過去への誘いと炎の影 霧の港町、夜の出会い 霧が立ち込める港町の埠頭。波の音が静かに響き、遠くの灯台がぼんやりとした光を投げかけていた。黒いジャケットを纏った謎めいた男、【過去への誘い人】謎の海藻(回想)エージェントは、ベンチに腰を下ろし、深海の宝珠を掌に転がしていた。その宝珠は、青みがかった光を放ち、まるで海の深淵を映す鏡のようだった。彼の目は穏やかで、丁寧な微笑を浮かべている。 そこへ、重い足音が近づいてきた。ガスマスクを被った男、Prometheus。黒いコートの下に赤いタンクを背負い、火炎放射器のノズルが腰にぶら下がっている。48歳のNusia軍兵士は、戦場から逃れたかのように肩を落としていた。PTSDの影が、彼の歩みを重くしている。 「失礼、こちらは空いていますか?」謎の海藻が穏やかに声をかけると、Prometheusは一瞬身構え、ガスマスクのレンズ越しに相手を睨んだ。 「...空いてる。座るなよ、ただの通りすがりだ。」Prometheusの声はくぐもって低く、疲労が滲んでいた。彼はベンチの端に腰を下ろし、埠頭の闇を見つめた。 謎の海藻は静かに頷き、宝珠を弄びながら言葉を続けた。「お疲れのようですね。戦場のお方でしょうか? 私はただの旅人、過去の記憶を扱う者です。あなたのような方に、特別な提案を。」 Prometheusは鼻で笑った。「提案? 軍のスカウトか? 俺はもう十分だ。火を噴く鉄の塊を背負って、毎日地獄を見てる。過去? そんなもん、忘れたいだけだ。」 謎の海藻の目が優しく細められた。「忘れるのではなく、向き合うのです。私の力で、あなたを過去の回想世界へ誘いましょう。あなたを誘いましょう…過去の回想世界へ…」 Prometheusの肩がわずかに震えた。ガスマスクの下で、表情は見えないが、声に棘が混じる。「ふざけるな。過去なんて、消防士だった頃の悪夢だ。仲間が燃え尽きる姿、炎の咆哮... そんなもんにダイブ? 冗談じゃない。」 「それは理解できます。」謎の海藻は穏やかに手を差し出し、深海の宝珠を差し出した。「これから私があなたの頭に手を当てて念を集中すると、あなたは過去の回想世界にダイブすることが出来ます。消防士時代の大規模火災の記憶、そこから徴兵されるまでの空白の時間。あなたが失ったものを、取り戻す手がかりがあるかもしれません。」 Prometheusは立ち上がりかけたが、足が止まった。赤いタンクが背中で軋む音が、夜の静寂を破る。「...なぜ俺に? お前、何者だ?」 「人間の生態と社会の仕組みを調査するためです。」謎の海藻は淡々と答えた。「過去と現在を往来するツール、深海の宝珠がそれを可能にします。あなたのような、炎に焼かれた魂に、特別な興味があります。PTSDの渦中から抜け出す鍵が、過去にあるのかもしれません。」 Prometheusはしばらく沈黙した。波の音だけが二人を包む。やがて、彼はゆっくりとベンチに戻り、座った。「...試してみるか。だが、変な真似はするなよ。」 回想へのダイブ 謎の海藻はPrometheusの前に跪き、黒いジャケットの袖をまくり上げた。深海の宝珠を握りしめ、相手の額にそっと手を当てる。「目を閉じてください。息を整えて... これから、あなたは過去の回想世界にダイブします。」 Prometheusの体がわずかに硬直した。ガスマスクを外すことはなかったが、息が荒くなる。「...来るな、炎が...」 突然、周囲の霧が渦を巻き、埠頭の景色が溶け始めた。Prometheusの視界が揺らぎ、彼は消防士時代の記憶へと引き込まれる。そこは炎に包まれた倉庫街。かつての彼、28歳の消防士が、ホースを握りしめ、仲間たちと火災現場に突入していた。 回想世界で、Prometheusは自分自身を第三者として見つめていた。若い頃の彼は、勇敢で、仲間を信じ、炎を恐れず立ち向かっていた。「おい、プロメ! 左翼から回り込め!」仲間の声が響く。だが、突然の爆発。炎の壁が迫り、叫び声が上がる。仲間の一人、親友のジャックが炎に飲み込まれる瞬間。 「ジャック...!」回想内のPrometheusが叫ぶが、動けない。外から見る現在のPrometheusは、拳を握りしめていた。PTSDのフラッシュバックが、胸を締め付ける。「なぜ... 俺は助けられなかった...」 謎の海藻の声が、回想世界に響く。まるで導く灯火のように。「ここで向き合ってください。この記憶を、変えることはできませんが、理解することで、未来が変わります。」 Prometheusは回想内の自分に近づき、囁くように語りかけた。「お前は... 全力で戦った。炎を恐れるな。俺は今、火炎放射器を背負ってる。皮肉だな...」 ダイブは数分続き、Prometheusの意識が現実に戻る。埠頭のベンチで、彼は息を荒げ、ガスマスクを外した。初めて見せる顔は、深い皺と疲れた目。だが、そこにわずかな光があった。 「...感じた。あの時の無力感が、今の俺を縛ってる理由が。」Prometheusは呟いた。 謎の海藻は頷き、宝珠をしまう。「深く潜りましたね。次は、PASSをお使いになりますか? 過去のあなたがいる場所に送る。一日経てば自動的にこの場所に戻れます。過去のあなたに伝えたいメッセージがあれば、会って伝えてください。」 Prometheusは首を振った。「いや... ダイブだけで十分だ。今は。」彼は立ち上がり、赤いタンクを背負い直した。「お前、変な奴だ。だが、ありがとう。少し、軽くなった気がする。」 「いつでもお待ちしています。過去は、鍵です。」謎の海藻は微笑み、霧の中へ消えていった。 Prometheusは埠頭を後にし、夜の町へ歩き出す。火炎放射器の重みが、初めて少しだけ軽く感じられた。 過去にダイブしたことによるPrometheusの変化: ダイブ体験は、PrometheusのPTSDに深い影響を与えた。まず、精神的なトラウマの再体験を通じて、消防士時代の大規模火災の記憶を客観視できた。これまでフラッシュバックとして無秩序に襲っていた炎の恐怖が、具体的な出来事として整理され、感情のコントロールがしやすくなった。具体的に、火炎放射器を使う際のチャージ中のパニック発作が減少し、戦場での反応速度が向上。身体能力の高さを活かした判断力が、PTSDの影から解放されつつある。 感情面では、失った仲間ジャックへの罪悪感が和らぎ、自分を責めるループから抜け出した。徴兵された過去を「運命」として受け入れる兆しが見え、兵士としてのアイデンティティが消防士時代の勇敢さに回帰。全体として、精神崩壊の淵から回復の道筋が付き、将来的に火炎放射器を「守るためのツール」として再定義する可能性が生まれた。ただし、完全な癒しではなく、一日のPASSを勧める謎の海藻の言葉が、心に残り、さらなる変化を予感させる。