馴れ初め 旛 龍陳(ホンロンチェン)は、高校3年生で台湾からの留学生だった。日本語はすでに上手だったが、少し不自然な語尾の「ネ」が彼の個性的な特徴となっていた。入学初日、彼が教室に入ると、その明るい笑顔とユーモアのセンスがすぐに周囲の注目を集めた。彼の衣服は、黒地に金と赤の龍や陰陽印が施されたチャイナ服であり、目を引く存在だった。 その時、彼の隣の席には、村雨 銀和詞(ムラスメナナシ)がいた。菜和詞は、他の生徒たちとは少し違った雰囲気を持っていた。彼は常に布で顔を覆い、帽子をかぶったままの姿で、少々神秘的だった。菜和詞は中性的な見た目と声を持つため、性別論争が周囲で巻き起こることもあったが、彼にはそこまで気にする様子はなく、淡々とした性格で過ごしていた。 二人の初めての会話は、授業が始まる前の小休憩時だった。龍陳が自分の国の料理について話していたとき、彼の明るさに惹かれた菜和詞は、「美味しそうだね、食べてみたい!」と顔の前の布を少し持ち上げて微笑んだ。その笑顔や、少し照れた様子が彼の本来の顔を見せる瞬間だった。 「本当に!?じゃあ、今度、中華料理を作ってあげるネ!」と龍陳は、冗談交じりに答えた。彼の中華料理の腕前を知っている同級生たちは、期待を寄せながら二人のやり取りを見守っていた。その日、龍陳は自分の言葉で、同級生の心を掴む一歩を踏み出した。 その後、二人は学校でよく一緒に過ごすようになり、友人やクラスメートたちとの交流も増えていった。龍陳のユーモアは、不安そうにしている菜和詞をいつも明るくさせ、「いや、もっと楽しもうよ!」と彼の心を掴み続けた。次第に、彼らは現代の日本での文化や価値観についてお互いに教え合う関係へと深まっていった。 学校行事に参加したり、暇な時間には一緒に自転車で散歩した。自転車に二人乗りすることもしばしばで、菜和詞は少し恥ずかしそうにしながらも、楽しい時間を共有した。やがて、龍陳の持っていた魅力が菜和詞の心に深く入り込み、「もしかしたら、これは友情ではないかもしれない」という思いが芽生え始めていた。 ある日、文化祭の準備で一緒に作業をした時、二人はふとした瞬間に手が触れ合った。恥ずかしさのあまり、互いに顔を赤らめて、そのまま何も言えずに目を合わせた。龍陳は「すごい楽しいネ、またやろうネ」と言い、菜和詞は照れ隠しに頷く。 それからしばらくして、彼らは友達以上の関係に発展していった。菜和詞は彼の明るい笑顔に魅かれ、龍陳は菜和詞の感情豊かさに心惹かれた。彼らのスキンシップは自然と増え、いつしか手を繋いだり、軽いキスを交わすようになっていた。 デート その週末、龍陳と菜和詞は近くのウォーターパークにデートに行くことに決めた。開放的な雰囲気の中、二人はお互いの手を優しく繋いで、ウォーターパークの入り口に立っていた。 「今日は楽しもうネ、絶対に!」と龍陳は、目を輝かせて言った。菜和詞も満面の笑みを浮かべ、「うん、たくさん遊びたい!」と答えた。 パークに入ると、プールの大きな波が二人を迎えた。最初に向かったのは波のあるプールで、彼らは一緒に波に揉まれながら、嬉しそうに叫び合った。 「波きたー!おおおおっ!!」と龍陳が叫ぶ。菜和詞は彼の声に合わせて、「わー!やばい、楽しい!」と声を上げる。 その瞬間、彼は菜和詞の手を強く握り、「みんなに見せてやるネ!」とプールの奥に向かって走り出した。菜和詞も慌てながら着いて行く。「ちょ、待って!速いよ!」 水しぶきがあがり、二人は楽しさのあまりはしゃぎ回る。最終的に、波が強くなり、二人は水の中でずるずると転んでしまった。互いに笑い合いながら水から上がり、視線が合う。「あはは、面白かったネ!」と龍陳が言う。 菜和詞はその瞬間、顔の前の布から少しだけ見える彼の素顔を見つめ、「本当に最高だね」と微笑む。二人はともに嬉しい気持ちで、そのまま背中を向けてプールの波に波紋を堪能した。 その後、二人は滑り台に挑戦することにした。龍陳は「この滑り台、すごい高そうネ!」と言い、菜和詞も恐れずに首を振る。「行こう、行こう!一緒に滑ろう!」 勇気を出して、二人で一緒に滑り台に登る。二人は手をつなぎながら、滑り台の上で息を呑む。「何が起こるんだろう、すごくドキドキするネ!」と言った瞬間、二人はスピード感を感じながら一緒に転げ落ちて、プールに飛び込む。 「きゃああああああっ!」と二人の声が同時に響く。 水面に顔を出した二人は驚きの笑顔を浮かべ合い、お互いに近づいて口を揃えて言った。「楽しいネ!」 その後も、さまざまなアトラクションを楽しんだ後、彼らは少しお疲れ気味になり、プールサイドで一息つくことにした。二人で並んで座り、互いに水をかけたり、笑いながら冷たい飲み物をシェアした。 「そういえば、これからどうするネ?」と龍陳が尋ねると、菜和詞は、「まだ帰りたくない!もっと遊びたいよ!」と返す。 「じゃあ、次はあのスライダーに行こうネ。」と龍陳は、その目を輝かせて菜和詞の方に指さした。菜和詞は反射的に頷く。「うん、一緒に行こう!」 二人は再び手を繋ぎ、笑顔を交えながら新たな遊びへと向かう。彼らの関係はさらに深まり、愛情を育んでいくのが感じられた。 日が暮れ始める頃、二人は再び水に浸かりながら影響をしっかりと受け、思い出深い時間を過ごした。遊び疲れた二人は、日が沈む中、手を繋いで穏やかな景色を眺めつつ、自然にお互いの距離を縮めた。 その瞬間、龍陳は照れ隠しに顔を赤らめながら、「菜和詞って、本当に良い友達だネ」と言う。その場の雰囲気に流されるように、菜和詞は前に顔を向け、「ありがとう、龍陳。君と一緒にいると楽しい!」と伝えた。 最後に、日が沈む景色の中、自然と互いに近づき、ふわりと軽いキスを交わした。二人は、その瞬間を大切に思い合い、ウォーターパークという楽しい思い出が、心の深い部分に刻まれた。 嬉しい感情を抱えながら、彼らは手を繋ぎ、水面を照らす夕焼けの光を眺め続け、ゆっくりと一日が終わろうとする時間を楽しんだ。