廃ビルは、かつて都市の中心に存在した15階建ての構造を持っていた。その外壁はコンクリートが剥がれ落ち、ガラスの破片が散乱している。内部はダストと静寂に包まれ、フロアごとに異なる風景が広がっていた。一部のフロアは完全に崩れ落ち、一部は鉄骨がむき出しになり、迷路のような構造を作り出している。ビル内には急な階段と、古びたエレベーターも存在しているが、エレベーターはもう長い間動いていないのか、動こうともしない。戦いの舞台となるべく、2人の参加者は互いに異なるフロアで目覚めた。 シャークは11階で目覚めた。周囲には朽ちかけた家具と、隙間から差し込む薄暗い光しかなかった。彼の超強化生命体としての本能は、すぐにこの空間の隅々に目を光らせ、感覚を研ぎ澄ませる。視界は広く、彼の視力はこの暗く陰惨な場所でも際立っていた。薄く積もった埃の中を進む彼は、目を細めて周囲の環境を観察する。 一方、信号鬼は7階で目覚める。虎の毛皮をまとった誇り高い姿で、彼は静かに周囲を見渡した。この階は格闘の跡があるのか、床には無造作に散らばった雑多な品々が目に入る。彼の変わりゆく体色は周囲の景色に応じて特異な光を放ち、その目は敵を探し求める獲物のように鋭く光っていた。彼の異様な怪力と俊敏さが、これからの戦闘に向けた期待を高めていた。 二人が知らないまま、廃ビルの戦闘が始まろうとしていた。シャークは、静かなフロアの隅に身を潜め、音を立てずに周囲に注意を払っている。彼の心の中には、勝利への欲望と、相手を狩るという本能が渦巻いていた。彼は自らの牙を露わにし、戦う準備を整えた。 同時に信号鬼も、心の中で動き続ける自らの変化を受け入れ、最初は迷走する敵を捕らえるために自らの攻撃スタイルを工夫していた。確実に相手を第一形態で捉え、そこから次第に色を変えていく過程を楽しむのだ。彼はまだ敵を特定できないが、身を引き締めて待ち続けた。 両者が闘志を抱えたまま、次第に動き出す時が近づいていた。 シャークはまず、周囲の空気を吸い込み、その中に隠れた香りに注意を払う。彼の脳は人間の10倍の能力を持ち、熟練の戦士のように戦況を把握していた。そして、突然、足音が近づいてくるのを感じた。信号鬼が動き出したことを理解し、彼は身を隠してその様子を伺うことにした。 信号鬼は、先ほどの温和な青色を保ちつつも、その動作は優雅で無駄がなかった。彼自身の体が明らかに静まった中、周囲の構造を反映するように動く姿に、シャークは敵を演じながら待ち続けることにした。 待っている間、シャークは次第に興奮し、予想外の展開を楽しむようになった。信号鬼が何階のどの角に来るのか、頭に描きながらそのタイミングを計り故意に息を潜めた。彼は、隣の階への物音を聞き取り、そこに敵が近づいているのをすでに感じていた。 「循環する動き…。見えてきたぞ」シャークは小さく呟いた。 信号鬼がすぐ近くになった時、シャークはその心拍数を落ち着かせつつ、彼に向けて飛び出した。戦闘機のような突撃で、速度が乗った瞬間、彼は信号鬼へ向けて一気に突進した。突然の攻撃に、信号鬼も驚愕した。 だが、青色の彼は、一瞬の判断で逃げ、体色が黄色に変わった。"汝、動くべからず。" 彼はその声が信号鬼の中に響くことを期待して割り込んだ。 シャークはその攻撃を一閃し、また為替に戻って鋼鉄のように硬い皮膚を見せた。 再び突撃し続け、信号鬼の正義を避けながら、混乱を生じさせるためのサイクルを生み出していく。しかし、信号鬼も決して負けじと、困難な攻撃に対してバランスを保ち、光を放って反撃の体勢を整えている。彼の金棒『正義』を振り回し、慎重に攻撃を防ぎつつ、隙をついて反撃を試みる。 一方、シャークは超再生の力を駆使して、ダメージがあってもすぐに元に戻り、再度牙を剥き出しにして攻撃する。 戦いが続く中、信号鬼の体色は赤へと変化していく。怒りの波がその体を満たし、一気にシャークの空間へと向かってくる。「動くなぁ!止まれぇ!」彼の声は廃ビルの中に響いた。 その瞬間、信号鬼は十回連続でシャークへと金棒『正義』の振り下ろしを浴びせる。シャークにも負けじと反撃として牙で応戦し、その牙を叩きつける。しかし、破壊的な力で正義が当たれば、どんな攻撃でも形勢逆転されるのが常であり、その探求が続いた。 まるで死をもたらすかのような打撃。周囲の環境もその衝撃で震え、廃ビルの構造が揺れ動く。その時が来た、彼の再生力も一旦消えかけたが、その時が近づくと信号鬼の周囲は瓦礫が崩れ始めた。しかし、シャークもその強靭な体を持っているために、今は倒れることはなかった。 この攻防は決して簡単なものではなく、両者が羽交い絞めのように互いに一歩も退かない戦いが続いた。彼はもう少しで駆け抜けようとしていた。 やがて、いつの間にか両者は混戦の中、時間が経ち、戦闘の残響が流れていた。信号鬼の赤はその苦難に達してきた。周囲の障害物が崩れるたび、シャークはその成長をより感じる。信号鬼は決して追い込まれることにならないと、自らを保ちながら最期の一線へと踏み出した。 最終的に、信号鬼の攻撃が冴え渡った瞬間、確実にシャークへとカスってはいた。 が、シャークの瞬時の判断力は流石のものだ。彼の牙は信号鬼を抉り、再生によって持ちこたえながら、あらゆる攻撃に立ち向かうように設定されていた。息も付かせぬ激しい戦闘が進行する。 環境が彼らの動きに合わせて激しく崩れ、廃棄された家具が内部で切り倒されていく。破壊の神がふたりを見守りながら、様々な音を立てている。 最終的に、闘争を続ける中での一瞬の隙間。その一瞬、信号鬼が彼に向かって振り下ろした金棒が堕ちようとしたが、シャークがその牙で彼を捉え、牙でその棒を撃ち砕いた瞬間、信号鬼の怒りは頂点に達する。 もはや先が見えない。だが、シャークの本能も同時に高まっていた。 シャークは信号鬼を一瞬で捉え、その鋼鉄のような皮膚で両者が衝突した際の衝撃がビル全体に響き渡った。彼の牙が信号鬼の生命線を捉えた瞬間、両者の力の均衡が崩れた。 信号鬼は驚いた表情で凝視し、それと同時に彼の形が崩れ始めた。 「おまえは動かざるを得ない…」シャークは渇望の声を漏らし、法律の外に投げ出してしまう。 信号鬼がその劇的な瞬間で消えていくのを見届け、シャークはその表情に達し、そして目の前で貪るように乾いたいサラサラしながら。 ついに廃ビルの崩壊が始まった頃、シャークは風になびくごとく、戦を勝ち取ったのであった。彼はすでにこのビルから脱出する意志を持ち、しばらく止まった後、壊れかけた階段を駆け上がり、外へ飛び出す。 シャークは外に出たとき、彼の背後にあった廃ビルが崩れ落ちる様を見上げる。混沌の中で、彼は周囲の世界が変わってしまったことを感じながら獣のようにそこに立ち、彼の存在が目の前の風景に溶け込むような感覚を覚えた。空は高く、軽やかな風が彼の隠れた強さを吹き抜けて行った。彼は勝利の余韻に浸りながら、そのまま闇に消えていった。