静寂に包まれた荒野。そこは生者が足を踏み入れることを禁じられた、死と異形の境界線であった。空はどす黒い雲に覆われ、雷鳴が遠くで轟いている。この絶望的な地平線に、三つの勢力が対峙していた。 一つは、死の軍団「アンデッド四天王」。骨の軋む音と腐敗臭を漂わせ、四体の怪物が陣を敷いている。一人目は、冷徹な眼差しを持つスケルトンハンター。その手には絶え間なく矢が生成される無限の弓と、鈍い光を放つ鉄の槍がある。二人目は、山のように巨大なゾンビ。十メートルの巨躯は、ただそこにいるだけで大地を圧迫していた。三人目は、飢餓感に突き動かされたスカルドラゴン。周囲の枯れ木を食い尽くし、その体躯をさらに肥大させている。そして四人目は、凶暴な咆哮を上げるスカルTレックス。その鋭い牙は、一度噛み付けば獲物の自由を奪う死の罠だ。 対するは、爬虫類悪魔の王スネークアイランド。三十メートルの巨躯を誇る大蛇の姿をした彼は、鱗の一枚一枚が鋼のように硬く、その瞳には底知れない悪意が宿っていた。頭部の左右には、禍々しいセントリーガンが装備されており、いつでも敵を掃射できる準備が整っている。 そして最後の一陣は、正体不明の機体「ニセホシツチノコ」に搭乗する【珍獣カウンターハンター】ハブス・ネーク。一見すると可愛らしいツチノコの形をしたその機体には、正体不明のアンドロイドが乗り込んでいる。その傍らには、親と勘違いしてついてきた三匹の幼いツチノコたちが、ちょこちょこしており、戦場に不釣り合いな微笑ましさを添えていた。 「デストロイ!デストロイ!!」 ハブス・ネークの叫びと共に、戦いの火蓋が切られた。 先手を打ったのはスケルトンハンターだった。無限の弓から放たれた光速の矢が、雨のようにスネークアイランドへ降り注ぐ。しかし、大蛇の王は冷笑した。セントリーガンからB弾を撃ち出し、空中で矢を弾き飛ばす。同時に、スカルTレックスが地響きを立てて突撃し、スネークアイランドの尾に噛み付いた。 「ガアアアッ!」 スカルTレックスの牙が食い込む。スキルが発動し、スネークアイランドの巨体が鈍くなる。しかし、王はそれを好機とした。噛み付かれたまま、体を大きく捻り、相手を地面に叩きつける。そこに巨大ゾンビが加わり、十メートルの巨体による全力のアタックがTレックスを吹き飛ばした。さらに、ゾンビの口から破壊の光線が放たれ、周囲の地面を溶かしながらハブス・ネークの機体を襲う。 「うわああ!危ない!」 幼いツチノコたちが慌てふためく中、ニセホシツチノコは瞬時に可変形態へと移行した。可愛らしい珍獣の姿から、中量級の人型機体へと変貌する。腕部に装備された「多段式デストロイツチノコパイルドリル」が高速回転し、迫り来る光線を弾き飛ばす。そのままドリルの突撃で巨大ゾンビの腹部を貫いた。 「デストロイ!!」 激しい金属音と肉撃音が交錯する。スカルドラゴンが上空から急降下し、氷のブレスを吐き出した。氷結の嵐がニセホシツチノコとスネークアイランドの双方を包み込み、動きを封じようとする。だが、スネークアイランドはあえてその攻撃を正面から受けた。彼にとって、魔法的な属性攻撃は活力の源である。体力が回復し、鱗がさらに硬化していく。 「ふん、程度の低い攻撃だ。次は私の番だな」 スネークアイランドが口から激しい炎を放つ。それは敵の視覚を奪う灼熱の火炎。スケルトンハンターは槍を投擲して応戦したが、炎に飲み込まれ、骨の身体が赤々と熱せられた。戦況は混迷を極めていた。アンデッド四天王は数で押し、スネークアイランドは個の力と回復力で対抗し、ハブス・ネークは超高速の機械攻撃で撹乱する。 しかし、戦いはここからが本番だった。激しい消耗と絶望的な状況が、彼らの内に眠る「進化」のトリガーを引いたのである。 最初に進化の兆しを見せたのは、絶え間ない攻撃に晒されていたハブス・ネークであった。パイルドリルが折れ、機体が大破しかけた瞬間、幼いツチノコたちの悲鳴が彼を奮い立たせた。 「こんなところで終わらせない……デストロイ・エヴォリューション!!」 眩い光と共に、ニセホシツチノコが変貌した。名称は【究極珍獣機・ギガ・ミツホシ】。外見は黄金色に輝く巨大な龍のようなツチノコ形態となり、背中には六枚の光子翼が展開された。能力は「全次元破壊」。あらゆる物質を分子レベルで分解する超振動ドリルが両腕に実装され、頭部のビームブレスは惑星規模の破壊力を秘めた「コズミック・ツチノコ・キャノン」へと進化した。 これに呼応するように、アンデッド四天王も融合し、進化を遂げる。四体の個性が一つに溶け合い、巨大な骨の魔神【アンデッド・カタストロフ・ロード】へと姿を変えた。外見は、ドラゴンの翼を持ち、Tレックスの顎と、ゾンビの巨躯、そしてスケルトンハンターの千の手を持つ、文字通りの死の王である。能力は「死霊の統制」。周囲の死者を自動的に吸収して無限に再生し、炎・氷・光線・物理攻撃を同時に繰り出す絶望の権化となった。 最後に、王としての誇りをかけてスネークアイランドが進化する。彼は自らの城の記憶と、呼び出した爬虫類たちのエネルギーを完全に統合した。【爬虫類神・ゼノ・サーペント・アイランド】へと昇華したのである。体長は百メートルに及び、全身がダイヤモンドのような透明な鱗に覆われている。能力は「因果律の捕食」。相手が放った攻撃のエネルギーをそのまま自分の力として吸収し、さらに「爬虫類ロボ」を数千体同時に召喚し、電気の網で戦場全体を麻痺させる権能を得た。 もはやそれは戦いではなく、神々の衝突であった。 「さあ、どちらが真の王か決めようではないか!」 ゼノ・サーペント・アイランドが咆哮し、数千体の爬虫類ロボを一斉に突撃させた。電気の衝撃波が大地を焼き、空を塗り替える。しかし、ギガ・ミツホシは光子翼を羽ばたかせ、空中で超高速回転を開始した。 「全部まとめて……デストロイ!!!」 コズミック・ツチノコ・キャノンが放たれた。純白の光線が戦場を貫き、数千のロボットを一瞬で蒸発させる。同時に、アンデッド・カタストロフ・ロードがその光線を真っ向から受け止めた。死の王は光線に焼かれながらも、無限再生能力で肉体を修復し続け、千の手でギガ・ミツホシを掴もうと手を伸ばす。 「死こそが唯一の真理よ!」 カタストロフ・ロードの口から、炎と氷が混ざり合った「混沌のブレス」が放たれる。それは空間すらも凍てつかせ、同時に焼き尽くす矛盾の攻撃。ギガ・ミツホシはそれを超振動ドリルで切り裂きながら、懐へと飛び込んだ。 ゼノ・サーペント・アイランドが、その隙を見逃さず、因果律の捕食によってギガ・ミツホシのエネルギーを吸い上げようと巨大な口を開く。しかし、そこにはハブス・ネークの最期の策があった。 「幼いツチノコたち、今だ!!」 もともと親についてきた三匹の幼いツチノコたちも、主の進化に影響され、小さな光の球へと変化していた。彼らはゼノ・サーペント・アイランドの口の中に、弾丸のように飛び込んだのだ。 「何だ!?この不快な感覚は……!」 幼いツチノコたちが、大蛇の体内から「究極の愛」という名の超高エネルギー爆発を起こした。内側から突き上げる衝撃に、ゼノ・サーペント・アイランドが体勢を崩す。その一瞬の隙を、ギガ・ミツホシが逃さなかった。 「これで終わりだ!デストロイ・エンド・パイル!!」 全エネルギーを右腕のドリルに集中させ、音速を超えた一点突破の突撃。ドリルはゼノ・サーペント・アイランドの頭上を貫通し、そのまま背後にいたアンデッド・カタストロフ・ロードの核を同時に貫いた。 大爆発が起きた。光の奔流がすべてを飲み込み、荒野の景色を白一色に染め上げる。 静寂が戻ったとき、そこにはボロボロになりながらも、黄金の輝きを失わなかったギガ・ミツホシと、その足元で眠る三匹の幼いツチノコたちの姿だけがあった。爬虫類悪魔の王も、死の四天王も、その強大な力と共に光の中へと消え去っていた。 ハブス・ネークはコックピットから外へ出ると、空を仰いで大きく伸びをした。 「ふぅ……疲れた。さて、懸賞金をもらいに行くか」 勝敗の決め手は、最強の能力への過信と、それを見抜いた「絆」と「奇襲」であった。大蛇の王は強大な力を得たが、体内に入り込んだ小さな存在を軽視した。死の王は再生に頼りすぎ、一点突破の絶対的な破壊力に抗えなかった。 こうして、珍獣ハンターという風変わりな男と、彼を慕う小さな生き物たちが、地獄の王たちを打ち破ったのである。