都市の喧騒は、絶望の悲鳴へと塗り替えられた。 空を割って現れたのは、見るに堪えない異形の怪物。人間の骸のような頭部を頂戴し、巨大な爬虫類の肢体を持つ剿獣【GHOST】。それは生命の頂点に君臨せんとする貪欲なる捕食者であった。 「全員、散開せよ! 民間人を避難させろ!」 人類防衛軍の指揮官が吼える。銃と盾で武装した五十名の兵士たちが、壁となって怪物を封じ込める。しかし、剿獣の【適応】は残酷だった。兵士たちが放つ弾丸は【超絶剛鱗】に弾かれ、盾で押し返そうとした瞬間、口から放たれた【赫灼熱線】が防衛軍の最前列を一瞬で蒸発させた。 「……使い物にならん。どけ」 冷淡な声と共に、影乃柩が歩み出る。彼の傍らには、実体を持たぬ影のような存在『夜張』が音もなく寄り添っていた。 「来い『夜張』、行くぞ」 柩が手をかざすと、足元に底の見えない闇の穴――固有能力『宵闇』が展開される。逃げ惑う人々を飲み込まぬよう緻密に制御し、彼は剿獣の足元に闇のゲートを生成。同時に『夜張』を召喚し、物理干渉を無視した不可視の攻撃で剿獣の注意を逸らした。 「ガアアッ!」 激昂した剿獣が【腐敗ガス】を散布しようとした瞬間、天から黒い翼が舞い降りた。 「貴様は強い。だからこそ全力で応えよう」 《黒翼の天使》シュワルツ=アルフレッドが、名刀「天華」を抜き放つ。彼を囲む高魔力の炎の結界が腐敗ガスを焼き払い、純白の空に黒い炎が舞う。 「【炎ノ舞】!」 数体の炎の分身が剿獣を包囲し、四方八方から斬撃を浴びせる。さらにシュワルツは跳躍し、地平線さえも切り裂く【天技・光明の一筋】を叩き込んだ。巨大な肉体に深い断層が刻まれる。 だが、剿獣は笑っていた。傷口から【凍裂波動】を放ち、シュワルツの足を凍結させる。そこへ、地響きと共に黄金の巨躯が飛び出した。 「吾輩は此処だッ!!」 獅子人レオが、その剛腕で凍りついたシュワルツを弾き飛ばし、自らが壁となる。不滅の鎧「獅子王の鎧」が剿獣の猛攻を受け止める。不滅の威光により、あらゆる打撃は無効化され、レオの表情には余裕すらあった。 「いい攻撃だ。だが、吾輩の正面を突破できると思うなよ!」 レオが【裁きの御手】で衝撃を魔力に変換し、周囲の味方の士気を回復させる。その隙を逃さず、上空から銀色の閃光が降り注いだ。 「目標確認。排除を開始する」 TKS-05V ハーモニクス。国連統合部隊の最新鋭可変機が、飛行形態から人型へと鮮やかに変形する。背部のハーモニクス・キャノンが最大出力で照射され、剿獣の肩を焼き切った。さらにヴァリアブル・セイバーが高周波の振動を伴い、剛鱗を切り裂く。 「今だ! 全員で叩き潰せ!」 防衛軍の残存兵が全力で射撃し、シュワルツが【天技・原初なる火の写し】で黄金の炎を放ち、レオが【終幕だッ!】で怪物を地面に叩きつける。そして柩が最大技【暗影之遊戯場】を展開し、世界を闇に塗り潰した。 逃げ場のない闇の中、絶望的なまでの集中攻撃が剿獣を襲う。ついに、その巨体に大きなヒビが入り、光が漏れ出した。 「勝った……のか?」 兵士が呟いたその時だった。 パキィィィン!! 砕け散った外殻の中から、現れたのは――人間のような形をした、小さく、白い、不気味な「人形」の剿獣だった。 その瞬間、空気が変わった。圧倒的な圧力が全員を押し潰す。 (……適応したのか。この【世界】に) 柩の理知的な思考が、初めて恐怖に染まった。剿獣は、戦いを通じて人類の戦術、魔力、兵器、そして「個」という概念に適応したのだ。 剿獣の鱗がどす黒い赤に輝き、二足で立ち上がる。それはもはや爬虫類ではなく、神に近い捕食者の姿だった。口から放たれたのは、あらゆる防御を無視し、空間ごと消滅させる絶滅のビーム。 「が……っ!?」 不滅を誇ったレオの鎧が、紙屑のように消滅した。ハーモニクスの装甲は一瞬で溶け落ち、シュワルツの黒翼は燃え尽きた。柩の『宵闇』さえも、そのビームは貫通し、底知れぬ闇を白光で塗り潰した。 蹂躙だった。 逃げ惑う民衆も、盾を構えた兵士も、誇り高きバトラーたちも。すべてが等しく、赤く輝く死の光に飲み込まれていった。 静寂が訪れたとき、そこには生命の気配などどこにもなかった。ただ、世界に最適化した一匹の怪物が、空虚な空を見上げていた。 ※※【人類絶滅end】※※ 【死亡者および原因】 ・人類防衛軍(50名):【赫灼熱線】および【絶滅ビーム】による焼失 ・民間人(都市住民全数):【腐敗ガス】による中毒および【絶滅ビーム】による消滅 ・レオ:【絶滅ビーム】による不滅の鎧貫通・身体崩壊 ・《黒翼の天使》シュワルツ=アルフレッド:【絶滅ビーム】による存在消滅 ・TKS-05V ハーモニクス:【絶滅ビーム】による機体完全溶解 ・影乃 柩:【絶滅ビーム】による次元ごと消滅