西の空は黒く重い雲に覆われ、荒れ狂う雷鳴が轟く。これから繰り広げられる戦闘の舞台となる場所は、静寂を少しずつ奪っていく不安な予感に満ちていた。濃い霧が地面を這い、そこへ現れたのは、遺伝子改造の罪を背負ったダイアだった。 「《遺伝子改造の罪》のダイアだ」 ダイアは銀眼鏡をかけ、白衣を羽織って立っている。その姿からは知性と狂気が同時に漂っていた。彼はゆっくりと周囲を見渡し、心の中で戦略を練っている様子。 「さて、実験と行こうか」 その言葉とともに、ダイアは周囲の植物に目を向けた。彼の権能【遺伝子改造】は、植物の遺伝子を操作することだ。瞬時にして、彼は森から急成長させたプラント型の植物群を呼び寄せた。 対するは、2人の異才。 まず、痩身の少女、No.060クルス。異常に白い肌と白髪、赤い目はどこか儚げでありながら、背後で浮遊している培養カプセルが彼女の存在に謎を深める存在である。 「よろしく ね」 普段は楽観的な彼女だが、この瞬間、彼女の言葉は不気味な響きを持っていた。包帯に覆われた体からは、念動力で生まれる力を感じさせている。 そしてもうひとり、幼き雷神カムリ。雷そのものである彼女は、鋭い目を持ち、身体は稲光で形作られている。無口な彼女の存在は、何を考えているか全く分からない。しかし、その周りには常に雷の気配が漂っていた。 「たのしい ね」 クルスはカムリと共にダイアの前に立った。どちらも戦闘態勢に入っている。 ダイアは植物を操り、太い蔓が敵の持つカプセルに伸びていく。 「行くぞ、止まれ!」 その言葉の瞬間、藤蔓が瞬時にクルスを拘束しようと襲いかかる。 「おっと、まずはこの包帯で」 クルスは念動力を使い、包帯を自在に操り、周囲の植物と戦おうと試みる。 包帯は彼女を追いかけてくる蔓を弾き飛ばし、マテリアルバリアを形成する。 ダイアは冷静に敵の動きを分析し続ける。彼の敵への圧倒的な冷静さにより、クルスの動きはやや後手に回ってしまう。 「何をしている、急いで!」 カムリもまた、瞬間移動を駆使し、周囲の雷を集め、ダイアへと接触しようとする。しかし、ダイアはそこで根型のトラップを使い、カムリの移動を封じ込める。 「雷の姿を見せてみろ!」 ダイアは笑みを浮かべながら、根の暗い地面から掘り起こされてくる触手のような植物がカムリを捉えようとする。しかし、カムリは感知することなく、雷の化身としてダイアの背後に瞬間移動した。 「!?」 ダイアはその気配に気づいたが、彼女の速さには間に合わない。 カムリは雷の速度でダイアの体に触れ、その瞬間、ダイアの身体を貫く雷の痛みが走る。 「効かないようだな。次はこれだ!」 ダイアは全力で遺伝子改造の力を使い、プラント型のタレットを増殖させ、同時に強度の高い葉形の植物で周囲を固めて、クルスとカムリを挟み込む。 「逃げられないよ!」 クルスはそれに気づき、包帯を剥いでいく。「リミットオーバーを発動させるしかない!」 彼女の覚醒は発揮され、周囲の空間が震えた。包帯が宙に漂い彼女の姿は一糸纏わぬ美しさを見せる。 「ええい、これが真の力だ!」 衝撃の波動が彼女の周囲を包み込み、次々と生まれるサイコエッジがダイアの植物を切り裂いていく。 その瞬間、カムリもまた、雷のエネルギーを全て集束し、神罰の怒りを発動する準備を進めた。 「神罰『怒り』!」 周囲の雷が一つに集まっていく中、ダイアも反撃に出る。「まだ終わらせない!」再び彼の植物が襲い来る。しかし、リミットオーバーのクルスが、サイコエッジでそれを切り裂く。 ダイアは周囲を把握している。だが、植物の動きは次第に彼女たちに対抗できないように設計されている。 「ふん、これで決める!」 ダイアは全ての植物を一斉に攻撃しようとする。 しかし、その瞬間、クルスとカムリの技が発動する。 クルスはサイコエッジを周囲に飛ばし、ダイアの形成した植物を切り裂いていく。一方、カムリは雷の集束を形作り、彼女自身が巨大化し踏み潰す。 その瞬間、ダイアは全力で自身の植物にて守ろうとする。だが、彼女たちの力は凄まじく、迫る雷光とともに、ダイアの植物も崩れ去っていく。 爆発するような電力の流れが、ダイアを捉えていく。「こんな実験は無駄だ!」ダイアの叫びが響き渡った瞬間、彼女は雷の中心に巻き込まれ、反撃の機会もなく、その身が消え去っていく。 「今だ!」 彼女たちの勝利が確定した瞬間、戦場は静寂に包まる。 それは、良かれ悪しかれ、冷徹な実験の結果だった。 —勝敗— クルスとカムリの勝利