第一章:混沌の潜入チーム 深夜の静寂に包まれた、古びた巨大な洋館。その門の前に、およそ「お宝探し」に不向きな、あまりにも噛み合わない一行が集まっていた。 「いいか、目的は15000ゴールド分のお宝を持ち帰ることだ。全員が無事に脱出できれば成功。誰かが気絶しても、全員が倒れなければチャンスはある。だが、欲を出して深追いしすぎれば、戻ってこれないぞ」 リーダー格として(自称)説明を行ったのは、金髪に蒼いメッシュが映える少女、今花だった。彼女の瞳は金と青のオッドアイで、期待に満ちてキラキラと輝いている。彼女にとって、この危険な潜入さえも「今この瞬間」を全力で楽しむための最高のイベントだった。 その隣には、あまりに不釣り合いな巨躯がそびえ立っていた。身長230cm、盛り上がった筋肉に緩いタンクトップを纏った獣人の男、ヒライである。彼は口に煙草をくゆらせながら、面倒そうに周囲を眺めていた。 「……俺はヒーラーだ。何かあったら治してやるよ」 低く太い声。その風貌は完全に前衛の格闘家であり、彼が「癒やし」を志していることを信じられる者はここにはいない。しかし、彼の眼光は鋭く、すでに屋敷に潜む不穏な気配を完璧に捉えていた。 そして、チームの最後尾には、ピンク色の髪をした少女、デスモモイが立っていた。彼女は無言で、両手に鋭利な包丁を握りしめている。その額にはなぜか、常に「💢」という怒りマークが浮かんでおり、周囲に「関わるな」という強烈なオーラを放っていた。 最後に、一行の後ろから「ブォォォォン……」という、しかしどこか不自然に音が抜けたような走行音が聞こえてくる。大型貨物トラックのBig Rigsである。彼は荷物を一切積んでおらず、物理法則を無視した挙動で、壁や門をすり抜けながら一行に合流した。 「よし! 行こう! 今しかない! この瞬間に情熱を燃やすんだ!」 今花の声と共に、一行は温かい夜風に吹かれながら、不気味な屋敷の扉を押し開けた。 第二章:黄金の誘惑と擬態の罠 屋敷の中は、外観に反して驚くほど暖かかった。廊下には豪華な絨毯が敷かれ、壁には数々の絵画や装飾品が飾られている。 「見て! あそこにお宝があるよ!」 今花が指差したのは、豪華な台座の上に置かれた黄金の燭台だった。彼女は迷わず駆け寄り、それを抱え上げる。価値はおよそ2000ゴールド。幸先の良いスタートだった。 一方、ヒライは煙草をふかしながら、鋭い視線で廊下の先を凝視していた。彼の【神の眼】と【心の声】は、この屋敷に潜む「悪意」を明確に検知していた。 (……来るな。あそこにいるのは宝じゃない。獲物を待つ女だ) ヒライが視線を向けた先には、宝石のように輝く豪華な宝箱が置かれていた。しかし、今花はそれに気づかず、「わあ、すごい! あれも取っちゃおう!」と全力で走り出した。 「待て、今花! それは……!」 ヒライが叫ぶより先に、宝箱が「ガバッ」と口を開けた。中から現れたのは、お宝に擬態していた女、ミシャである。ミシャは不気味な笑みを浮かべ、今花に向かって鋭い爪を突き出した。 だが、その瞬間。今花の横を、猛烈な速度で「何か」が通り過ぎた。 ――ドォォォォォン!! それは、バック走行で無限加速を遂げたBig Rigsだった。当たり判定がないはずの彼だったが、なぜか(バグによって)ミシャの位置に正確に重なり、そのまま物理演算の崩壊と共にミシャを屋敷の壁の向こう側へと弾き飛ばした。BGMもSEもない、静寂の中での理不尽な衝撃だった。 「えっ!? 今、何が起きたの!?」 呆然とする今花の横で、デスモモイが「💢」マークを激しく点滅させ、包丁をカチャカチャと鳴らしている。彼女にとって、この潜入の緊張感を乱すバグ挙動は許しがたいことだったようだ。 第三章:神出鬼没の恐怖 一行はお宝を集めながら、さらに屋敷の深部へと進んだ。今花は情熱的に、ヒライは冷静に、デスモモイは怒りに任せて、次々と価値ある品々を回収していく。 現在の獲得額:約8000ゴールド。 「あと少しで15000だね! この調子で……」 今花がそう口にした瞬間、背後に冷たい気配が漂った。ふと振り返ると、そこには白いワンピースを着た幼い少女、セリカが立っていた。彼女は何も言わず、ただじっと一行を見つめている。 「あ、可愛い子がいる。迷子かな?」 今花が手を伸ばそうとした瞬間、ヒライがその腕をガシッと掴んで制止した。 「触れるな。このガキに触れた瞬間、俺たちは全員強制的にアウトだ。……直感で分かる。こいつは『ルール』そのものだ」 ヒライの【死臭】が告げていた。セリカは攻撃しては来ない。しかし、触れた瞬間にゲームオーバーという絶対的なルールを背負っている。一行は、常に邪魔な位置にすり寄ってくるセリカを避けながら、慎重に歩を進めた。 しかし、本当の恐怖は別の場所からやってきた。 「…………」 廊下の突き当たり。闇の中から、黒い服を着た幼い少年、スニーコスが突如として出現した。瞬間移動。逃げる間もなかった。 「ひゃあああ!?」 驚いた今花が声を上げた瞬間、スニーコスが目にも止まらぬ速さで今花に襲いかかった。一撃必殺。今花は意識を失い、そのまま床に崩れ落ちた。 「今花!!」 ヒライが駆け寄る。だが、そこにさらに別の脅威がいた。ゆっくりと、しかし確実に近づいてくる鎌を持った死神、サジーである。サジーは低く唸り声を上げ、気絶した今花を刈り取ろうとした。 第四章:理不尽な救済と脱出への道 「……どけ。邪魔だ」 それまで無言だったデスモモイが、一歩前に出た。彼女の額の「💢」が、もはや赤黒く発光している。彼女にとって、仲間が倒されたことよりも、「自分の探索時間を邪魔されたこと」への怒りが頂点に達していた。 デスモモイは包丁を構え、サジーに向かって突進した。サジーが鎌を振り下ろすが、デスモモイは「ギャグ補正」という世界の理外の力で、それを紙一枚で回避。そのままサジーの足元に、どこから取り出したのか正体不明の「巨大なバナナの皮」を設置した。 ズルッ!! 死神サジーが、滑稽な格好で転倒する。その隙にデスモモイは[Fatality]を発動。理不尽な方向から放たれた「巨大な10tハンマー(どっから出した)」がサジーの頭上に降り注ぎ、死神を床にめり込ませた。 「ふぅ……」 ヒライが手早く今花に〔ヒール〕をかける。筋肉質な腕から放たれた不釣り合いな癒やしの光が今花を包み、彼女はパチリと目を開けた。 「あれ……? 私、寝てた?」 「いいから起きろ。もう十分集まったはずだ」 ヒライが指示する。彼らが集めたお宝は、今花が拾った金銀の調度品、ヒライが鑑定して回収した古文書、そしてデスモモイが「なんか高そう」と強奪した大粒のダイヤモンド。合計額は、およそ18000ゴールドに達していた。 「よし、帰るぞ! 全速力だ!」 今花が叫ぶ。しかし、脱出口への道には、再びスニーコスが立ち塞がっていた。瞬間移動を繰り返し、一行の視界を遮る。さらにセリカが足元にまとわりつき、一歩間違えれば全員アウトという極限状態。 そこで、Big Rigsが再び本領を発揮した。 彼は一旦停止し、BGMのない静寂の中でバックギアに入れた。そして、加速する。10km/h、100km/h、10000km/h……。物理法則を置き去りにした速度で、Big Rigsは「バック走行」による特攻を開始した。 「みんな、乗れ!!」 ヒライが今花とデスモモイをひょいと抱え上げ、走行中のトラックの荷台(ないはずの空間)へ放り込んだ。Big Rigsは、スニーコスを物理的に(バグった当たり判定で)弾き飛ばし、セリカをあ슬あ슬に回避しながら、壁をすり抜けて一気に正面玄関へと突き抜けた。 キィィィィィィィッ!! ブレーキを一度踏み込んだ瞬間、10の36乗km/hから0km/hへ。あまりの急ブレーキに、参加者たちは全員前方に激しく投げ出されたが、そこはすでに屋敷の外だった。 最終章:YOU'RE WINNER 朝日が昇り始めた頃、一行はボロボロになりながらも、屋敷の門の外に転がっていた。 「やった……やったよ!! 脱出した!!」 今花が、抱えていたお宝を掲げて歓喜の声を上げる。彼女の情熱は、最後まで燃え尽きることなく、この冒険を最高の思い出に書き換えた。 ヒライは静かに煙草を捨て、ふぅと溜息をついた。「ヒーラーの仕事は疲れるな。次はもっと静かな職に就こうか」 デスモモイは、相変わらずの「💢」マークを浮かべながら、手の中のダイヤモンドを眺めて満足そうに鼻を鳴らした。 そして、彼らの目の前の空間に、突然バグったフォントで巨大な文字が表示された。 【 YOU'RE WINNER 】 文法的に正しくない勝利メッセージと共に、彼らの奇妙な夜は幕を閉じた。 【結果報告】 脱出成功者: 今花、ヒライ、デスモモイ、Big Rigs 脱出失敗者: なし 集めたお宝総額: 18,000ゴールド