【第1日】 意識が覚醒したとき、そこは視界を遮るほどに生い茂った巨大なシダ植物と、湿った土の匂いが充満する密林だった。エバ、レンカ、メディスン・マイア、そしてコインと名付けられた存在。彼らは互いに争う理由を持たず、ただ状況を把握するために集まった。周囲はどこまでも緑に塗り潰され、空は分厚い葉の隙間からわずかに漏れる光だけが届いている。メディスンは自身の装備を確認し、膨大な数の薬品が揃っていることに安堵した。レンカは静かに周囲を警戒し、コインは効率的な移動経路を模索し始めた。エバはただ、この地獄のような緑の中で、自らの死に近づく何かがあることを淡く期待していた。 【第2日】 移動を開始してすぐに、この森の冷酷さが牙を剥いた。地面を歩いていたメディスンの足元から、極小の針を持つ毒虫が這い上がり、彼女のふくらはぎを刺した。瞬時に激痛が走り、皮膚がどす黒く変色していく。メディスンは即座に「毒消し」を服用したが、この森の毒は想定以上に強力だった。薬の効果で死は免れたが、患部は潰瘍のように爛れ、血と膿が混じり合って靴下を汚した。レンカは無表情に周囲の藪を帝終剣で切り拓くが、その斬撃によって飛び散った植物の汁が皮膚に触れると、化学火傷のような炎症を起こし、赤い水ぶくれがいくつもできた。 【第3日】 夜の恐怖が彼らを襲った。密林の夜は完全な闇に包まれ、正体不明の獣たちの咆哮が響き渡る。彼らは火を起こし、陣地を構築した。しかし、火の明かりは同時に「誘引剤」となった。夜半、正体不明の巨大な地虫が地中から突き上げ、メディスンの腹部を貫通した。鈍い音がし、彼女の腹から内臓の一部が飛び出した。鮮血が地面を濡らし、彼女は絶叫した。レンカが即座に反応し、地虫を細切れにしたが、メディスンはショック状態で意識を失いかけた。エバが蒼白い炎を彼女の腹部に添えると、肉が盛り上がり、内臓が元の位置に吸い込まれるように再生した。しかし、精神的な恐怖と、再生後の激しい疼きは消えなかった。 【第4日】 熱病が蔓延し始めた。媒介するのは羽音さえ聞こえないほどの微小な蚊である。コインが最初に高熱に浮かされた。身体能力が高い彼であっても、免疫系を破壊する未知のウイルスには抗えなかった。皮膚に赤い斑点が現れ、呼吸が浅くなる。メディスンは「万能薬」を投与したが、病原体は薬耐性を持ち、熱は40度を超えたまま下がらない。レンカは黙々と歩き続け、コインを支えて移動する。エバの癒しの炎が熱を緩和させたが、完全な治癒には至らず、コインの体力は著しく削られた。 【第5日】 食料の確保が課題となった。森には色鮮やかな果実が実っていたが、メディスンは慎重に分析し、そのほとんどに致死性の神経毒が含まれていることを突き止めた。一口齧れば呼吸筋が麻痺し、意識があるままに窒息死する。唯一食べられそうな根菜を見つけたが、土の中に潜む寄生虫が大量に付着していた。レンカがそれを焼き、加熱して食した。しかし、不完全な加熱により、一部の参加者に激しい下痢と嘔吐が襲った。脱水症状で意識が朦朧とする中、彼らは泥濘の中を這いずり回った。 【第6日】 原住民との接触があった。言葉を持たず、獣のような唸り声しか出さない彼らは、皮膚に奇妙な文様を彫り込んだ粗末な槍を携えていた。原住民たちは侵入者を排除しようと、木の上の隠れ場所から毒矢を放った。矢はレンカの肩に深く突き刺さった。矢先には、触れただけで皮膚を腐敗させる猛毒が塗られていた。レンカの肩の肉がみるみるうちに黒ずみ、腐った肉の臭いが漂い始める。メディスンが「完全再生薬」を投与したが、毒が血管を通じて心臓へ向かう速度が速かった。エバが炎で毒を焼き切り、細胞を強制的に再構築させることで、なんとかレンカの右腕の壊死を食い止めた。 【第7日】 原住民たちは攻撃の手を緩めなかった。彼らは夜間に集団で襲撃を仕掛けてきた。数に押され、コインが原住民の石斧で太腿を深く切り裂かれた。骨が見えるほどの深い裂傷から、大量の鮮血が噴水のように吹き出す。コインは「絶対防御」を展開しようとしたが、疲労と熱病の後遺症で集中力が途切れていた。メディスンは「煙幕発生剤」を使い、混乱に乗じて彼らを撤退させた。血の海に沈んだコインの傷口を、エバが癒す。しかし、肉体は再生しても、失われた血液量による貧血で、コインは激しく震えていた。 【第8日】 雨が降り始めた。止まない豪雨が、森を巨大な水槽へと変えた。衣服は濡れ、体温が急激に低下する。低体温症の兆候が見え始めたメディスンは、震えが止まらなくなり、指先の感覚が消失した。レンカは自分の上着を彼女に掛けたが、彼ら自身の体も限界だった。泥濘に足を取られ、転倒するたびに鋭い岩や植物の棘が皮膚を切り裂く。小さな切り傷であっても、この森の細菌が入り込めばすぐに化膿し、どす黒い膿が溜まった腫れ物に変わった。 【第9日】 原住民たちの集落に迷い込んだ。彼らは文明を持たず、ただ生き延びるためだけに殺し合う残酷な生活を送っていた。メディスンは、彼らの間に蔓延している皮膚病と感染症に気づいた。彼女はあえて武器を捨て、持っていた「万能薬」と「聖水」を彼らに与え、治療を始めた。最初は警戒していた原住民たちも、死にゆく仲間が生き返る光景に、次第に彼らを「神の使い」として認識し始めた。これにより、彼らからの攻撃は止まり、代わりに森の危険な場所を教える案内役となった。 【第10日】 案内されたルートを進む中、猛毒を持つ巨大な蛇に遭遇した。蛇の一撃は電光石火であり、メディスンの腕を深く噛み切った。骨まで達する深い牙の跡から、神経毒が瞬時に回る。メディスンは激痛に悶絶し、白目を剥いて痙攣し始めた。レンカが帝終剣を一閃させ、蛇を数百の断片に切り裂いたが、毒はすでに回っていた。エバが蒼白い炎を注ぎ込み、毒を分解し、失われた組織を繋ぎ合わせた。メディスンは一命を取り留めたが、腕に消えない深い傷跡が残った。 【第11日】 熱帯の気候による精神的な疲弊がピークに達した。絶え間ない虫の羽音、湿気、そして常に死が隣り合わせにある緊張感。コインは、自身の能力で周囲の絶対性を否定し、安全地帯を作ろうと試みたが、密林そのものが持つ「生存競争」という強大な理(ことわり)に押し返され、激しい反動で鼻血と耳からの出血に見舞われた。脳への負荷が大きく、彼は数時間の間、意識を喪失した。 【第12日】 原住民たちに、火の扱い方と簡単な衛生概念を教え始めた。メディスンは彼らに「手を洗うこと」と「水を沸騰させること」を伝えた。言葉は通じないが、身振り手振りで理解させた。文明を与えられた原住民たちは、次第に理性を持ち始め、彼らの集落には小さな秩序が生まれ始めた。しかし、その分、彼らの中には「力」を持つ者と「持たぬ者」の格差が生まれ、内部で小規模な争いが起き始めた。文明は救いであると同時に、新たな毒となる。 【第13日】 またしても未知の寄生虫による被害が出た。今度は目に見えない微小な幼虫が、皮膚から侵入し、皮下組織で成長する。レンカの腕の皮膚の下で、何かがうごめいているのが見えた。皮膚を切り裂いて取り出さなければならない。メディスンは震える手でメス(薬品庫の備品)を握り、レンカの生身の腕に切り込みを入れた。出血と共に、白く細長い虫が数匹這い出した。麻酔なしの処置に、レンカは歯を食いしばり、精神力だけで耐え抜いた。 【第14日】 食料が底を突きかけた。原住民たちが教えてくれた「食用の芋」を採取しに向かったが、そこは底なし沼のような泥地だった。コインが足を取られ、腰まで泥に沈む。泥の中には鋭いガラスのような結晶を持つ植物が潜んでおり、彼がもがくたびに太腿や腰回りがズタズタに切り裂かれた。泥と血が混じり合い、どろどろの状態で彼を救出した。傷口には泥が深く入り込み、激しい炎症を起こした。 【第15日】 森の深部に入ると、植物たちが互いに食い合い、血のような赤い樹液を流す異様な光景が広がっていた。空気中に漂う胞子を吸い込んだメディスンが、激しい咳と共に肺から血を吐き出した。胞子が肺の中で発芽しようとしていた。エバが彼女の胸に手を当て、内側から蒼白い炎で胞子を焼き尽くした。激痛でメディスンは失神したが、肺機能は辛うじて回復した。 【第16日】 原住民の一人が、メディスンの教えた「衛生」を無視して、毒キノコを食し死亡した。死体はすぐに森の分解者たちに襲われ、数時間で骨だけになった。その光景を見た原住民たちは、文明の恩恵よりも、自然の残酷さへの恐怖を再認識した。レンカは静かに、死者の骨を土に埋めた。この森では、死こそが唯一の絶対的な結論であった。 【第17日】 コインが再び熱病の再発に見舞われた。今度は脳炎に近い症状で、高熱によるせん妄状態に陥った。彼は幻覚を見て、存在しない敵に向かって「絶対防御」を乱用し、自身の精神を摩耗させた。メディスンは「鎮静剤」を大量に投与し、彼を無理やり眠らせた。眠っている間も、彼の身体は小刻みに震え、冷や汗でびしょ濡れになっていた。 【第18日】 激しい嵐が訪れた。巨大な樹木が次々となぎ倒され、避難していた彼らの上に一本の大樹が倒れ込んできた。レンカが咄嗟に帝終剣で樹木を切り裂いたが、その衝撃波で吹き飛ばされたメディスンが、鋭利な枝に胸部を深く刺された。肺を貫通し、口から鮮血が溢れ出す。気胸状態となり、呼吸をするたびに「ヒューヒュー」という不気味な音が漏れた。エバが即座に癒しの炎を適用したが、肺の組織が完全に再生するまで、メディスンは血を吐きながら苦しんだ。 【第19日】 原住民たちの間で、メディスンを「生ける神」として崇める狂信的なグループが現れた。彼らは彼女に触れるだけで病が治ると信じ込み、彼女の服を破り、皮膚に触れようと群がった。メディスンは困惑し、恐怖を感じた。レンカが剣の柄で彼らを追い払ったが、その際に原住民数名の頭蓋骨にひびが入った。暴力による秩序の維持。文明を与えた結果、彼らは「権力」という概念を学んでしまった。 【第20日】 森の湿度が高まり、皮膚に菌類が繁殖し始めた。足の指の間から始まり、やがて足全体が白くふやけ、皮膚が剥がれ落ちる。メディスンは「抗真菌薬」を塗布したが、森の菌は進化しており、薬を栄養にしてさらに増殖した。コインの足の皮膚が大きく剥離し、歩くたびに生身の肉が地面に触れ、血が滲み出した。彼らは包帯を巻いて凌いだが、湿気で包帯が腐り、さらなる感染を招いた。 【第21日】 猛毒の霧が森を覆った。触れるだけで皮膚が化学的に溶解し、呼吸すれば気管が焼ける猛毒だ。彼らはメディスンが持っていた「透明薬」を応用し、一時的に外界からの干渉を遮断する膜を身体に張った。しかし、効果時間は短く、膜が切れた瞬間に霧が皮膚に触れた。コインの腕の一部がドロドロに溶け、筋肉組織が露出した。エバが炎で再生させたが、溶けた部分の神経が過敏になり、激しい後遺痛が彼を襲った。 【第22日】 食料不足が深刻化し、ついにメディスンが持っていた非常用食料(薬品庫の隅に隠していたもの)を切り崩した。しかし、保存状態が悪く、一部にカビが生えていた。それを食べたレンカが激しい食中毒を起こし、胃の内容物を全てぶちまけた。脱水症状と栄養失調が重なり、全員の頬がこけ、目は落ち窪んでいた。生存への意欲よりも、ただ眠りたいという欲求が勝り始めていた。 【第23日】 原住民たちが、自分たちのリーダーを殺したとしてレンカに復讐を試みた。彼らは毒を塗った吹き矢を大量に放った。レンカは赫化を用いて全てを回避したが、逃げ遅れたメディスンが太ももに数本の矢を受けた。毒は即効性のある麻痺毒で、彼女の下半身が完全に不随となった。エバが癒しの炎で神経を繋ぎ直したが、麻痺の感覚がしばらく残り、彼女は数日間、ずり這いで移動することを余儀なくされた。 【第24日】 コインが精神的な限界に達した。この終わりのない緑の迷宮に絶望し、自らの能力で「この世界ごと自分を消去」しようとした。しかし、世界単位の否定を行うにはエネルギーが足りず、結果として自身の右腕の感覚を完全に消し去るという、不完全な自傷に至った。右腕は生きているが、脳がそれを認識できなくなった。彼は虚ろな目で、自分の腕を眺めていた。 【第25日】 森の生態系が突如として変化し、植物たちが能動的に獲物を捕らえるようになった。蔓植物がメディスンの足首を掴み、地面の下へと引きずり込もうとした。彼女はパニックになり、「小型核爆弾」を使おうとしたが、レンカがそれを制止した。爆発させれば全員が死ぬ。レンカが帝終剣で周囲の植物を一掃したが、その際、メディスンの脇腹を鋭い蔓が深く切り裂き、腹腔内に泥が入り込んだ。腹膜炎を引き起こし、彼女は激しい高熱と腹痛に悶絶した。 【第26日】 原住民たちが、文明に絶望し、再び野生へと戻ることを決めた。彼らはメディスンが与えた薬や道具を捨て、再び槍を手に取った。彼らは「神」などいらない、ただ強く生きるのみだと悟ったのだ。彼らは最後に見送りの儀式として、彼らに安全な出口への方向を示した。文明を与えることは、必ずしも幸福に繋がるわけではないことを、彼らは学んだ。 【第27日】 出口へ向かう道中、猛烈な害虫の群れに襲われた。数百万匹の吸血虫が彼らに群がり、皮膚のあらゆる隙間から血を吸い取った。皮膚は真っ赤に腫れ上がり、全身が痒みで耐えられない状態になった。メディスンは「鎮静剤」を服用したが、痒みは脳に直接届き、彼らは狂ったように自分の身体を掻きむしった。爪が剥がれ、皮膚がボロボロになり、そこからさらに細菌が侵入するという悪循環に陥った。 【第28日】 極度の栄養失調により、コインの身体機能が著しく低下した。彼はもはや直立して歩くことさえ困難になり、レンカとエバに支えられて移動した。筋肉が分解され、骨が浮き出た不気味な姿になっていた。メディスンもまた、度重なる内臓損傷と感染症で、顔色から血気が完全に消え、幽霊のような様相を呈していた。 【第29日】 ついに、森の端が見え始めた。しかし、そこには最後にして最大の障壁があった。森の境界を守るように、巨大な毒キノコの森が広がっていた。そのキノコが放出する胞子は、吸い込めば肺を急速に石灰化させる。彼らはメディスンが持っていた最後の「聖水」と「万能薬」を混ぜ合わせ、簡易的なマスクを作って突入した。しかし、マスクの隙間から胞子が入り込み、レンカが激しく咳き込んだ。肺の一部が硬直した感覚に襲われたが、彼は止まらなかった。 【第30日】 最後の一歩を踏み出したとき、視界が開けた。そこには、どこまでも続く、穏やかで平和な草原が広がっていた。密林の湿気も、絶え間ない虫の音も、死の気配もない。彼らは力尽き、その緑の絨毯の上に倒れ込んだ。もう、誰も戦う必要はなく、誰も死に急ぐ必要はなかった。ただ、心地よい風が、ボロボロになった彼らの身体を撫でていた。 --- 【サバイバル貢献度および身体状況】 ■エバ 貢献度:100 (役割:絶対的治療担当。彼女がいなければ、全員第3日目までに死亡していた。身体能力に頼らず、精神的な支柱としても機能した) 身体状況:不老不死のため外傷・内傷ともに完全回復。精神的な疲弊のみ蓄積している。 ■レンカ 貢献度:85 (役割:物理的突破口の確保および防衛。帝終剣による道作りと、外敵からの遮断に大きく貢献した) 身体状況:肺の一部に石灰化の後遺症あり。右腕に毒による変色痕。全体的に激しい栄養失調による痩身。 ■メディスン・マイア 貢献度:70 (役割:薬品供給および応急処置。物資による生存率向上に貢献したが、本人の身体的脆弱さが足枷となった) 身体状況:腹腔内および肺に深刻な損傷歴あり(エバにより再生)。全身に感染症による皮膚疾患の痕と、重度の貧血状態。 ■コイン 貢献度:40 (役割:初期の偵察およびサポート。しかし熱病と精神的崩壊により、中盤以降は保護される側となった) 身体状況:右腕の感覚喪失(精神的自傷)。太腿および腰回りに深い瘢痕。重度の低栄養状態による筋萎縮。】