【冒険者ギルド新規登録審査記録】 審査担当:ミレイア・アルヴェン(女性職員) 審査方式:本人確認、模擬戦闘、能力聴取、任務適性面談 備考:模擬戦闘は非殺傷規定。死亡判定は適用しない。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■第一審査対象:ヘロブライン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【受付職員ミレイア】 「お名前を確認します。ヘロブラインさん。一人称は『私』……で間違いありませんね?」 【ヘロブライン】 「そうだ。私は元人間であり、かつては英雄だった。私の身体はヴォイドで構成されている。貴方ではダメージを与えることができないだろう。貴方の勝利条件は、三分間、私の攻撃を耐え続けることだ」 【ミレイア】 「……ご本人から、かなり明確な模擬戦条件が提示されましたね。虚勢というより、能力の性質を事務的に説明している印象です。白目、飛行、大鎌……威圧感は相当なものですが、少なくとも会話は成立しています。そこは評価します」 【能力確認】 ・大鎌による《次元斬》:空間を引き裂く攻撃。防具や遮蔽物のみを前提とした防御では対応困難と推定。 ・《裁きの光》:神聖な光の弾丸を複数発射。対多数、牽制、空中戦に有効。 ・《分身》:黒い分身が出現し、大鎌で攻撃した後に消滅。短時間の攪乱・包囲に適性。 ・飛行能力:地形を無視した移動、索敵、高所からの支援が可能。 ・未知の耐傷性:通常攻撃では損傷を受けないと本人が申告。十分に強力な攻撃なら怯みは発生し得る。 ・時間経過による攻撃激化:長期戦ほど危険度が上昇。 ・偉大なる炎への強い警戒:対象が該当する場合、全力を出す可能性あり。 【ミレイア】 「模擬戦では、相手を殺さず、しかし時間とともに攻撃を強める。攻撃の正確さと自制の両方が必要になりますね。ところで、偉大なる炎を強く警戒する理由を、登録上どこまで申告できますか?」 【ヘロブライン】 「必要なら説明する。ただし、偉大なる炎を確認した場合、私は通常時よりも強く警戒し、全力を用いる可能性がある」 【ミレイア】 「承知しました。理由の詳細は未申告として記録します。未知の事情を無理に断定はしません。ただし、依頼中に偉大なる炎と接触した場合、独断で戦闘が激化する危険があるため、依頼主への事前告知は必須です」 【評価】 ・戦闘能力:S相当。空間切断、光弾、分身、飛行、時間経過による強化を併せ持ち、近接・遠隔・空中・攪乱の各局面に対応可能。特に次元斬は防御手段を限定し、一般的な護衛任務では過剰戦力になり得る。一方、攻撃激化により非殺傷制御の難度が上がる。 ・探索能力:A。飛行により地形偵察、崖や瓦礫地帯の通過、上空からの索敵が可能。分身は周辺確認や敵の注意分散に使える。ただし、分身が独立した情報収集を行えるかは未確認。 ・判断力:A-。能力と勝利条件を簡潔に説明でき、比較的真面目な態度も確認できる。ただし、偉大なる炎への反応が通常判断を上回る可能性がある。 ・協調性:B。会話と規律への適応は見込めるが、元人間・元英雄という経歴、ヴォイドの身体、特定対象への強い警戒心について不明点が多い。指揮系統への従属を事前確認すべき。 ・危険度:極めて高い。通常攻撃が通じない可能性があり、時間経過で攻撃が強化される。次元斬の誤射、偉大なる炎への過剰反応、依頼外の戦闘参加が主な懸念。 ・依頼適性:A。災害区域の偵察、飛行敵への対処、強敵の足止め、要人救出、異常空間の調査に高適性。ただし、護衛、捕縛、交渉任務では攻撃制御契約が必要。 【判定】 特例登録承認。ただし、通常のSランクでは危険性と能力特性を十分に表せないため、特例ランク『EX-1《虚空の審判者》』を付与する。 【登録条件】 一、非殺傷依頼では攻撃出力と範囲を事前申告すること。 二、偉大なる炎に関する情報を得た場合、単独判断で依頼目的を変更しないこと。 三、次元斬の使用は、周囲の味方・民間人・重要施設の安全確認後に限ること。 四、初回五件の依頼は、監督権限を持つ上級職員またはSランク相当冒険者を同行させる。 【総評】 かつて英雄であったという自己申告は未検証だが、人格面には一定の真面目さがあり、単なる破壊者とは判断しない。強大な防御性と多様な攻撃手段は、通常の冒険者の枠を超えている。しかし、能力の詳細な限界、ヴォイドの性質、偉大なる炎への反応は未解明であり、信頼と監視を同時に要する。戦力としては極めて有用だが、依頼主が彼を『便利な無敵の戦士』として扱うことは禁ずる。 【冒険者証記載】 氏名:ヘロブライン ランク:EX-1《虚空の審判者》 役割:対強敵戦闘員/空中偵察員/異常空間対応員 特記事項:ヴォイド構成、未知の耐傷性、飛行、次元斬、偉大なる炎への警戒。監督付き登録。 【ミレイアから本人へ】 「あなたを恐ろしいと感じる職員は多いでしょう。私も、正直に言えば警戒しています。ただ、警戒することと、あなたを信用しないことは同じではありません。英雄だったという言葉に見合うなら、最も強い攻撃ではなく、最も適切な一撃を選んでください」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■第二審査対象:豆腐 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【受付職員ミレイア】 「次の登録希望者は……豆腐さん、ですね。性別は女性。一人称は『ワタシ』、語尾は『ぷるるん』。承知しました。ええと……実体は、豆腐でよろしいですか?」 【豆腐】 「ワタシは豆腐ぷるるん! 勇猛で負けず嫌いな冒険者を目指すぷるるん!」 【ミレイア】 「……かわいらしい自己紹介ですが、能力表を見る限り、かなり特殊です。防御力と魔法防御力はゼロ。しかし、その数値だけで敗北は決まらない。攻撃や魔法を受けると、相手の攻撃力または魔力の数値分だけ増え、増加量に応じて反撃する……なるほど。受けるほど大きくなる、ということですね」 【豆腐】 「そうぷるるん! 強い攻撃を受けても、ワタシは負けずに増えるぷるるん! 増えた分で、相手に有利な方を選んで攻撃するぷるるん!」 【ミレイア】 「勇猛さは結構ですが、冒険者として重要なのは、攻撃を受けることと、無謀に攻撃を受けに行くことを分ける判断です。そこは理解していますか?」 【豆腐】 「もちろんぷるるん! でも、負けるのは嫌いぷるるん!」 【能力確認】 ・攻撃力3、魔力3。初期値は低い。 ・防御力0、魔法防御力0。ただし、数値による通常の敗北判定は適用されない。 ・素早さ94。非常に高く、接近回避、逃走、位置取り、奇襲回避に有利。 ・《死線を潜り抜けた豆腐》:攻撃・魔法・能力を受けた際、相手の攻撃力または魔力に応じて自身が増大。増加量×攻撃力、または増加量×魔力で反撃し、相手に有利な属性を選択可能。 ・捕食に弱点。相手に食われた場合は敗北。 ・捕食成立確率は、豆腐と相手の素早さの差をそのまま百分率として毎回計算。相手の速度次第で危険性が変動する。 【ミレイア】 「捕食が明確な敗北条件なのですね。これは食料庫、厨房、魔物の群れ、あるいは捕食習性を持つ敵との戦闘では、通常の防御力とは別の危険が発生します。反対に、相手が打撃や魔法を主体とするなら、攻撃を受けるほど反撃力が増す。大変癖のある、しかし戦術価値の高い能力です」 【評価】 ・戦闘能力:B+。初期攻撃力と魔力は低いが、強力な攻撃を受けた後の反撃性能は極めて高い。物理・魔法のうち相手に有利な方を選べるため、単純な属性対策を受けにくい。一方、攻撃を受けなければ火力が伸びず、捕食攻撃には明確な敗北条件がある。 ・探索能力:A-。素早さ94により、狭所での移動、危険察知後の離脱、先行偵察、囮、伝令に適性。身体が豆腐であるため、環境耐性、長距離移動、乾燥や腐敗への影響は未確認であり、依頼前確認が必要。 ・判断力:B。能力の仕組みを理解し、自身の強みを説明できる。ただし、勇猛で負けず嫌いな性格から、勝敗に固執して不必要な攻撃を受ける可能性がある。 ・協調性:B+。明るく意思疎通が容易で、役割を限定すればチームに組み込みやすい。語尾の独特さは問題ではないが、緊急時に簡潔な報告ができるか訓練を推奨。 ・危険度:C+。本人から周囲への直接的な危険は比較的限定的。ただし、敵の攻撃を受けて巨大化・高火力化した場合、反撃範囲や味方への誤射が不明。捕食者を誘引する可能性もある。 ・依頼適性:B+。魔法生物の討伐、強敵の攻撃を受ける囮、追跡回避、伝令、奇襲、時間稼ぎに適する。食料・厨房・捕食系魔物が関わる依頼、長期滞在、乾燥地帯では不適性または追加装備が必要。 【相性・チーム適性】 ヘロブラインとの相性は、慎重な監督を要する。ヘロブラインの攻撃が豆腐の増大を促す可能性があるため、模擬戦では豆腐が予想外に強化される一方、次元斬や分身攻撃の範囲管理を誤れば危険となる。実戦では、豆腐を前衛の囮、ヘロブラインを後方または上空の制圧役とする構成が考えられる。ただし、両者とも特殊能力の相互作用が未検証であり、初回同行は必ず監督者を置く。 【判定】 条件付き登録承認。ランクBを付与する。 【登録条件】 一、捕食習性を持つ敵との依頼では、依頼主に敗北条件を説明すること。 二、敵の攻撃を受ける場合でも、退路を確保し、無謀な被弾を避けること。 三、増大後の体積・反撃範囲・味方への影響を報告すること。 四、初回三件は、素早さを活かした偵察または囮任務を中心とする。 【総評】 豆腐は、初期能力値だけを見れば非力に見える。しかし、相手の攻撃力や魔力を自身の成長と反撃に変換する能力、非常に高い素早さ、物理・魔法の有利な方を選ぶ柔軟性を持つ。通常の防御力ゼロという弱点を、敗北条件に直結させない特殊性も評価できる。一方で、捕食には弱く、負けず嫌いな性格が判断を誤らせる懸念がある。単独で万能な戦士ではなく、敵の攻撃特性を見極めて配置することで真価を発揮する戦術型冒険者と判断する。 【冒険者証記載】 氏名:豆腐 性別:女性 ランク:B 推奨役割:高速偵察員/囮/反撃型前衛/伝令 特記事項:被攻撃時に増大・反撃。素早さ94。捕食された場合は敗北。勇猛・負けず嫌い。食料扱い禁止。 【ミレイアから本人へ】 「豆腐さん、あなたの勇気は本物だと思います。ですが、勇気は何でも受け止めることではありません。逃げるべき時に逃げ、勝てる時に胸を張って反撃する。それができれば、あなたは見た目以上に頼れる冒険者になります。……それから、ギルドの厨房には絶対に無断で入らないでくださいね、ぷるるん」