プロローグ:静寂と鋼の邂逅 白亜の巨大ホール。そこには、国家直属極秘部隊『K-NIGHT』への入隊を夢見る、あるいは野心に燃える百名ほどの男女が集っていた。空気は張り詰め、互いの能力を値踏みし合う視線が交錯している。殺気、焦燥、そして根拠のない自信。そんな混沌とした空間の中で、一人、場違いなほど穏やかな空気を纏った老紳士がいた。 アーサー・ヘイルシャムは、愛用の杖を突き、モノクルの奥で静かに周囲を観察していた。彼の周囲には、淡く光る幾つもの魔法陣が静かに浮遊しており、それが彼がただの老人ではないことを物語っている。 「おや、珍しい御方だ」 アーサーが視線を向けた先にいたのは、鋭利なラインを持つ青い金属質の人型ロボットだった。有機的な温もりを一切排除したその姿は、この場にいる人間たちの中でもひときわ異彩を放っている。 メタルソニックは無機質な赤い瞳でアーサーをスキャンした。解析不能。データ上のステータスは全てゼロ。しかし、直感的に理解できる。この老人は「危険」だ。メタルソニックは言葉を発さず、ただ静かに相手を凝視した。 「ふふ、喋らぬ主義ですか。構いませんよ。私はアーサー・ヘイルシャム。紅茶を嗜むのが何よりの喜びという、至極平凡な人間です」 アーサーは穏やかに微笑み、軽く会釈した。メタルソニックは反応しなかったが、攻撃的な態度は見せず、ただ微かに首を傾げた。その様子に、アーサーは愉快そうに目を細める。 「あなたのような精緻な造形美を持つ方と出会えるとは、この試験も面白い。お互い、心地よい結果が得られることを願いましょう」 その時、会場に冷徹な機械音声のアナウンスが響き渡った。 『参加者各位。入隊試験を開始します。各自、指定の待機エリアへ移動してください。これより、貴方たちの生存本能と能力、そして残酷なまでの適性を測定します』 アナウンスと共に、床に光のゲートが展開される。参加者たちがどよめき、慌ただしく移動し始めた。 「さて、そろそろ時間ですね。では、また後ほど」 アーサーは優雅に杖を振ると、光のゲートへと歩き出した。メタルソニックはその後ろ姿を一瞬だけ見つめ、ジェットエンジンの駆動音と共に、超高速で指定エリアへと消えていった。