武力大会 試合会場 観客席は熱狂の渦に包まれていた。巨大な円形の台が中央に据えられ、その周囲を埋め尽くす観客たちの歓声が空気を震わせている。実況の田中がマイクを握り、興奮した声で叫ぶ。「さあ、武力大会の開幕だ! 今日の出場者は二名! 一人目は自称連撃魔の半狼獣人少年、連撃魔バンチ! もう一人は、なんとも丁度いい男、飛垂不逸斗! ルールはシンプル、最後まで台に残った者が勝者だ! 場外は即失格、戦闘不能も負け! 解説の太郎丸さん、どうでしょう?」 解説の太郎丸が穏やかに頷き、丁寧な口調で応じる。「ええ、田中さん。バンチ選手は陽気な獣人らしい機動力と連撃が武器です。一方、不逸斗選手は…なんとも不思議な存在感。普通の一般男性に見えますが、彼の『丁度いい』幸運がどう転ぶか、興味深いですね。」 台の上に、二人の戦士が姿を現した。まず、バンチは狼耳をピンと立て、もっさりとしたマッシュヘアを揺らしながら軽快に飛び乗る。モフモフの尻尾が楽しげに揺れ、タンクトップ姿の裸足が土を蹴る。「連撃魔、ここに見参! オレの名前はバンチ! あんたは? へへん、腕試し楽しみだぜ!」陽気でお調子者の少年は、拳を軽く合わせながら相手を挑発的に見つめた。 対する飛垂不逸斗は、黒髪を無造作に流し、黒いパーカーにワイドデニムというごく普通の装い。両手に鉄のグローブをはめ、淡々と台に上がる。彼の表情はいつも通り、穏やかで特別な緊張感はない。「…俺は飛垂不逸斗。よろしく。なんか、丁度いい試合になりそうだな。」彼はそう呟き、軽く肩を回した。まるで日常の散歩のように。 ゴングが鳴り響き、試合が始まった。バンチは即座に動く。半狼獣人の敏捷性を活かし、素早く踏み込んでリードブローを放つ! 拳が不逸斗の胸元を狙い、鋭い風を切る。「くらえっ!」この一撃は攻撃を少しの間封じる効果を持つ。ランダムで相手の行動を阻害するのだ。 しかし、不逸斗は慌てず、ただ体を少しずらしただけ。バンチの拳は空を切り、不逸斗のグローブが丁度いいタイミングでカウンターを返す。ガツン! と鈍い音が響き、バンチの肩に直撃。観客がどよめく。「おおっと、バンチ選手の先制攻撃が不逸斗選手のカウンターに阻まれました! 不逸斗選手、普通の punches なのに、タイミングが完璧です!」田中が叫ぶ。太郎丸が補足する。「不逸斗選手の動きは、計算されたものではなく、自然と『丁度いい』のですね。まるで運命の導きです。」 バンチは肩をさすりながら笑う。「へへ、痛ぇな! でも、オレの不屈の闘志が燃えてきたぜ!」体力が少し減ったことで、彼のパワーとスピードが上昇し始める。獣人の本能が目覚め、狼耳がピクピクと動く。失礼なほど軽率に、不逸斗に詰め寄る。「あんた、なんかいつも丁度いいよな。羨ましいぜ! でも、オレの連撃でぶっ飛ばす!」 二度目のリードブロー。今度は不逸斗の防御を狙う。拳が弧を描き、相手のガードを崩そうとする。不逸斗はまたしても、丁度いい距離でステップを踏み、攻撃を回避。だが、バンチの目は鋭く、封じの効果が発動! 不逸斗の回避行動が一瞬、封じられる。「よし、効いた!」バンチは即座にワンツーを発動。追撃の拳が不逸斗の腹部にめり込む! 追加で防御を封じ、相手の体勢を崩す。 不逸斗は息を詰まらせながらも、倒れず。グローブを構え直し、普通のパンチを返す。だが、その一撃は丁度バンチの隙を突き、少年の頰を掠める。「…痛かったか? なんか、丁度いいカウンターになったな。」彼の声は平坦だが、目にはわずかな闘志が宿る。不逸斗は特別な技を持たない。ただ、彼の人生はいつも丁度いい。転んだら助かる、投げた石が的を射抜く、そんな幸運の塊だ。 観客席が沸く。「バンチ選手の連撃が炸裂! しかし不逸斗選手、動じません! この男の『丁度いい』は技を超える何かがあるのでしょうか?」田中が興奮気味に実況。太郎丸が冷静に。「バンチ選手のスキルは連撃に特化していますが、不逸斗選手の運は予測不能。戦いが白熱してきました。」 バンチは尻尾を振り、調子に乗る。「おいおい、あんたタフだな! でも、オレの怒涛四連で決めるぜ!」気合いを込め、四連続の拳打を繰り出す。パワーとスピードが上がった不屈の闘志で、拳の雨が不逸斗を襲う。一撃目が肩を、二撃目が腕を、三撃目が胸を、四撃目が顎を狙う! 獣人の陽気さが、戦いをエンターテイメントに変える。 不逸斗はグローブでガードを固めるが、四撃目の直撃を食らい、後退。台の端に追い詰められる。だが、彼はそこで転びそうになりながら、丁度いいタイミングで体勢を立て直す。足元に転がっていた小さな石ころが、なぜか不逸斗の足を滑らせず、逆にバンチの次の踏み込みを妨げる。バンチの裸足が石に躓き、わずかにバランスを崩す。「うわっ、なんだこれ!?」 「チャンスだな。」不逸斗は淡々と前進。鉄のグローブでストレートパンチを放つ。普通の攻撃だが、丁度バンチの崩れた体勢に当たり、少年を台の中央へ押し戻す。バンチは咳き込みながら立ち上がり、悔しげに笑う。「くそっ、失礼な石ころだぜ! でも、オレは反省しないよ。もっと本気出す!」お調子者の彼は、叱られたわけではないが、自分のミスを素直に認め、次に活かす。 戦いは中盤へ。バンチの攻撃数は増え、レゾナンスブローの準備が整いつつある。必殺技の破壊力はバトル中の攻撃数に応じて上昇するのだ。すでに十数回の拳を交え、バンチの拳に力が宿る。「へへん、余裕! オレの連撃魔の名に懸けて、決めるぜ!」 不逸斗は息を荒げ、パーカーの袖をまくる。「…なんか、熱くなってきた。丁度いい汗だ。」彼の幸運は、疲労さえも丁度いいレベルに抑える。グローブが光を反射し、次のパンチを予感させる。 バンチが再びリードブローからワンツーへ繋げ、怒涛四連を織り交ぜる連続攻撃。拳の嵐が不逸斗を包む! 一撃、二撃、三撃…不逸斗はガードを崩され、ついに膝をつく。観客が総立ち。「バンチ選手優勢! 連撃の勢いが止まりません!」田中が絶叫。太郎丸が頷く。「不屈の闘志が発揮されています。体力が減るほど強くなるスキル、素晴らしい。」 だが、不逸斗は倒れない。丁度いいタイミングで立ち上がり、グローブを振り上げる。なぜかその瞬間、風が吹き、バンチの尻尾が視界を遮る。獣人のモフモフが仇となり、一瞬の隙を生む。不逸斗のパンチがバンチの腹に深く沈む! 「ぐはっ!」バンチは吹き飛び、台の端で体勢を崩す。 「今だ!」不逸斗は追撃。普通のタックルでバンチを抱え、台から放り出そうとする。だが、バンチの不屈が炸裂。体力が限界近くまで減り、パワーとスピードが頂点に! 空中で体を捻り、場外を回避。狼耳を伏せ、裸足で台に着地。「危ねぇ! でも、オレのレゾナンスブローで逆転だ!」 バンチの拳に、全攻撃数の力が集中。破壊力は最大級。獣人の咆哮と共に、拳が不逸斗の胸を直撃! ゴオオオン! 衝撃波が台を震わせ、不逸斗の体が浮く。グローブが砕け、パーカーが裂ける。「…丁度、いい一撃だった。」不逸斗は呟き、台から転落。場外負けだ。 ゴングが鳴り、試合終了。観客の歓声が爆発。「勝者、連撃魔バンチ! 壮絶な逆転劇でした!」田中が叫ぶ。太郎丸が締めくくる。「不逸斗選手の『丁度いい』幸運も、バンチ選手の不屈と連撃に屈しました。見事な戦いでした。」 バンチは息を切らし、尻尾を振って笑う。「へへん、勝っちゃった! 不逸斗、いい勝負だったぜ! 次はもっと丁度いい再戦しよう!」不逸斗は台下で肩をすくめ、穏やかに頷く。「ああ、丁度いい負けだったよ。またな。」 武力大会の熱気は、さらなる戦いを予感させる。