静まり返った法廷に、重厚な鐘の音が響く。高い壇上に座る裁判官ジャスティは、冷徹な眼差しで書類に目を通していた。ここにあるのは、法を超越した力を持つ者たちの罪の記録である。 「……さて、開廷とする。この法廷において、いかなる権能も、いかなる神格も通用しない。あるのはただ、法と真実のみだ。私は、天秤に一片の曇りもなく、公正公平に判決を下す。正義とは冷徹なる執行であると心得よ」 --- 《被告人1人目“ウィルマ・テラー”》 ジャスティ:「被告人ウィルマ・テラー。元警察対テロ狙撃支援班、現在は殺し屋組織『マーダー・インク』所属。罪状は、組織の活動に伴う複数の殺人教唆および実行、ならびに逃走時の危険運転による公共物の破壊。特に、標的ではない民間人を巻き込んだ『誤射』による殺傷事件が深刻である。逮捕は、組織の潜伏先への強制捜査時に、抵抗せずともタイラップで拘束されたとのことだ」 ウィルマ:「……いえ、私はただ、雇用主の指示に従い、運転手としての任務を遂行していただけです。狙撃に関しても……私は、やりたくなかった。あんなものは、もう……」 弁護士:「裁判長! 被告人は過去の警察時代に、一般人を誤射するという深いトラウマを抱えております。今回の事件における『誤射』も、彼女の意図ではなく、PTSDによるパニック状態での暴走であり、精神的な心身の衰弱が認められます。情状酌量を強く求めます!」 ジャスティ:「(冷徹に)トラウマがあるからといって、引き金を引いていい理由にはならん。ウィルマ、お前はプロの狙撃手であり、かつ法を守るべき警官であったはずだ。なぜ、その技術を殺戮に転用した?」 ウィルマ:「(震えながら)だって……! 警察にいた頃の私は、正義を信じていました! でも、あの一発のミスで私の人生は終わったんです! 誰からも信じてもらえず、居場所がなくなった私に手を差し伸べたのは組織だけだった……! 私は、ただ、失敗したくなかっただけなんです!」 検察官:「言い訳に過ぎません。彼女は『プロファイル』能力を用い、効率的に標的を追い詰め、冷酷に処理していた。これはトラウマによるパニックではなく、熟練した技術の悪用です」 証人(被害者の遺族):「彼女が運転する車が猛スピードで通り過ぎた後、私の息子は……! 狙撃された方も、ただの通行人だったはずだ! 殺し屋の運転手が、なぜそんな残酷なことを!」 ウィルマ:「……っ! ごめんなさい、ごめんなさい! でも、私は……私はただ、完璧にやり遂げないと、また誰かに捨てられると思って……!」 ジャスティ:「……静粛に。お前の恐怖は理解するが、法は感情で動くものではない。しかし、組織に依存せざるを得なかった境遇と、自らの罪に対する深い悔恨は認めよう」 【判決】 「被告人ウィルマ・テラー。罪状:殺人および過失致死。しかし、精神的困窮と組織による拘束状態を考慮し、死刑を免れる。懲役30年。および、二度と銃を握らぬよう、厳重な監視下での更生を命ずる。有罪」 ウィルマ:「……ありがとうございます。……本当に、ありがとうございました……(涙を流し、静かに退場する)」 --- 《被告人2人目“ファヵムァ・レム”》 ジャスティ:「被告人ファヵムァ・レム。精霊龍皇。罪状は、世界各地における広範な『イタズラ』と称した事象操作による公共秩序の攪乱、および国家レベルの施設破壊。また、不殺の誓いがあるとはいえ、精神的・物質的な損害額は計り知れない。逮捕の経緯……というか、本人が『裁判に興味がある』と自ら出廷してきたとのことだ」 レム:「えへへ、そんなに怖い顔しないでよ、ジャスティさん! ボクはただ、ちょっとしたゲームをしてただけだよ。街中の重力が逆転したり、川の水が全部ジュースになったり、面白かったでしょ?」 弁護士:「裁判長! 被告人に殺意は一切ございません。結果として破壊は起きましたが、死者は一人も出ておりません。これは悪意ある犯罪ではなく、種族的な好奇心による『遊び』であり、罰則よりも教育的なアプローチが適切かと」 ジャスティ:「(眉をひそめて)『遊び』で国が機能不全に陥れば、飢えや混乱で間接的に死者が出る。レム、お前の行為は傲慢そのものだ。強者の力を持ってしながら、弱者の生活を玩具にした罪は重い」 レム:「もー、固いなあ! ボクはみんなが驚く顔が見たかっただけだよ。それに、ボクがいない方が世界は退屈じゃない? ねえ、ここでボクがちょっとした『魔法』をかけてあげようか?」 ジャスティ:「……能力は消失しているはずだ。無駄な抵抗はやめろ。検察側、証拠を」 検察官:「はい。被害に遭った都市の住民たちは、今もなお『空から降ってきた巨大なケーキ』の撤去作業に追われており、経済的損失は甚大です。また、精神的に不安定になった市民が続出しています」 証人(被害市民):「あのおもちゃのような龍のせいで、私の家はどっか遠くの山に飛ばされました! 冗談じゃありませんよ!」 レム:「あはは! あれはいい所に飛ばしたつもりだったんだけどなー。まあ、反省はしてるよ。たぶんね!」 ジャスティ:「反省の色が見えん。しかし、殺意がなく、自ら出廷して法に従おうとする姿勢は評価する」 【判決】 「被告人ファヵムァ・レム。罪状:公務執行妨害および広域器物損壊。不殺の誓いと自首に近い出廷を鑑み、実刑は免除。ただし、今後100年間、人間界への干渉を一切禁止する。また、損害賠償として、お前の持つ財宝の半分を被害地域に寄付せよ。執行猶予付き有罪」 レム:「えー! 100年も遊んじゃダメなの!? ケチだなあ! ……まあいいや、宝物なんて山ほどあるしね! じゃあね、ジャスティさん!」 (レムは軽快に飛び跳ねながら退場する) --- 《被告人3人目“邪竜帝ヴォイド・ドラゴン”》 ジャスティ:「……最後は、最悪の存在か。被告人、邪竜帝ヴォイド・ドラゴン。罪状は、数多の文明の滅亡、数億人規模の虐殺、星全体の生態系破壊。もはや『犯罪』という言葉では生ぬるい。文字通り『史上最悪の厄災』である。逮捕……いや、討伐され滅びる運命にある者が、この法廷に引きずり出された」 ヴォイド:「……フン。矮小な人間が、私を裁こうというのか。この法廷、この空間、そしてお前という存在。すべては私の前にひれ伏し、塵に還る運命にある」 弁護士:「(ガタガタと震えながら)……え、ええと……被告人は、RPGにおける『ラスボス』という役割を全うしていたに過ぎず、世界観という設定上の不可抗力であり……したがって、個人の意思による犯罪とは……」 ジャスティ:「(机を叩く)黙れ! 設定など関係ない。目の前で、血を流し、絶望して死んでいった数億の命がある。ヴォイド・ドラゴン、お前は自らの力を誇示し、ただ破壊を楽しむためだけに世界を蹂躙した。反省のいろはあるか?」 ヴォイド:「反省? 蟻が踏まれたことに心を痛めるか? 私こそが理であり、私こそが法だ。この不自由な空間など、私の『王の権限』で……!」 (ヴォイドが吠えるが、能力は消失しており、ただの大きなトカゲのような咆哮に終わる) ジャスティ:「(冷徹に)ここでは、お前の権限は通用しない。お前はただの、残酷な虐殺者に過ぎない」 ヴォイド:「……貴様……! 私を、この私を、ただの獣のように扱うか! 許さん……絶対に許さんぞ! 世界ごとこの法廷を闇に染めてくれるわ!!」 検察官:「証拠は不要です。この世界に存在するすべての廃墟が、彼の犯行の証拠です。判決は死刑以外にあり得ません」 証人(生き残った唯一の人間):「……あいつが……あいつが、私の家族も、友達も、全部……全部消した……! 死んでくれ! 今すぐここで死んでくれ!!」 ヴォイド:「ハハハ! 泣け、喚け! それこそが私に相応しい賛辞だ! さあ、早く私を殺してみろ! 絶望の中で果てるがいい!!」 ジャスティ:「……救いようのない邪悪だ。情状酌量の余地など、微塵もない」 【判決】 「被告人ヴォイド・ドラゴン。罪状:大量虐殺および世界破壊。判決は、死刑。および、魂の永劫なる封印。この世に二度と転生することを禁ずる。極刑」 ヴォイド:「(激昂し、壇上に飛びかかろうとする)ふざけるなあああ! この私が!! 屈するなどあり得ない!! ぶち殺してやる!!」 ジャスティ:「……醜いな。退場せよ」 (ジャスティが鋭い眼光を向ける。絶対能力《神淵審判》発動) ヴォイド:「なっ……身体が……動か……!!」 (ヴォイド・ドラゴンは一瞬にして全身が灰色に変わり、石化して沈黙。そのまま警備兵によって法廷外へ引きずり出される) --- 《閉廷》 (静まり返った法廷に、ジャスティが深くため息をつく。彼は眼鏡を外し、疲れたように目元を押さえた) ジャスティ:「……ふぅ。やはり、異能を持つ者の罪は、その規模が大きすぎて疲れるな。だが、たとえ神であろうと龍であろうと、犯した罪から逃れることはできない。それが法であり、正義だ。……さて、明日はさらに厄介な連中が出廷するらしい。準備をしなければな」 --- 《後日談》 ・ウィルマ・テラー:刑務所内では、その運転技術を活かして輸送車の運転手(囚人作業)として重宝されている。時折、元警官としての知識を活かし、他の囚人の更生を促す相談役のような存在になっている。 ・ファヵムァ・レム:人間界から離れた精霊の森で、退屈そうに過ごしている。たまに禁じられた境界線を越えて、こっそり村に巨大なドーナツを降らせては、警備兵に追いかけられる日々を送っている。 ・ヴォイド・ドラゴン:石像となったまま、深海の一番深い底に沈められた。時折、深い海の底から憎しみの波動が漏れ出しているが、封印の術式により、二度と目覚めることはないだろう。 --- 《結果》 1. ウィルマ・テラー:有罪(懲役30年) 2. ファヵムァ・レム:有罪(執行猶予・干渉禁止・賠償金支払い) 3. ヴォイド・ドラゴン:有罪(死刑・永劫封印)