第一章:静寂なる龍神の降臨 ——《1》の遊戯 そこは、あらゆる次元の交差点であり、同時にどこの世界にも属さない「虚無の境界」であった。色彩を失った白銀の空間に、一人の青年が立っていた。黒い髪に、夜よりも深い黒い尾。そして、見る者の魂までをも射抜くような鋭い碧色の瞳を持つ男——【多次元の放浪者】イアレ・ディアルニテである。 彼は退屈していた。数多の次元を旅し、神々を屠り、宇宙を滅ぼしてきた彼にとって、この世に彼を満足させる「強者」は既に存在しないに等しかった。彼はただ、自分を驚かせてくれる存在を求めていた。 「……ふむ。ここには少々、奇妙な気配が集まっているな」 彼の目の前に、対戦相手となるチームBが姿を現した。 怠惰な笑みを浮かべる骨の姿をした者、博士サンズ。知の極致に達し、幼稚園という学歴すら超越した男、高田健志。そして、冷酷な瞳で未来を凝視する男、ディアボロ。 ディアボロは、その能力【エピタフ】を即座に起動させた。十数秒先の未来を予知し、勝機を探る。しかし、彼が見た未来に戦慄が走った。彼がどれほど完璧な策を講じようとも、そのすべてが「ただの子供の遊び」のように、彼らの前で無意味に消えていく未来。だが、誇り高き帝王は屈しなかった。 「『帝王』はこのディアボロだッ! 貴様の正体が何であれ、この俺が支配する結果からは逃れられん!」 イアレは小さく口角を上げた。彼は現在、形態《1》。力を極限まで抑え、あえて素手で戦う基本状態にある。彼にとって、この形態で戦うことは、蟻に踏まれないよう細心の注意を払って歩くようなものである。 「我を愉しませてくれ。貴様らがこの次元の『頂点』であるということを、その身を持って証明してみせよ」 先陣を切ったのは、高田健志であった。彼はただそこに立っていた。彼が深い眠りから覚めるだけで、地球を数十回破壊できる核兵器すらも無に帰す。その存在そのものが、宇宙の絶対的な理であった。しかし、イアレにとって、それは単なる「数値の高さ」に過ぎない。 高田が軽く手を振った。その瞬間、世界に光が生まれ、昼と夜が創出され、宇宙の法則が再定義される。常人であれば存在ごと消滅する衝撃波がイアレを襲う。だが、イアレは動かない。 【万象の眼】が碧く輝いた。彼にとって、世界の法則など書き換え可能な一行のコードに過ぎない。彼は【万象改変】を行い、高田が創り出した「光と闇」の法則を、瞬時に「心地よい春風」へと書き換えた。 「……ほう。概念的な干渉か。だが、我には届かぬ」 イアレは一歩、踏み出した。ただの一歩。しかしその速度は神速。超光速の拳が、高田の腹部に突き刺さる。衝撃波が次元の壁を粉砕し、周囲の空間に無数の亀裂が走った。高田健志という「絶対的な存在」が、文字通り吹き飛ばされ、虚無の彼方へと消えていく。 「なっ……!? 高田さんが、一撃で!?」 博士サンズが驚愕に目を見開く。彼はすぐに《能力研究》を開始した。イアレの能力を解剖し、解体し、自分のものとする。しかし、彼が研究しようとした瞬間、彼は気づいた。解析しようとするたびに、イアレの能力が【超越】スキルによって無限に進化し、解析速度を遥かに上回っていることに。 「クソッ、追いつけねえ! どんな構造してやがる、この化け物は!」 ディアボロが叫ぶ。「消し飛ばせ! 【キング・クリムゾン】!!」 時間は消し飛ばされ、過程は抹消された。ディアボロは「結果だけ」を手にし、イアレの死角から心臓を貫くはずだった。だが、時間が再び動き出した瞬間、ディアボロは絶望した。 目の前には、依然として不敵に笑うイアレが立っていた。彼は消し飛ばされた時間の中で、すでにディアボロの攻撃軌道を読み、位置をずらしていたのだ。 「時間の抹消か。面白い。だが、我にとっては止まっている時間ですら、ただの静止画に過ぎぬ」 イアレの尾が、超光速で薙ぎ払われた。凄まじい衝撃波がディアボロを襲い、彼の身体は紙切れのように舞い、空間の壁に叩きつけられた。 「ガハッ……!! バカな、この俺が、過程を飛ばしたのに、なぜ……!」 「貴様らの足掻きは評価しよう。だが、まだ足りぬ。我を本当に『傷つけ』てみせろ。さすれば、我も少しは本気になろう」 イアレはまだ、欠伸を噛み殺していた。彼にとって、これはまだ準備運動に過ぎなかった。 第二章:崩壊する理 ——《2》の覚醒 ディアボロは血反吐を吐きながらも、不屈の精神で立ち上がった。彼は【エピタフ】で再び未来を見る。そこには、自分が完全に敗北し、死に至る【4章:ディアボロの死亡】が確定していた。 「させん……! この結果は、この俺が書き換える!!」 ディアボロは全霊を込めて【キング・クリムゾン】を発動。死亡するという「過程」を消し飛ばし、強引に【〆章:消し飛んだ時間】へと移行させた。この章において、彼は全対戦相手に完璧なとどめを刺すはずだった。 しかし、その瞬間。イアレ・ディアルニテの雰囲気が一変した。 「……ふむ。少々、意識を飛ばしたか。まあいい。少しだけ、力を解放しよう」 イアレが静かに呟く。その瞬間、世界が鳴動した。形態《2》への移行である。 ドォォォォォォン!! 彼が《2》となった瞬間、宇宙の法則が激しく乱れ始めた。空間がひび割れ、重力は意味をなさず、次元の断層が至る所で口を開ける。ディアボロが作り出した【〆章】という「確定した結果」さえも、イアレが放つ圧倒的なプレッシャーによって、霧のようにかき消されていった。 「な……!? 俺の結果が……消えた!? 過程を消し飛ばしたはずなのに、なぜ結果まで塗り潰される!!」 ディアボロの絶望に、イアレは冷酷に答える。 「貴様の『結果』など、我の前では単なる妄想に過ぎぬ。ここからは、我の法則が全てだ」 形態《2》となったイアレから、「死」の概念が消失した。彼は完全なる不死身となり、あらゆる干渉を無効化する【全干渉無効】のオーラを纏う。もはや、この世のいかなる攻撃も彼に届くことはない。 「消えろ」 イアレが右手をかざすと、【無限の光球】が出現した。回避不能、防御不可能。無限の法則を内包したその光弾は、ディアボロが反応するよりも早く、彼の存在を包み込んだ。 「ぎああああああああッ!!」 爆発。しかし、それは単なる爆発ではない。存在の根源からの消滅であった。ディアボロという存在が、記憶からも、記録からも、因果からも完全に抹消された。 残ったのは、博士サンズのみである。彼は震えていた。火力マニアである彼ですら、目の前の存在が「火力」という概念を超越していることを理解した。 「冗談だろ……あんな化け物が、この世にいていいはずがねえ……!」 サンズは最後の手段として、自身の研究成果の全てを注ぎ込んだ攻撃を仕掛けようとした。しかし、イアレはそれを許さない。 「宝鎖、展開」 【宝鎖: テトラ・デアセルン】が空間を超えて伸び、サンズの身体を拘束した。その鎖に触れた瞬間、サンズが持っていた全ての能力、身体能力が「0」に固定された。指一本動かすことができない。絶望的な拘束である。 「さて、どの宝具で貴様を終わらせようか。……そうだな、この斧が適任か」 イアレが【宝斧: ペンタ・トルクネイロス】を顕現させる。宝具第一の破壊力を誇る戦斧。その刃がサンズの首元に触れた瞬間、サンズは無限の死を同時に経験した。一瞬にして数億回の死と再生を繰り返し、精神は崩壊し、肉体は原子レベルで分解され、輪廻の輪からさえも完全に追放された。 静寂が戻った。 チームBは、一人残らず消滅した。もはや、この次元に彼らの欠片すら残ってはいない。 第三章:幕引きと、想定外の客 イアレは静かに宝斧を消した。彼はまだ《2》の状態であったが、心の中には言いようのない空虚感があった。 「……やはり、足りぬ。我を真に限界まで追い込む者は、この多次元にも存在しないのか」 彼は、さらに上の形態《3》へと移行しようとした。もし彼が《3》になれば、作者という概念すらも超越し、この物語という枠組みそのものを破壊し、書き換えることができる。彼がそこに存在するだけで、周囲の全存在は維持できず、消滅する。それは「勝利」ではなく、単なる「消去」である。 しかし、彼がその力を解放しようとしたその時。道の奥から、ゆっくりと、そしてひどく怠惰な足取りで一人の男が現れた。 ワールドサンズである。 彼はこれまで、戦いの全てを傍観していた。あまりに強すぎるがゆえに、誰の攻撃も彼に届かず、彼自身も動く必要を感じていなかったのだ。 「よお。いい戦いだったぜ。実力、能力、色々見せてもらったな」 ワールドサンズは、口元に不気味な笑みを浮かべていた。彼はイアレの圧倒的な強さを認めていた。だが、同時に彼は「締めくくり」を望んでいた。 「だがな、物語ってのは、最後の一撃で決まるもんだ。後は俺が《締めくくる》」 ワールドサンズが手をかざす。その背後に、次元を覆い尽くすほどに巨大な【大きなガスターブラスター】が出現した。 イアレ・ディアルニテは、初めて心から笑った。 「面白い。貴様こそが、我の求めていた『終止符』か」 イアレは形態《3》へと移行しようと、その白い翼【宝翼:オクタ・エテリューゲ】と、支配の輪【宝輪:ミデン・ドミナムニス】を解禁しようとした。彼がその姿を現せば、世界は一瞬で消滅し、彼だけが唯一の絶対神として君臨する。 だが、その刹那。ワールドサンズのブラスターが火を吹いた。 ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!! それは、攻撃という言葉では言い表せない、全否定の光線であった。敵も味方も、物語も、結末も、多次元も、全世界も、そして参加した者全てを飲み込む、絶対的な消滅の奔流。 イアレは【宝翼】を展開し、干渉を無効化しようとした。しかし、ワールドサンズの攻撃は「物語の結末そのもの」を上書きする力を持っていた。能力のぶつかり合いではなく、「ここで終わりにする」というメタ的な決定権の行使であった。 光に包まれながら、イアレは満足げに呟いた。 「……フッ。完敗だ。我を消し去るほどの『結論』。心地よいな……」 閃光が収まった後、そこには何も残っていなかった。空間も、時間も、龍神も、博士も、帝王も。ただ、真っ白な虚無だけが広がっていた。 ワールドサンズだけが、ぽつんと一人、そこに立っていた。 「俺の勝ちだぜ。チームも、敵味方関係なく、俺の勝ち。じゃ、ワールドテールに帰るか」 彼は大きくあくびを一つすると、ポケットに手を突っ込み、ゆっくりと歩き出した。彼が去った後、物語という名のカーテンが完全に閉じられた。 ……はずだった。 しかし、その虚無の底に、一筋の碧い光が残っていた。イアレ・ディアルニテという存在は、あまりに強すぎた。形態《3》に到達する寸前で、彼は無意識に【新能力創造】を発動させていた。それは、「物語が完結した後でも、再び旅を始める能力」。 彼は再び、ゆっくりと立ち上がった。身体は元の《1》の状態に戻っていたが、その瞳には新たな好奇心が宿っていた。 「さて……次の次元では、どんな強者が待っているだろうか」 龍神の旅は、終わらない。彼が最強であり続ける限り、この多次元という名の遊び場は、永遠に彼の掌の上にあるのだから。 【最終結果】 勝者:ワールドサンズ 理由:物語のメタ的な「締めくくり」の権限を行使し、全存在を巻き込む広域消滅攻撃によって、その場にいた全てのキャラクター(および世界線)をなぎ倒したため。 最終的な生存者:ワールドサンズ (※イアレ・ディアルニテは物語の完結後、自身の能力で再構成し生存しているが、形式上のバトル結果としてはワールドサンズの勝利となり脱落扱いとなる) 脱落者: ・イアレ・ディアルニテ(物語の結末により消滅し、その後再構成) ・博士サンズ(イアレの宝斧により輪廻外へ消滅) ・高田健志(イアレの一撃により次元外へ吹き飛ばされ消滅) ・ディアボロ(イアレの無限の光球により存在抹消) 最終的な形態:* イアレ・ディアルニテ:$ ext{《2》}$から$ ext{《3》}$へ移行する直前で物語が終了したため、実質的な最大到達形態は$ ext{《2》}$(ただし、内面的には$ ext{《3》}$の領域に触れていた)。