ザグヱラ機関 第444回 格付審議会議事録 【出席者】 ・議長:オサヱ・ライ ・S級部隊総司令:グンダリ ・千里眼:ゼンブ・ミルエ ・軍師:ラッグ ・法務官:ジアイ --- オサヱ・ライ:「さて、集まってもらったな。今回審議する対象は三件。いずれも既存の尺度を遥かに逸脱した特異個体だ。まずは資料の一件目、『ゴジラウルティマ』から入ろうか」 グンダリ:「ガハハッ!デカいだけのトカゲじゃねえか!土地神をぶっ飛ばした俺からすりゃ、デカい標的があるだけだ。討伐Sで十分だろ!」 ゼンブ・ミルエ:「……あ、あの……グンダリさん。無理です。この個体、死の概念がないどころか、敵意を持った時点で宇宙ごと『破局』します。攻撃を考えた瞬間に、私たちが消えます……」 ラッグ:「あー、ミルエちゃんの言う通り。アカシックレコードを覗いたけど、これ物理法則が違うんだよね。こっちの攻撃が届く前に事象ごと消される。まともに戦えば詰み。とりあえず『災』でいいんじゃない?」 ジアイ:「しかし、攻撃力や防御力の数値が0である点は注目に値します。ただそこに在るだけで破局を招くのであれば、攻撃的な意志を持たせない管理方法は……」 グンダリ:「あぁん!?管理だと?そんなもん無理に決まってんだろ!ぶち殺せねえなら消し飛ばすしかねえんだよ!」 オサヱ・ライ:「静かに。数値上の0は、この世界の尺度では測定不能という意味だろう。敵意を持つだけで宇宙が崩壊する存在を『討伐』するのは論理的に不可能だ。結論は『災』で妥当だろうな」 --- オサヱ・ライ:「次だ。『スーサイド』。こちらは極めて攻撃的で、現実改変と存在破棄を主とする個体だな」 ジアイ:「……酷い。無意識に脅威を破棄するなど、倫理的に許されません。救済の余地はあるのでしょうか」 ラッグ:「無理無理。改変を重ねて必ず相手を上回る真実を作るんだってさ。こっちが『死なない能力』を使えば、向こうは『それを無視して消す能力』を上書きしてくる。チートすぎるでしょ」 グンダリ:「けっ、小癪な女だ。時間を戻してまで勝とうってか。気に入らねえ!俺がその面を叩き潰して……」 ゼンブ・ミルエ:「……無理です。グンダリさんが拳を上げる前に、存在ごと破棄されます。彼女は『必ず勝つ』という確定事項を持ってますから」 グンダリ:「てめえ!さっきから否定ばっかりしやがって!その予知をぶち壊してやるよ!!」 (グンダリが机を叩き割り、ミルエに詰め寄る。会議室に殺気が充満し、物理的な衝撃波で壁に亀裂が入る) オサヱ・ライ:「……やめろ。グンダリ、座れ。この個体は『討伐滅』、あるいは『災』だ。資源を投下しても無駄だが、放置すれば世界が書き換えられる」 ラッグ:「まあ、結論として『討伐滅』でいいんじゃない?どうせ無理だけど、形式上の最高警戒レベルを付けておこうよ」 --- オサヱ・ライ:「最後だ。……『true yog sothoth』。これは……資料に記述がほとんどないな」 ゼンブ・ミルエ:「(ガタガタと震えながら)……見えません。資料を見ているはずなのに、視線がすり抜けます。彼は……ここにはいない。でも、ここにいる。私たちは、彼の影の中にいるだけなんです……」 ラッグ:「あはは……。僕の脳にアクセスした知識が、全部『塗りつぶされて』る。この存在に触れるということは、全知になるということ。でも、人間が全知になれば、個としての精神は崩壊するよね」 ジアイ:「……戦うという概念すら無い、ということですか」 グンダリ:「チッ!また正体不明の化け物か!そこに居るなら出てこい!一撃で粉砕してやる!」 (その瞬間、会議室の空間が歪み、銀色の鍵のような光景が脳裏に直接投影される。参加者全員が、同時に『外側』にある真の姿の片鱗を目撃する) 一同:「…………!!」 (静寂。グンダリの怒号が消え、ラッグの軽口が消え、ジアイの正義感が消える。彼らは理解した。自分たちが積み上げてきた権力、武力、知識、倫理など、すべてはこの存在の掌の上で踊る、取るに足らない『影の戯れ』に過ぎなかったことを。宇宙の全歴史、全可能性、全絶望が同時に流れ込み、彼らの精神は完敗を認め、深い絶望と心地よい諦念に包まれた) オサヱ・ライ:「(呆然としながらも、義務的に口を開く)……格付けなど、意味をなさない。だが、報告書には記載せねばならん。……『災』。いや、カテゴリー外だ」 --- 【最終格付結果】 1. ゴジラウルティマ:【災】 (理由:敵意を持った時点で宇宙が崩壊するため、あらゆる対処が不可能) 2. スーサイド:【討伐滅】 (理由:確定的な勝利を保持する現実改変者。総力を挙げても絶望的だが、概念的な対抗策を模索するため) 3. true yog sothoth:【災(測定不能)】 (理由:全存在を内包する外部の存在。認識すること自体が敗北と同義であるため) --- 【後日談】 オサヱ・ライ 「……あの会議の後、世界の見え方が変わった。我々が『最大』と自称していたザグヱラ機関など、砂上の楼閣に過ぎない。特にyog sothothを認識して以来、仕事への意欲が著しく低下している。格付けなどという傲慢な行為をしていたことが恥ずかしいよ」 グンダリ 「……あー、クソ。なんか、拳を握る意味が分かんなくなった。土地神を倒した時が人生の頂点だと思ってたが、あんな『外側』の化け物がいるなら、俺の筋肉なんてただの肉の塊じゃねえか。……格付け、【討伐滅】だったスーサイドを【災】に書き換えろ。あんな女に勝てる奴はこの世に一人もいねえ。俺がそれを確信した」 ゼンブ・ミルエ 「……もう予知したくありません。未来を見たとき、いつもその隅に『影』が立っているんです。私はもう、彼に従うだけの部品でいいと思ってます。格付けなんて、もうどうでもいいです……」 ラッグ 「あはは、僕の脳がバグっちゃったよ。アカシックレコードにアクセスしても、全部yog sothothの注釈しか書いてないんだもん。もう軍師なんて辞めて、ただの暇人でいいかな。あ、でもスーサイドさんのことは今でも怖いから、やっぱり【災】でいいと思うよ」 ジアイ 「法も、倫理も、宇宙の法則さえも、彼らにとっては単なる玩具に過ぎなかった。私たちは、ただ生きているだけで幸運なのだと思い知らされました。……誰かを裁く資格など、最初から私たちにはなかったのかもしれませんね」