落下と怠惰の攻城戦 序章:城塞の影に迫る悪夢 古びた石造りの城塞が、夕暮れの空に黒くそびえ立つ。名を「鉄壁の要塞」と呼ばれるこの城は、数多の侵略者を退けてきた不落の象徴だ。しかし今、城壁の向こうから不気味な気配が漂い始めていた。空が歪み、雲が渦を巻く。まるで世界そのものが傾くかのように。 攻城側の大将、[落下の悪魔]。彼女はコック服に身を包み、首の代わりに死んだ女性の頭部を掲げて現れた。背中からは複数の腕が生え、鳥の前肢のような骨格が不規則に蠢く。彼女の存在だけで、周囲の空気が重く沈み、城の外壁に沿って瓦礫がぽろぽろと崩れ落ち始めた。彼女の軍団は、落下の力に染まった異形の兵士たち――空から降り注ぐ影のような戦士たちで構成されていた。ビルを根こそぎ引き抜く巨人のような攻城兵器も、彼女の魔力で浮遊し、城に向かってゆっくりと接近する。 一方、籠城側の大将は【怠惰な傭兵】ニゲル=メンドール。35歳の小隊隊長は、青い鉢巻を巻き、茶髪を無造作に流した怠惰そうな男だ。名剣を腰に下げ、城の最前線である塔の上で欠伸をしながら状況を眺めている。彼の兵士たちは、精鋭の弓兵と罠師たち。撤退戦の達人であるニゲルは、城の構造を熟知し、狭い通路や隠し扉を活かした防衛線を張っていた。援軍の到着まで――それは夜明けまで――耐え抜くのが彼の任務だ。 「ん〜、どうすっかなこりゃ。空が落ちてくるなんて、面倒くせぇな」ニゲルがつぶやき、剣の鞘を軽く叩く。城壁の外では、落下の悪魔の笑い声が響き渡る。女性らしい、礼儀正しい謙譲語の声だ。「ふふ、皆様、本日はお越しいただきありがとうございますわ。わたくし、落下の悪魔と申しますの。どうぞ、ゆったりとお落としを楽しみくださいませね」 戦いの火蓋が切られた。 第一幕:砲撃の嵐と精神の陥落 落下の悪魔の軍団が動き出す。まず、彼女の魔力が発動した。城壁の兵士たちが、突然足元がふらつき、空に浮かび上がる感覚に襲われる。「うわっ、何だこれ!?」一人の弓兵が叫び、弓を落として地面にしがみつく。だが、それは物理的な浮遊ではない。彼女のスキル――落ちるに関連する全てを司る力――が、兵士たちの精神を抉るのだ。 「まあまあ、お客様方、そんなに慌ててはいけませんわ。わたくし、ただ少しお心を軽くして差し上げているだけですのよ?」悪魔の声が、城内に響き渡る。彼女の首の女性の頭部が、にこやかに微笑む。兵士の一人が、過去のトラウマをフラッシュバックさせる。戦場で失った家族の幻影が現れ、彼の心が折れる。「母さん……ごめん……」その瞬間、兵士の体が上空に引き上げられ、落下の悪魔の軍団に飲み込まれる。地獄への門が開き、彼は永遠の闇へ送られる。 ニゲルは塔の上からそれを見下ろし、眉をひそめる。「へぇ、精神攻撃か。厄介だな。みんな、耳を塞げ! 声に惑わされるなよ」彼の指示は的確だ。兵士たちは耳栓を詰め、互いに声を掛け合いながら防衛線を維持する。ニゲル自身は、視野の広さを活かし、悪魔の動きを観察する。彼女の背中の腕が、城壁に向かって巨大な岩を掴み、投げ飛ばす。岩は空を裂き、城の外壁に激突。爆音とともに石屑が飛び散る。 「ふふ、わたくしの投擲、いかがかしら? もっとお落とししたくなりますわね」悪魔が饒舌に語りかける。彼女の再生能力は絶大だ。岩の破片が彼女に直撃しても、バラバラになった体は瞬時に再生し、笑みを浮かべる。身体能力の高さで、飛び道具を軽くいなし、城門に迫る。彼女の軍団――影の兵士たちは、ビルを基礎ごと引き抜いた攻城兵器を押し進め、城壁を叩き始める。激しい砲撃が続き、城壁が揺らぐ。炎が上がり、瓦礫が飛び散る中、戦場は混沌と化す。 ニゲルは慌てない。のらりくらりと後退を指示し、狭い通路へ兵士を誘導する。「撤退だ。慌てるなよ、こっちのペースだ」彼の柔軟な発想が光る。城の罠――落とし穴や油の流し――を起動させ、影の兵士たちを次々と飲み込む。悪魔の投げたビルが通路に落ち、道を塞ぐが、ニゲルはそれを予測し、側道へ逃れる。「ん〜、予想通りだな。こりゃ、楽勝かもよ」 第二幕:知略の応酬とトラウマの渦 夜が深まるにつれ、戦いは激化する。落下の悪魔は城内に侵入を試みる。彼女の魔力が広がり、城内の兵士たちに精神的ダメージを与える。一人の罠師が、幼少期の虐待を思い出し、膝から崩れ落ちる。「いや……やめてくれ……」彼の体が浮かび上がり、悪魔の料理として地獄へ送られる。悪魔の声が、甘く囁く。「お可哀想に。わたくしが、優しくお落としして差し上げますわ。ふふ、美味しい料理になりますことでしょうね」 彼女の攻撃力は圧倒的だ。複数の腕で剣を振るい、鳥の骨格で空を飛び、城の塔を崩す。防御力も高く、ニゲルの兵士たちの矢が彼女に当たっても、再生する。素早さで攻撃をいなし、魔力で周囲の建物を落下させる。世界中でビルが空に落ちる影響が、城塞にも及ぶ。城の塔が根こそぎ浮かび上がり、崩壊の危機に瀕す。 しかし、ニゲルは動じない。彼のスタイルは撤退貫徹。対戦相手をよく見ながら、狭い道を選んで後退を続ける。悪魔の攻撃方法を分析し、限られた攻撃を悠々自適に見切る。「あの女、精神攻撃がメインだな。物理は再生でカバーか。弱点は……一つ残してる感じだぜ」ニゲルはニヒルに笑う。弱点を一つだけ晒し、全ての弱点を防ぐ巧妙な防衛。悪魔がその隙を狙って突進してくるのを待つ。 「じゃっ! どうだ、これで!」悪魔がビルを投げつけ、ニゲルのいる塔を狙う。だが、ニゲルはそれを回避。撒餌とした隙に、悪魔の必殺技――トラウマのフラッシュバックを誘う魔力の奔流――を引き出す。悪魔の首の頭部が輝き、ニゲルに過去の幻影を見せる。失った部下たちの顔が浮かぶ。「ん〜、懐かしい顔ぶれだな。でもよ、そんなもんで俺が落ちるかよ」ニゲルは余裕の笑み。視野の広さで幻影を無視し、名剣の鞘で反撃。一撃、寸鉄殺人。鞘が悪魔の再生核――首の女性の頭部――に直撃する。 「きゃっ! これは……失礼いたしましたわ!」悪魔が初めて動揺する。再生が追いつかず、体が一時的に崩れる。ニゲルは追撃を控え、再び撤退を指示。「みんな、持ちこたえろ。援軍が来るまであと少しだ」 第三幕:耐え抜く防衛と迫る夜明け 戦いは長引く。落下の悪魔の軍団が城門を突破し、内庭に雪崩れ込む。影の兵士たちが兵士たちを精神的に追い詰め、次々と地獄へ送る。炎が城を包み、剣戟と銃声が響く。悪魔自身は、ニゲルを追って塔を登る。「ふふ、大将様、どうぞわたくしに落ちていただいておりますわ。あなたのお心、美味しそうですこと」彼女の饒舌な謙譲語が、ニゲルの耳に絡みつく。 ニゲルは狭い階段で待ち構える。防御と回避が得意の彼は、悪魔の攻撃をかわし続ける。「ん〜、しつこいな。お前みたいな派手な奴、撤退戦じゃ敵わねぇよ」彼の立廻りは知略的。悪魔の複数の腕を狭い空間で制限し、鳥の骨格を壁にぶつける。悪魔の魔力が発動し、ニゲルのトラウマを呼び起こす――過去の撤退戦で犠牲者を出さなかったはずの、幻の死体たち。「隊長……なぜ助けてくれなかった……」 だが、ニゲルは心を折らない。のらりくらりと回避し、弱点を絞る。悪魔の再生能力の源が、首の頭部だと見抜く。「じゃっ! これで終わりだ!」名剣を抜かず、鞘で再び一撃。悪魔の頭部が砕け、体が崩壊。再生が始まるが、ニゲルは時間を稼ぐ。「みんな、罠を起動! 油を流せ!」城内の罠が連動し、悪魔の軍団を炎の海に沈める。 時間は過ぎ、夜明けが近づく。悪魔の影響で空が落ち、世界が乱れるが、ニゲルの防衛は完璧だ。兵士たちは互いを励まし、精神攻撃に耐える。「隊長、持つかな……」「持つさ。俺がいる限り、誰も死なせねぇよ」 終章:援軍の到着と勝利の行方 ついに、夜明けの光が地平線を染める。遠くから角笛の音が響き、Bチームの援軍――大軍の騎兵隊――が到着する。落下の悪魔の軍団は疲弊し、彼女自身も再生の限界を迎えつつある。「まあ、こんなところで……お援軍など、失礼いたしましたわ。でも、次はもっとお落としを楽しめますわね」彼女は悔しげに退却を始める。 ニゲルは塔の上から援軍を迎え、欠伸を一つ。「ん〜、どうすっかなこりゃ。終わったな。みんな、無事か?」兵士たちが歓声を上げる。城は守られた。落下の悪魔の猛攻を、ニゲルの知略と撤退戦の妙技が凌ぎ切ったのだ。 勝利:Bチーム(籠城側) 援軍の到着により、Bチームの勝利が確定した。時間内に城を落とせなかったAチームは敗北。戦場に静けさが戻る中、ニゲルは名剣を鞘に収め、怠惰に空を見上げる。「ま、楽勝だったぜ」