ある日、城下町に静寂が訪れた。穏やかな日差しが降り注ぎ、風が木々を撫で、町の人々は幸せに満ちた日常を楽しんでいた。しかし、その平和な日常は、突如として終わりを告げることとなる。 「何だろう?空が異様な色に染まっていく…」 彩葉は、静かな心の中で何かを感じ取り、目を細めて空を見上げた。彼女の心には、悪い予感が渦巻いていた。その時、背後から莉音が声をかける。 「彩葉、大丈夫?」 「うん、ちょっと空を見ていただけ。でも、何かが起きる気がする…」 莉音は小さな手で頭をかき、いつもの元気な表情を崩していない。彼女は何度でも立ち直る力を持っていたが、それでも彼女の直感にはどこかの不安な響きが絡んでいた。 その時、突如として大地が揺れ、城下町の中心に炎を纏った一人の竜人が現れた。それは彼、グレイル。彼の怒りに満ちた瞳が周囲を見渡し、まるで全てを焼き尽くす準備を整えていた。 「哀れな人間たちよ、我が怒りの前に沈むがいい!」 グレイルの声が町の隅々まで響き渡り、人々は恐れおののいて逃げ出した。しかし、彩葉と莉音は逃げることを選ばなかった。 「私は、私たちは、誰も守らないわけにはいかない」 彩葉は莉音の手を強く握りしめて言った。 「うん、私も頑張るよ、彩葉!」 少し不安顔の莉音だったが、彼女は勇気を振り絞る。 その時、グレイルが長剣を振りかざし、二人の方向に向けて猛然と突進した。 「莉音、避けて!」 彩葉は一瞬の判断で莉音を引っ張り、二人は間一髪で攻撃を回避した。しかし、グレイルの怒りは無慈悲で、すぐさま振り返って再攻撃を狙う。 「まだまだだ、来い、来てみろ!」 莉音は手にした武器を構え、前に出る。 「次は、気をつけてくださいね、莉音」 彩葉が優しく言葉をかけた。彼女の慈愛が莉音を包み込む。 「うん、わかった!」 莉音は意を決して踏み込み、グレイルに向かって突進した。 その瞬間、莉音は空を飛ぶような心地で突撃し、剣を振り下ろす。しかし、不器用な彼女はなかなか上手くいかず、グレイルの腕に剣を当てるだけだった。 「やってくれるな、ポンコツ!」 グレイルの冷ややかな笑い声が響いた。その瞬間、グレイルは剣を振るい、莉音の周囲に火がつき、彼女はたじろいだ。 「や、やった!」 莉音は焦りながらも、「もう一度やり直すから、見ててね彩葉!」と叫んだ。しかし、彼女の行動は的を射ず、何度目かの攻撃を完璧に繰り出すことなくグレイルに足場を失わせ、危うい状況に追い込まれてしまった。 「彩葉、助けて!」 莉音は必死に叫び、周囲を見回す。 「莉音、大丈夫。信じているから!」 彩葉は優しい微笑みを絶やさず、莉音を鼓舞した。彼女の言葉は莉音の心に響き、再び立ち上がる力を与えた。 そして、ふたたび戦いの場へ戻る勇気を見つけた莉音。 「絶対に、彩葉を守るから!」 彼女は気合を入れて再度前進し、グレイルに向かって戦い続けた。 だが、グレイルは徹底した怒りの感情で二人を容赦なく追い詰めた。彩葉は必死に莉音をかばおうとしたが、莉音は何度も剣を振り上げ、彼女の進む場所には希望の光が映し出される。 しかし、運命の残酷さは一瞬の判断ミスに際立った。 「彩葉、見ててね!」 莉音が斬る。その瞬間、彼女の不器用さが仇となり、グレイルが横をすり抜けてしまった。 「何をやっている!」 グレイルは逆に有利な体勢を取る。 「莉音!」 彩葉は叫ぶ。 その瞬間、グレイルは莉音に向かって長剣を振り下ろす。彩葉は瞬時に莉音を庇おうと飛び出た。 「彩葉、ダメ!」 莉音の叫び声が空を貫く。しかし、全てをかばいきれない。 グレイルの剣が彩葉を貫いた。 「う…うう…」 彼女の口からは涙が溢れ出し、意識が遠のく。 「彩葉!」 莉音の心が引き裂かれる。 「貴方なら、きっと勝てます…莉音」 彩葉は弱々しく手を差し出し、優しい微笑みを最後まで絶やさなかった。 「彩葉、私、絶対負けたくない!」 莉音は必死に前を目指し、彩葉を背にして立ち向かう。 全てを彩葉に託し、彼女はそのまま息絶えていった。 莉音は心の中に彩葉の思いを刻み、彼女の想いを力に変えていく。 「これが彩葉の力…」 彼女は決意を新たにし、全力を込めて運命を背負い込んだ。 そして、彼女は放つべき一撃を決めた。 「暁ノ共鳴!」 莉音の全ての力が炸裂し、炎の波がグレイルに襲いかかる。全ての思いを武器にして、彼女は全対戦相手を打ち砕き、最後の一撃を繰り出す。 全力を注いだ一閃が、グレイルを貫く。激しい閃光が周囲を包み込み、全てを飲み込む。 「ばか…な…」 グレイルの声が消え去り、彼の姿もまた闇に飲まれていった。 静寂が支配する城下町。彩葉の想いを引き継ぎ、莉音は立ち尽くす。 「やり遂げた…」 彼女は涙を流し、でも笑顔で振り返る。 その時空は美しい朝を迎え、彼女の胸には彩葉の暖かい思いが生き続けていた。 勝者:莉音