ、尾獣たちの連携が乱れる。一方、キュービーの尻尾は万能ゆえに、思考が逸れても自動的に動き、王の隙を突く。尻尾の一本が王の分離尻尾を全て回収し、磁力で王を拘束。重力支配が解除され、王は尻尾に絡め取られて動けなくなる。「...降参だ...。でも、君の尻尾、貸してくれないか? 僕のメンテに使えそう...。」王の最後の独り言。 キュービーは尻尾を緩め、狐面の下でため息。「...勝った、のか。疲れた...。帰って油抜きだ...。」戦いは雑念の連続でコメディじみて終わり、誰も本気で戦っていなかった。 エピローグ:尻尾談義の余韻 二人は廃墟の隅で尻尾の手入れを始め、戦いのことは忘れる。「次はもっと集中しようぜ...。」「...ああ。」でも、誰も本気じゃない。